長時間労働に対する社会的な関心の高まりや、国による残業時間の上限規制の議論を受けて、企業は残業時間削減への取り組みが急務になってきている。

 残業時間削減のために「業務量削減のための改善活動」や「20時以降残業禁止、ノー残業デーなどの残業規制」などに取組んでいる企業は多い。これらは確かに残業時間の削減に有効な取り組みである。だが、大きな成果を出すには、まず自社の残業実態および残業要因を正しく把握した上で適切な対策をとる必要がある。

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【1】 残業実態を把握する

 最初に行うべきなのは、自社の残業実態を正しく把握することだ。なぜなら、残業実態によって、残業時間削減に有効な対策が異なるからである。

 例えば、部門全員の残業が多い場合は、部門の業務量を削減する改善活動が有効だが、特定の個人のみ残業が多い場合は、その個人が担当している業務の効率化や分担変更を図る必要がある。また、慢性的に残業が多い場合は、業務量を削減する改善活動が有効だが、月末月初だけ残業が多い場合は、その時期に実施している業務を効率化したり実施タイミングをずらす必要がある。

 このように残業実態によってとるべき対策が変わってくるため、単に「残業時間が多い」という平均の現象だけを捉えていては効果的な対策を取れない。

 大切なのは、どこの部門が多いのか? 誰の残業時間が多いのか? どの時期の残業が多いのか? など、残業実態を具体的に把握することである。

 そのためには、部門別・個人別の残業時間データを単に取得するだけでなく、残業時間の部門間・個人間・役職別・雇用形態別などのバラツキや、月別・日別・曜日別などの推移を確認することで残業実態を把握する必要がある。

残業実態の把握例(部門別/個人別の残業時間のバラツキ)


残業実態の把握例(管理職/担当者の残業時間比較)


【2】 残業要因を把握する

 残業実態を把握したら、次は、なぜこのような実態になっているのか、その要因を把握する必要がある。具体的には、職場の業務項目を洗い出し、業務量・発生タイミング・業務分担・属人化有無などを把握することで残業要因を突き止めていく。

 主な残業要因は以下の5つに集約されるが、残業要因はどれか1つというより、複数の要因が組み合わさっていることが一般的である。

(1)要員数に対して業務量が多すぎる

 職場の業務項目を洗い出して業務量を積み上げたところ要員数に対して多すぎる場合は、業務量と要員数の適正化を図っていく必要がある。具体的には、まず有効性の低い業務の廃止・簡素化や、業務のやり方の見直しによって業務量削減を図っていく。それでも、まだ業務量が多すぎる場合は増員を検討する必要がある。

(2)各業務に、本来できる時間以上に時間がかかっている

 業務量としては多くないが、本来できる時間(基準時間)よりも余計に時間がかかっていると残業になる。主な原因は、スキル不足、手戻り、間延びした仕事の進め方などである。間延びした仕事の進め方とは、「今日は時間に余裕があるからゆっくり仕事をしよう」といった、時間あたりの生産性を意識しない仕事の進め方のことだ。ホワイトカラーの職場では基準時間が設定されていないことが多く、間延びした仕事の進め方によるムダが多い。そのため「この業務は何時間でやる」といった、時間を意識した仕事の進め方に変えていくことで残業削減を図っていく。

(3)業務の実施タイミングが悪い

 業務量は多くないが、業務の実施タイミングが悪いと残業になる。例えば、定刻の終業時の直前に急に業務を依頼されたケースや、当日対応する必要のない業務まで当日対応したために残業が発生したケースである。対策としては、受付時間を設定したり、担当者に直接依頼しないように受付ルートを設定したり、業務を受ける際に納期を確認するなどして、業務の発生タイミングや実施タイミングの適正化を図っていく。

(4)特定個人への業務負荷集中

 管理職の残業が多い場合は、プレイヤーとして業務を抱えすぎているケースが多い。残業が多い管理職はもっと部下に任せて、業務移管していく必要がある。また、管理職が遅くまで残業していることにより、帰りづらい雰囲気を作り、“付き合い残業”が発生している可能性もある。管理職は自ら率先して早く帰る姿勢を部下に示すことが求められる。

 一方、担当者の残業が多い場合は、属人化が原因なことが多い。そこで、属人化を解消し、分担変更を図っていく必要がある。また、いわゆる「デキル担当者」に業務が集中し残業が発生しているケースもある。その場合は、管理職が担当者の業務量をコントロールしていく必要がある。

(5)特定時期(日・曜日・月)の業務負荷集中

 特定の日、曜日、月に残業時間が集中している場合は、その時期に実施している業務を効率化したり、実施タイミングをずらす必要がある。対策を実施しても業務負荷が集中して残業が発生する場合は、そのタイミングのみ増員したり、他部門から応援してもらうことを検討する必要がある。

残業削減の真の目的は?

 残業削減は、従来はコスト削減が主な目的であったが、現在はコストをかけでも行うものになっており、目的が変化してきている。現在、社員の健康増進やワークライフバランス確保など、企業は様々なお題目で取り組んでいるが、本来、目指すべきなのは「時間あたり生産性の向上」「採用競争力向上・離職率低下による社員の確保」「顧客や取引先からの信頼の維持・向上」である。

 つまり、「企業競争力の維持・向上」が真の目的であることを忘れてはならない。単なるコスト削減や福利厚生、社会要請に応えるために取り組むのではなく、“儲ける”ための経営戦略として取り組むべきなのだ。

 残業時間削減の取り組みは、生活残業をしている社員やもっと働きたいというモーレツ社員からの抵抗も多い。そのため、何のために残業削減を行うのか取り組みの目的を明確にし、社員に理解させることが、取組初期の段階で何よりも大切である。

筆者:梅田 修二