<サルマン国王がモルディブ訪問を急遽中止したのは、テロの懸念があったから――インド洋の島国モルディブは今、大国同士のせめぎ合いの渦中にある>

サウジアラビアのサルマン国王一行が、1カ月近くに及んだアジア歴訪を終えた。

サルマン国王は4日間の日程で日本にも立ち寄り、安倍晋三首相と会談するなど、サウジアラビアへの積極的な投資を求める旅になった。その後、一行は中国に立ち寄って関係強化を演出し、順調に外交行脚を続けたが、最後の動向が憶測を呼んでいる。

帰国前に予定されていたモルディブへの訪問を急遽キャンセルしたのだ。

モルディブ政府によれば、キャンセルの理由は国内で流行している豚インフルエンザを警戒してのことだった。だが専門家に言わせれば、それはあくまで表向きの理由で、本当の理由は別のところにあった。

サルマン国王一行に対するテロの懸念が指摘されたからだという。

なぜ、サルマン国王がモルディブで命を狙われなければならないのか。その背景には、モルディブが地政学的に重要な国として注目度が高まっているために、サウジアラビアが強引に影響力を強めようとしていることがある。ただモルディブを取り込みたいのはサウジアラビアだけではない。中国もモルディブを取り込み、インドやアメリカをけん制するという構図がある。今モルディブはどんな状況に置かれているのか。

【参考記事】外国人労働者に矛先を向ける「金満国家」サウジアラビアの経済苦境

モルディブは、インド洋に浮かぶ1192の島々からなる島国で、国土の総面積は東京23区の約半分ほど。国内の島々はインドの南西に連なるように並んでおり、中東やアフリカからアジア、オーストラリアへと抜ける重要なシーレーンに近い。島々のリゾート地による観光業に依存しており、食料の9割を輸入に頼っている。40万人の人口のほとんどは、イスラム教スンニ派だ。

そんなモルディブを、同じイスラム教スンニ派が多数を占めるサウジアラビアは、インド洋の戦略的に非常に重要な国と位置付けている。そしてモルディブに対する影響力を確保するため、惜しみなくオイルマネーを使ってきた。

例えば2013年には経済の停滞に苦しむ同国に3億ドルを用立てし、2015年には予算の足しにと2000億ドルを提供。また軍事施設の建設に5000万ドルを支払う約束をしたり、北部の環状サンゴ礁を港として使えるかどうかの研究費用に100万ドルをポンと提供したりしている。こうした投資以外にも、モスクやアラブ文化の施設を建設している。とにかく、金をばら撒いている印象だ。

こうした取り組みのおかげもあってか、モルディブは2015年にサウジアラビアのライバル国でシーア派国家のイランと国交を断絶した。

山田敏弘(ジャーナリスト)