毎週木曜19時放送のプレバト(MBS制作)。先週のお題は春の鎌倉「江ノ電と桜」。桜だけでなく店の看板など、江の島の街の風景が映りこんだ写真で俳句が詠まれた。


映像を創る


辛口添削でお馴染みの夏井いつき先生がよく指摘するのは、映像が思い浮かびやすいかどうか。今回は、そこに注目してみたい。

最初に発表されたのは、凡人、2位、65点、モデル・佐藤エリの句だ。

鎌倉や車窓に届く初桜

江ノ電は街が近く、車窓から手を伸ばすと桜に手が届きそうだという情景を詠んでいる。映像が想像しやすい句だ。夏井先生は、バランスは良いが「届く」が少し曖昧になっているという。

鎌倉や車窓に白き初桜

確かに「車窓に」の「に」の部分があれば、「届く」と入れなくても伝わる。代わりに色を入れて、初桜の映像がさらに鮮やかになった。

鎌倉や車窓にひかる初桜

桜が光ることで、天気の良さまで想像させている。

鎌倉や車窓に朝の初桜

時間情報を入れることによって、雰囲気がガラっと変わった。その一日が良い日になりそうだという所まで想像させる。たったの三文字でも、ここまで映像を変えるなんてさすがだ。

ミュージシャンの句


そして才能アリ、1位、72点、ミュージシャン・松岡充の句がこちら。

麗かや潮騒汽笛コンチェルト

協奏曲を表すのがコンチェルト。麗かな日差しと、相模湾の潮騒などの様々な音がそのコンチェルトになっているという句。添削は無しだ。

情景を鮮明に思い浮かばせるこの句には、映像を表す言葉が一切使われていない。代わりに「潮騒」と「汽笛」という言葉で音を想像させ、さらにその音から映像を想像させている。そして「コンチェルト」という言葉でそれらを上手くまとめあげている。さすがはミュージシャンだ。

物体を表す言葉を使うのではなく、時間や音で映像を創りあげる。映像へのアプローチは、もっと他にもあるのかもしれない。

(沢野奈津夫)