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●介護保険の支給限度額は要介護度によって異なる
病気を患ったり障害を持ったりした人たちが、住み慣れた家でその人らしい生活を送れるよう、看護師らが生活の場へ訪問してさまざまなケアを実施するサービス・訪問看護。超高齢社会の日本においてそのニーズは高まってきており、そのサービスは広がりつつある。

ただ、実際に訪問看護を利用するとなったら、「どの事業者に依頼をすればいいのか」「毎月の負担金額はいくらぐらいになるのか」などの疑問や悩みは尽きないはずだ。特に看護・介護問題は、ある日突然に訪れる可能性があり、何の事前知識もないまま、さまざまな選択を迫られるケースも考えられる。

そのような有事に備えるべく、今回は看護師を経験した後に看護学について教鞭をとった経験を持つUHCの櫻井友子さんに、訪問看護の利用料金などについてうかがった。

○介護保険と医療保険のそれぞれの特徴

訪問看護サービスには医療保険や介護保険といった公的保険が適用されるが、保険を利用できる条件は2つの間で異なっている。介護保険は原則として「40歳以上で要支援・要介護と認定された人」に適用され、この条件を満たさない人は通常、医療保険の対象となる。それぞれの保険の詳細は以下の通り。

介護保険

介護保険加入者が訪問看護を利用した場合、自己負担額は利用料金の1割(一定以上の所得がある場合は2割)である。その際に注意したいのは、要介護度に応じて保険から支給される金額に上限があるという点だ。

例えば、最も要介護度が軽い「要支援1」の毎月の支給限度額は5万30円(5,003単位: 1単位を10円で計算)で、最も重い「要介護5」は36万650円(3万6,065単位: 同)と、7倍以上の開きがある(1単位あたりの単価は市区町村によって異なる)。この支給限度額を超えた分は全額自己負担となるため、実際はこの支給限度額内に収まるよう、利用者が訪問看護サービスを調整しているのが実情と言える。

医療保険

一方、医療保険の自己負担額は一律ではない。70歳未満の人が対象となった場合、かかった医療費の3割を自己負担するのが大原則ではあるが、義務教育就学前の児童ならば負担の割合は2割に減る。子どもへの手当てが充実している地域ならば、すべて自治体が負担することもある。また、70歳以上の高齢者の場合は1割負担が原則だが、現役並みの所得があれば負担割合は3割まで増える。

そのため、医療保険を利用することになったら、訪問看護のサービスを受ける対象の人は何割負担に該当するのかをきちんと確認しておくとよい。

●モデルケースで1カ月の出費をシミュレート
では具体的なシチュエーションを想定して、介護保険加入者の毎月の支払金額をシミュレートしてみよう。以下に2つのモデルケースを用意し、その症状に見合う毎月の負担金額を計算してみた。ただし、住んでいる地域によって1単位あたりの金額が異なるため、この2つのモデルケースにおける料金はあくまで一つの目安として考えてもらいたい(2例とも介護保険給付の1割負担の人を想定)。

○モデルケース(1)

要介護度: 要支援2

■対象者: 神奈川県相模原市在住の72歳男性

■症状: 大腿骨頸部骨折にて手術後、立ち上がりなどの日常生活動作に支障が出るようになり支援が必要になった

要支援2の保険支給限度額は10万4,730円。この金額の1割にあたる1万473円を超える金額分の訪問看護サービスを利用すると、超過分はすべて自己負担となる。

このモデルケースで想定される月額は8,720円。ヘルパーが週3回、月間12回にわたり対象者の自宅を訪問して身の回りの世話を支援。週に1回の予防訪問看護で症状が悪化しないようにするほか、デイサービスを通じて身体機能の低下を予防するケアプランだ。

○モデルケース(2)

要介護度: 要介護1

■対象者: 神奈川県相模原市在住の65歳男性

■症状:脳梗塞後、軽度のマヒと認知機能障害が残り要介護状態になった

要介護1の保険支給限度額は16万6,920円。この金額の1割にあたる1万6,992円を超える金額分の訪問看護サービスを利用すると、超過分はすべて自己負担となる。

このモデルケースで想定される月額は1万804円。ヘルパーが月間4回にわたり対象者の自宅を訪問して身の回りの世話を支援。軽度のマヒでは日常生活に極端な不便さを感じることが少ない分、ヘルパーの訪問を減らす一方で、専門知識を有した看護師による訪問看護の数を増やすプランを組んだ。

●訪問看護ステーションを利用する上で重要なこと
実際に訪問看護サービスを受けたいとなったら、どの事業所に頼めば"正解"なのだろうか。

「病院付きの訪問看護ステーションがいいのか、小規模ステーションがいいのか」「自宅から多少遠くても信頼できるステーションがいいのか、交通費負担を考えて近場を選んだ方がいいのか」――。悩みは尽きないだろうが、櫻井さんはどのステーションを選んだとしても、現場の医療従事者や医師ときちんとコミュニケーションをとれることが重要だと指摘する。

「ご家庭によって必要な看護サービスは全く違います。例えば同じ『要介護5』であっても、介護・看護を必要とされている方に対し、ご家族が支援できる内容、必要とするサービスが異なるためです。ケアマネージャーさんが作成されたケアプランをご覧になって疑問を持たれた際は、積極的に聞きにいったほうがご自身の満足度も高まるのではないでしょうか。実際のケアをする介護福祉士や看護師、さらには医師とも連携がとれるような体制を作られておくといいと思います」

○自分でサービスを選ぶことの重要性

国民の4人に1人が65歳以上の日本においては、「病院」「介護事業者」「自治体」などの横のつながりが重要視されており、地域で包括的にそこに住む人たちを支えていくための体制を構築中だ。

ただ、櫻井さんは「被保険者の方も『こういったサービスを受けたいんだ』という主張をしっかり持つ必要があります」と話す。どのようなサービスを提供されるとしても、最終的に選ぶのは自分、もしくは当事者の家族であるはずだ。

受動的ではなく、能動的な看護・介護になれるようにうまく訪問看護サービスを利用できるか否かは、結局のところ自分次第ではないのだろうか。

○記事監修: UHC

東京日本橋にあるベンチャー企業、ユナイテッド・ヘルスコミュニケーション(通称UHC)。健康増進アプリ「Wity(ウィティ)」を開発する一方、大手製薬企業のコンテンツ開発を担うなど幅広く活動。社員は心理学、看護学、ロボット工学などの研究者・専門職が多数を占める。皆個性が強く不思議な空気感が漂うが、今日も仲良くお仕事中。

(栗田智久)