あるサイトに、「日本人の有給休暇消化率が低い理由」という記事がありました。

 それによると、ある調査に「有給休暇取得に罪悪感を持つ人の割合」というデータがあり、調査対象の国の中で、日本は18%というトップの数字で、2位のアメリカの10%と比べても突出して高い数字だったということです。

 罪悪感を持つ理由としては、1位が「人手不足」、2位は「お金がない」、3位は「自営業で時間がない」ということだったそうです。 「人手不足」という理由は、自分が休むと他の人に仕事のしわ寄せがいくということで、罪悪感を持ってしまうのもわかる気がしますが、「お金がない」というのは、大した稼ぎでないのに休むとは言いづらいということなのか、「時間がない」というのも、裏を返せば休む気がないともいえる気がします。

 また「休暇中も仕事が頭から離れない人の割合」というデータでは、日本は13%で、2位韓国の11%を上回るトップの数字だったそうです。いかに仕事中心で回っているか、いかにオンとオフの切り替えが苦手かということがいえそうです。

 この記事によると、有給休暇消化率が極めて高いドイツでは、第2次大戦中で激戦のさなかのドイツ軍でも、休暇取得制度がしっかり維持されていたそうです。 ドイツではこういう国民性、メンタリティーが根付いており、対して日本の場合、ただトップダウンで容易に進展するような話ではなく、まずは一人ひとりが自らの意識改革を行いながら、無理なくできることをやっていくしかないだろうとまとめられていました。

 この「有休消化」と「罪悪感」ということをつなげて考えてみると、私の経験上でも思い当たることがあります。 それは常に仕事が忙しくて休むことが難しそうな会社でも、有給休暇を毎年必ず使い切ってしまう人がおり、その一方どんなに暇な時期が続いていても、休まず働くことが美徳と思うのか、会社にいるのが好きなのか、有給休暇を消化せずにひたすら毎日出勤するような人がいるということです。

 これらのことの一つの見方として、「罪悪感」のハードルが高い人と低い人の個人差があるのだろうと思います。 相当に忙しくて、休むことに「罪悪感」を持ってしまいそうな状況でも、平気で休む人はいますし、反対にどんなに罪悪感を持たずに済む状況を作り出したとしても、休まない人は絶対に休まないということです。そして日本では、「罪悪感」を感じるまでのハードルが高い、平気で休むようなタイプの人の方が圧倒的に少ないです。

 有給休暇の消化率を上げていくためには、個人個人のメンタリティーを変えていく必要があるというのは、確かにそうだろうと思います。 ただ、メンタリティーを変えるには、本人が意識することだけでなく、周りからの刺激や圧力で変わるということもあります。はじめは強制されてイヤイヤ、やむを得ずという気持ちでも、それが続くとペースの変化や慣れにつながります。

 ですから私は、トップダウンの施策で刺激することは、決して無意味ではないと思います。会社全体の決めごとや、上司からの指示で強制的に休ませる方法もありますし、有休消化は当たり前だという雰囲気作りもあるでしょう。さらに国として、祝日の増加や有休消化に何かインセンティブを与えるような施策もあると思います。

 メンタリティーを変えるのは簡単ではありません。日本人は保守的で変わることを好まないという国民性もあるでしょう。しかし、強制的に変えられると、それに合わせていく順応性も高いと思います。 個人の意識改革とともに、周りからの働きかけや環境作りという部分もまた重要なところだと思います。

執筆者プロフィール

小笠原 隆夫 (おがさわら・たかお)
ユニティ・サポート代表
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ユニティ・サポート 代表・人事コンサルタント・経営士
BIP株式会社 取締役

IT企業にて開発SE・リーダー職を務めた後、同社内で新卒及び中途の採用活動、数次にわたる人事制度構築と運用、各種社内研修の企画と実施、その他人事関連業務全般、人事マネージャー職に従事する。2度のM&Aを経験し、人事部門責任者として人事関連制度や組織関連の統合実務と折衝を担当。2007年2月に「ユニティ・サポート」を設立し、同代表。

以降、人事コンサルタントとして、中堅・中小企業(数十名〜1000名規模程度まで)を中心に、豊富な人事実務経験、管理者経験を元に、組織特性を見据えた人事制度策定、採用活動支援、人材開発施策、人事戦略作りやCHO(最高人事責任者)業務の支援など、人事や組織の課題解決・改善に向けたコンサルティングを様々な企業に対して実施中。パートナー、サポーターとして、クライアントと協働することを信条とする。

会社URL http://www.unity-support.com/index.html