大迫勇也は度々スーパーゴールを決めて観る者の度肝を抜いてきた【写真:Getty Images】

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打倒UAE。チャンスを確実に生かせるかが勝負の鍵に

 現地時間23日、日本代表はロシアW杯アジア最終予選でUAEと対戦する。昨年9月に一度敗れた相手にリベンジするだけでなく、W杯出場のためにも絶対に負けられない一戦。勝利の鍵になるのはチャンスでゴールを決め切れるかだ。これまで相手よりも多くシュートを放ちながら結果を出せなかった試合は多いが、今回招集されたメンバーにはその前例を打破する期待がかかる。充実のアタッカー陣で“ヒーロー”になるのは誰だろうか。(取材・文:河治良幸【アル・アイン】)

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 UAEに勝利するために大事なことは何か。相手の司令塔オマル・アブドゥラフマンをいかに止めるか、アウェイの雰囲気にいかに飲まれないか、ジャッジにどう向き合うか、もちろん離脱したキャプテン長谷部誠の代わりに誰がキャプテンマークを巻きリーダーシップをとっていくかなど注目するべき点は多いが、何より勝負の決め手となるのはチャンスでゴールを決めきれるかどうかだ。

 1-2で敗れた前回の対戦は前半11分に清武弘嗣のFKから本田がヘッドで決めて先制したが、トータル25本のシュートで結局その1点に終わり、UAEのシュート数は日本の半分以下の9本ながら直接FKとPKで2点取られて敗れた。

 さらに振り返ればアギーレジャパンの最終戦となったアジアカップ準々決勝のUAE戦も1-1のまま延長戦でも勝負がつかずPK戦決着となり、日本はシュート32本、UAEはたったの3本だった。

 UAEに対する“リベンジマッチ”とも呼べる大一番で殊勲のゴールを決めた選手はヴァイッド・ハリルホジッチ監督も常に探している“真のゴールゲッター”に近づくことになり、今後に向けた信頼もかなり高まるはずだ。

 もちろん日本に得点が入るなら、それがセットプレーからDFのヘディングシュートであろうと、極端な話オウンゴールでも問題ない。それでも期待という意味ではアタッカー陣が候補になる。

 アジア最終予選5試合を終え、原口元気が4得点、2次予選を合わせれば本田が7得点を記録しているが、最近のクラブで結果を出している大迫勇也と久保裕也には大きな期待がかかる。大迫は今季のケルンで6得点ながら、その大半が“半端ない”というお決まり表現通りのスーパーゴール。さらに5アシストを記録するなど、チームの得点に直結するプレーが多い。

 ハリルジャパンでの初登場となった昨年11月のオマーンとの親善試合では、かつて慣れ親しんだカシマスタジアムで躍動し、前半だけで2得点を決めた。しかし、続く最終予選のサウジアラビア戦は抜群のキープ力と迫力ある仕掛けから何度もチャンスの起点になったものの、自らゴールを決めることはできなかった。

 先週末のヘルタ・ベルリン戦で無回転のロングシュートを決め、観る者の度肝を抜いた大迫は「チームと代表は別なので、役割も違いますし。ただ、いい気分で入れたので、試合もスムーズに入れるんじゃないかと思います。僕はゴールを狙うだけなので、シンプルに頭を切り替えてやりたい」と語る。

「こっちに来てもそんなに考えてやることはないと思うし、ゴールに向かってくことですね。どんどんゴールを狙うこと。相手に勢いがあるなって感じさせること」

絶好調の大迫と久保。特徴の違う2人の生かし方

 大迫のそうしたスタイルは、ホームで比較的高い位置からプレッシャーをかけてくることが予想されるUAEのディフェンスの裏を突く第一の武器となり、引いて守られてもゴール前での脅威になるはず。普通ならピンポイントに合わせないと決まらないようなシチュエーションでも、大迫は相手ディフェンスを制して広めにアジャストできるため、シンプルな崩しから得点しやすくなる。

 UAEが誇るモハナド・サレムとイスマイル・アハマドのセンターバックコンビは高さと強さに絶対の自信を持つが、一瞬の動き出しに距離を空けてしまいがちで、身長192cmのアハマドはより難点が大きい。

 大迫は純粋な高さや強さだけでなく、柔軟性と機敏性を併せ持つ選手であり、効果的なポストプレーで攻撃に深みを与えながら、高い位置からチャンスを作れれば、タイミングよくフリーでシュートに持ち込む、あるいはラストパスに合わせるシーンを見出せるはず。あとはそこで決めることができるか。

 久保裕也はスイスのヤングボーイズに所属していた前半戦から好調なプレーを見せており、その活躍で評価を高めて昨年11月のオマーン戦で日本代表デビューを果たした。サウジアラビア戦では右ウィングで先発起用されると、相手のハンドを誘うきっかけとなるクロスを上げるなどインパクトは残したが、この試合中に右膝を負傷した影響で、クラブで年内の欠場を強いられた。しかし、そこからベルギーのヘントに移籍すると、その後の出場7試合で5得点とゴールを重ねて今回の代表戦に良い流れで臨んでいる。

