【ライターコラムfromFC東京】ケガと戦う阿部拓馬の復活、攻撃陣活性化のカギを握るか

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 3月18日に開催された明治安田生命J1リーグ第3節にて、川崎フロンターレとの“多摩川クラシコ”を3−0で制したFC東京。

 試合後、大久保嘉人が「どちらに転んでもおかしくなかったゲーム」と振り返ったように、内容は決して“快勝”ではなかった。だが、GK林彰洋を中心に我慢強く戦い、その中で先制点をもぎ取ったことが、結果的に“完勝”した大きな要因となった。

 先制点を引き出したのは、この日FWの一角を務めた阿部拓馬だ。

 日頃から「トップ下か、2トップの一角かというのは、あくまで守備での立ち位置。攻撃時には自由に動いて、相手の間でボールを受けることや、嫌がるスペースに走ることを意識している」と話すように、76分に大久保からのスルーパスに合わせて、左エリアに抜け出し、川崎のオウンゴールを誘った。それのみならず、ボールを引き出す動きを繰り返し、前線に流動性と躍動感をもたらした。

 阿部自身は、直前の3月15日に行われたYBCルヴァンカップ第1節のベガルタ仙台戦で今季初出場し、先制ゴールを含む2得点を挙げている。その時に「ゴールよりも、ピッチに立てた嬉しさのほうが強かった」と、正直な心境を語ったのは復活の喜びがあったからだ。

 昨年5月にグロインペインを発症。リハビリを続ける過程で、8月には右腓腹筋筋挫傷も重なり、その時は「もう二度とピッチに立てないのでは……」という危機感と恐怖を味わったという。それでも諦めることなく、メディカル・フィジカルトレーナーと二人三脚で、治療やリハビリにあたり、今季はシーズン前から復調の気配をみせていた。

 初出場のチャンスを見事にモノにし、チームに勢いをもたらした阿部だが、そのケガの状態は「完治したとはいえない」という。

「グロインペインというケガはやっかいで、痛みがすっかり消える人もいれば、残り続けてリスクを背負って手術をする人もいる。僕の場合はトレーナーやスタッフのおかげもあって、よいケアの方法がみつかり、徐々にプレーに支障がなくなっている」というが、それでも「今後も痛みとうまく付き合っていくため、今でも日々の練習の8割ほどは、ケガのケアのためのもの」と、人知れず過酷なルーティンを続けている。

 今季、大型補強を敢行し、攻撃陣には大久保やピーターウタカ、永井謙佑らの錚々たるメンバーが新加入したFC東京。

 それに対して「ライバル心や競争意識というのはあまりなくて(苦笑)。僕は与えられた場所、もらったチャンスで自分ができる限りのプレーをする。それだけを考えている」と、黙々と準備を続ける阿部。

 リーグ序盤は連携不足による停滞感もあったが、その攻撃陣を活性化させるカギは、彼が握るかもしれない。

文=藤原夕