『永遠のPL学園 60年目のゲームセット』(柳川悠二著、小学館)

PL学園の野球部が2016年、休部になった。高校野球の名門が、事実上の「廃部」である。なぜそこまで追い込まれたのか。

気鋭のノンフィクションライター、柳川悠二さんが近著『永遠のPL学園 60年目のゲームセット』(小学館)で謎の真相に迫る。第23回小学館ノンフィクション大賞受賞作。

高校野球史に輝く「常勝軍団」

桑田真澄、清原和博、立浪和義、宮本慎也、前田健太・・・OBには誰もが知る有名選手の名前が並ぶ。甲子園で96勝。全国制覇7回。約100年の高校野球史で、「常勝軍団・PL学園」の名前は燦然と輝く。奇跡的な逆転勝利や甲子園のスタント名物だった「人文字」の応援。「PL」と聞いて、様々な名勝負や劇的なシーンが思い浮かぶ高校野球ファンも多いことだろう。

その名門がなぜ「廃部」せざるを得なかったのか。何とか存続できなかったのか。

スポーツ取材の経験が豊富な柳川さんが「異変」を感じたのは2014年8月だった。夏の大阪大会決勝で、大阪桐蔭に敗れたばかり。翌年に向けてすでに新チームが始動していた。

だが、大阪・富田林のPL野球部を訪れると、一年生部員の数が少ない。体格も貧弱だ。しかも、前年の暴力事件で監督が代わっていた。臨時の新監督は野球経験のない、学園の校長先生。その新監督は意外なことを語った。

「教団から(野球部への)寄付は、5年前から途絶えています」
「(野球の有望選手を特別枠で採る)特待生の受け入れは14年から廃止しました」
「野球選手としてだけではなく、人間として人から支持されるような人材を育成したい」

柳川さんの訪問取材から2か月後。学園は一通の文書を現役部員の保護者らに送付した。

「15年度から野球部の新入部員の募集を停止する」――多くの関係者にとって「寝耳に水」だった。

教団はダンマリを決め込む

教団の寄付で野球部を強化する。野球部の活躍で教団の知名度を上げる。信者獲得にも貢献する。教団と野球部は「一蓮托生」、「ウインウイン」の関係だったのに、なぜ、いつ軋みが生まれて亀裂が拡大したのか。

柳川さんはOBら関係者を訪ね、PLの歴史をたどる。そして、衰退の理由を探る。教団はダンマリを決め込むが、柳川さんはOBのこんな言葉を紹介する。

「教団の信者数が減少していることや、学園の経営が厳しくなっていることを口にすることは、現在の教祖の教えを否定することになる」

野球で学校の知名度を上げ、経営を安定させる。高校野球の「ビジネス化」が指摘されて久しい。その先陣を切っていたともいえる「PL学園」の現状は、野球のみならず、多くの教育関係者にとって他人事ではない。その意味でも広く読まれるべき本と言えるだろう。