 FWの発表をする際にハリルホジッチ監督は「彼らはより多くの試合に出ている選手で、点はあまり取っていないのも事実だが、久保はたくさんの試合で点を取っているので興味深く見ている。欧州で彼を観に行ったが、他の選手と比較して勇気や思い切りがある」と数字通り、ストライカーとしての期待を示している。久保の場合はクラブでもウィングやワイドのシャドーから得点できるという特徴がある。

貪欲さ際立つ久保の有用性。岡崎も虎視眈々とゴール狙う

 原口元気とタイプは異なり、よりオフの飛び出しからペナルティエリア内でゴールを狙うが、メヘレン戦の4人抜きからのゴールよろしく、個の突破から決めることもできる。しかも、もともとの本職がウィングでないわりにクロスが得意で、1トップで先発が予想される大迫との相性も悪くない。その久保は「チャンスをもらえたら、とにかく積極的なプレーをして、仕掛けていきたい」と語る。

「近くの(酒井)宏樹さんとか、(香川)真司さんとか、その辺とどういう絡みでというのはよく話している」と右サイドでのイメージを高める久保は個人で仕掛けるにしても、味方のパスに応じて飛び出していくにしても、周囲のサポートの受け方や相手との駆け引きは重要になる。対面する左サイドバックのワリド・アッバスは前方へのプレスやライン際の1対1に強いが、斜めに飛び出す動きを捕まえるのが得意ではないと見られる。

 その意味でも久保の右ウィングでの起用は非常に有効だ。大迫も久保も前回のUAE戦にはいなかった戦力で、左サイドで先発濃厚の原口も後半30分からボランチのポジションに投入されていた。「苦手意識も無いですし、ただただ早く試合をしたい、貪欲に点を狙っていきたい」と大迫。

 もし原口、大迫、久保と前線に揃えば、個の打開力と周囲に合わせて決める能力の両方を持った選手が揃うことになり、UAEの守備陣はホームながら前回の対戦以上に脅威を感じるかもしれない。

 最近のクラブでの結果は彼らより落ちるものの、長くエースストライカーとして日本代表を引っ張ってきた岡崎慎司にも大一番での得点に期待がかかる。レスターでは監督交代で得たチャンスをものにする形でスタメンを取り返し、精力的な守備や幅広くチャンスを引き出す岡崎らしいハードワークでレスターの復調に大きく貢献している。代表でも最終予選に入って1点も取れていないが、今の状態であれば、ゴール前でいい形を作れば本来の得点力を発揮する可能性は十分にある。

終盤なら浅野がヒーローに? アタッカー陣に求められる勇気と積極性

 試合の終盤に点が欲しい場合は浅野拓磨の投入が有効だ。ここ最近シュトゥットガルトでなかなかゴールを決められていない浅野は「チャンスはたくさんありましたけど、その中でも結果が出ないとなかなか、この先も難しい」と語り、危機感をつのらせている。

 ただ、1つのゴールでガラリと状況も立場も変えうるのがストライカーであり、結果が出ない中でも「冷静にプレーはできている」浅野はそのことを自覚している。

「結果がすべてというところで、今までいい人が出られるかというとそうではなくて、今いい人が試合に出られて出続けられると思う。そのために1つのチャンスを大事にしていかないといけないですし、今は追いかける立場ですけど、そのチャンスをものにできれば世界も変わります、そこは1つのチャンスを大事に結果を貪欲に求めていかないと」

 UAEがどんなに強くタイトな守備をしてきても、後半の途中から縦にも横にも間延びが生じやすくなり、攻守の切り替わりにも対応しにくくなる。そこで浅野のスピードが発揮されれば、うまくいけば一発でディフェンスの裏を突くことができ、そこに対応されても中盤と最終ラインの間にスペースを生みやすくなる。特に今回のUAEはボランチに出場停止と負傷者が出ているため、本来の選択肢から起用することができない。そこは先発の選手も狙いどころだが、浅野が後半途中から入ってくればより有効になる。

 アウェイでの戦いは前回の対戦ほど日本にチャンスを与えてくれないかもしれないが、アタッカー陣がより勇気と積極性を持ってゴールを貪欲に狙い続ければ結果が出る可能性は高まる。そこで誰がヒーローとなるかは不明で、勝利をもたらす得点はDFやボランチの選手が決めても値千金の価値があるもの。ただ、前線の選手がゴールを決めれば“真のゴールゲッター”として最終予選の残り試合はもちろん、ロシアW杯に向けても頼れる得点源として注目が高まるはずだ。

(取材・文:河治良幸【アル・アイン】)

text by 河治良幸