【ライターコラムfrom山形】プロ10年目の同級生対決…新主将の本田拓也と讃岐MF馬場賢治の固い絆

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 今季、清水エスパルスから加入したばかりにも関わらず、チームキャプテンに就任した本田拓也。開幕戦から先発でピッチに立ち、果敢なアプローチでボールを奪い取る守備と、ロングキックを生かした展開力で、早くも攻守に存在感を示している。

 ホーム開幕となった3月19日の第4節・カマタマーレ讃岐戦は、そんな本田が、チームを束ねる主将としてのスタンスとは別に、個人的にも楽しみにしていた試合だった。讃岐には、桐光学園高校の同級生・馬場賢治がいるからだ。

 本田と馬場はともに神奈川県出身で、小学校の頃から選抜チームで顔を合わせていた。高校ではダブルボランチを組み、卒業後、本田は法政大学へ、馬場は近畿大学へ進んだ。そして互いにプロの道へ。32歳になる今年はプロ10年目のシーズンだ。

「こんなことって、今のJリーグの選手の中でも数少ないと思う。小っちゃい頃から切磋琢磨してきた選手とまた対戦できるのは本当に嬉しいですよ」

 今回の対戦では、馬場が大きく右のワイドに張るポジションだったこともあり、ずっとマッチアップしていたわけではない。しかし51分に二人が火花を散らしたシーンは実に見応えがあった。それは、山形のコーナーキックのこぼれ球を拾った讃岐が一気にカウンターを仕掛けようとした場面。右サイドでボールを受けた馬場が前を向いて加速しようとした時、一目散にスライディングに行った本田の右足は、的確にボールをタッチラインの外に押し出した。

「賢ちゃんがフリーで上がっていたから、あそこで前を向いて仕事されるのは嫌だったし、つぶさなきゃいけなかったところです。ファウルせずにとることが一番大事だったので、スローインにできたのは良かったです」

 本田は冷静に振り返ったが、馬場の方はもう少しこの場面に思うところがあったようだった。試合後のミックスゾーンに太い黒縁の眼鏡をかけて現れた彼は「たぶん、あいつより僕の方が今日の対戦を楽しみにしていたはず」と目を細め、その場面に言及した。

「スライディングでカットされた時に、あまりJ2では感じないスライディングの質というか、球際の質だったし、キックの質とか、存在感みたいなものは凄い感じました」

 そして、この日の90分をこう表現した。

「何より、やっていて僕としてはすごく幸せな時間というか、今振り返っても特別な時間ではありました」

 試合は、讃岐が馬場の6本を含むシュート14本を打って今季初勝利への執念を見せたが、山形も最後のところで粘り強く守り、0-0のまま試合終了の笛を聞いた。今年の勝負は10月のアウェイ戦に持ち越された。

「小学校からの仲を言えばドローでいいのかもしれないですが、プロとして言えば、次で決着をつけなければいけないところ。次に勝てるように、一つ一ついろんなことを積み上げていきたいなと思います」(馬場)

「次のアウェイでは勝たないといけないですし、そこは今年、しっかり決着をつけたいと思います」(本田)

 幼なじみのような二人は、おそらく、常に視野の片隅にお互いを捉えながら、それぞれのサッカー人生を歩んで来たのだろう。その歩みが交錯する熱い瞬間が、これからもまた、我々を楽しませてくれるに違いない。

文=頼野亜唯子