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先日、電気グルーヴの取材をする機会を得ました。その取材が決まった日に私がしたこと、それは自慢! 「電気の取材することになったよ」(私)、「マジかよ!!!」(旦那)。うちは夫婦揃って電気グルーヴのファンです。



それから旦那の羨ましがりっぷりといったら、私の予想以上でした。「いいなあ、超いいなあ」「あのふたりに会って話するって、なんだよその仕事!」「オレ死ぬまで羨ましがるよ!!」。嫁こと私、ここぞとばかりに自慢しながら、改めて電気グルーヴの影響力の大きさを感じました。


「電気がいなければ、今の日本の音楽シーンはなかった!」と熱弁をふるう旦那は、1975年生まれの41歳。小学校の運動会でYMOを聴いて電子音楽に目覚めた世代です。


電気グルーヴは“トークがめっちゃ面白い人たち”という認識で中学時代に聴き始め、最も刺激を受けたのは大学生になった1994年。授業とバイトの合間、夕方にダラダラ観ていた子供向け番組「ポンキッキーズ」から流れてきた電気グルーヴの「ポポ」は、そりゃあもうすごい衝撃だったと言います。


ちなみに当時の「ポンキッキーズ」には、ピエール瀧、スチャラダパーのBOSE、安室奈美恵、鈴木蘭々という攻めの出演陣が揃っていました。


90年代半ばはピエール瀧がお茶の間の顔になると同時に、石野卓球がDJとして本格的に海外進出していく時期でもありました。


格安のレコードプレーヤーを購入した旦那は、ドイツのレーベルからリリースされた電気グルーヴ/石野卓球関連のアナログ盤を探し回り、さらには石野卓球が紹介するテクノアーティストから数珠繋ぎで世界中のテクノに出会うようになります。元々コレクター気質だったのもありますが、当時こんなふうにレコードを買い漁るようになった人、きっと日本中にいたんじゃないでしょうか。


そして、ドイツで行われる『ラブパレード』という世界最大級のテクノフェスに思いを巡らせていた90年代の終わり、石野卓球が大規模な屋内テクノフェス『WIRE』を立ち上げます。当然、私たちも張りきって出かけました。やたら男子率の高い横浜アリーナで、この世の天国とばかりに夜明けまで踊りまくる旦那。その横で、私は「マジでテクノばっか!!」と衝撃を受けていました。


当時はフェスブーム幕開けの時代。電気グルーヴは国内大型野外フェスの先駆けとなった『FUJI ROCK FESTIVAL』にも欠かせない存在です。ロック好きの私に連れられて行った『フジロック』で、今度は旦那が「ロックばっかだな!!」と言う番(当時は深夜帯以外、今よりロック色強めでした)。


電気グルーヴがいたから私は『WIRE』へ、旦那は『フジロック』に足を運び、どちらも最高に楽しんだ。テクノ好きにもロック好きにも愛され、結果、両者に新しい景色を見せてくれたのが電気グルーヴだったのです。



それからずっと電気グルーヴは、新しい刺激を発信し続けます。石野卓球のソロやピエール瀧の俳優業など、それぞれの活動にいそしむ時期があっても、ふたりの背後にはいつも電気グルーヴという看板が見えました。


一度だけ、砂原良徳が脱退し、2人体制で作り上げたアルバム『VOXXX』(2000年)のツアー後に燃え尽きたかも……と心配になる瞬間がありましたが、2004年の『WIRE』で見事復活(このへんのドラマは映画「DENKI GROOVE THE MOVIE? -石野卓球とピエール瀧-」で!)。そのあとはソロ活動も含めて考えると、かなり驚異的なペースで新作をリリースしています。



ちなみに我が家の話ですが、2011年に娘が生まれまして、2014年にはご多分に漏れず「アナ雪」ブームが吹き荒れました。幼児っておそろしいもので、気に入った曲を延々リクエストし続けるんですよ。というわけで我が家はしばらく「アナ雪」サントラの無限ループでした。そこにはオラフに扮したピエール瀧が歌う「あこがれの夏」も含まれるわけで、すかさず「これがオラフのおじちゃんの歌だよ〜」と電気グルーヴに繋げる両親。おかげで娘は最近「N.O.」を口ずさんでます。“学校ないし 家庭もないし”……と歌う5歳児、ちょっとシュール。


振り返ると夫婦揃って、かれこれ25年ほど聴き続けている電気グルーヴ。それぞれ思い入れのある曲や忘れられないライブも多いのですが、いわゆる懐メロとか振り返りツールにならないのが、また最高です。過去を懐かしむより、今ある刺激に触れるほうが楽しいに決まってる。


今はニューアルバム『TROPICAL LOVE』を聴きまくり、「人間大統領」のミュージックビデオを家族で観ては「なにコレ……!」と笑いころげてます。この「どうかしてる」としか言いようのない世界観、長年ファンやってるけどやっぱり衝撃的です。



そして何よりうれしいのは、今回の新作も音楽的な刺激に満ち溢れていること。フリーソフトのGarage Bandで作ったという驚きの制作手法から、言葉の選び方、声の使い方、音の重ね方、笑いと狂気の配分──『TROPICAL LOVE』は、とにかくすべて電気グルーヴだけがなしうる妙技だけで作られたアルバムです。


長い歴史を経てふたりが辿りついた最高到達点であり、リスナーとしてその瞬間に立ち会えることを心底うれしく思います。そして、そんな電気グルーヴに取材できたこと、旦那には一生自慢する所存です。


TEXT BY 廿楽玲子