これがトヨタ車!? と、多くのユーザーに大きなインパクトを与えたC-HR。そのスタイルの意図についてを聞くチーフデザイナー・インタビュー。まず前半はコンセプトを中心に伺います。

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── プレスリリースやトヨタのHPに掲げていますが、今回デザインについて「妥協しない」「ギリギリまで追求する」とは、どのような意図があったのでしょうか?

「狙いとする表現、印象、質感を達成するまでは、手を止めない。必要であれば、TOYOTAのカベを超えること。常識を壊すところまで、決して後ろの走者(開発の後工程部署)へバトンを渡さない、という意識でした」

── 今回の造形上のコンセプトは何でしたか? また、そのコンセプトを考えた理由は何でしょうか?

「造形テーマは「セクシー・ダイヤモンド」です。その前に、車両のデザイン・コンセプトは「センシュアル スピード-クロス」、つまり、「逞しい足回り」、「キビキビとしたスピード感」、「大人の色気」を表現し、圧倒的な個性、独自性を訴求するのが狙いです。この「逞しい足回り」を表現するため、タイヤを張り出させ、スタンスの良さを演出するアイディアとして、造形テーマ「セクシー・ダイヤモンド」に着想しました。平面視で四角いボディを45度回転すると「前後方向にひし型」になってタイヤが4隅に張り出すという立体構成を発案。全長、全幅からはみ出す部分を切り取るとそこにまたダイヤモンド形が現れます。これがダイヤモンドモチーフの原点です」

── ではフロントから具体的に伺います。ランプとグリルは「キーンルック」として、たとえば欧州で販売されるオーリスやアベンシスに合わせたものですか? あるいはC-HR独自の造形でしょうか?

「私たちは、TNGAプラットフォームを得て、よりワイドで安定感あるパッケージをベースに、より立体的に強調した造形を目指し「キーンルック」を進化させています。キーンルックはトヨタ車の中でも、欧州を初めとしたグローバル市場に展開している車種を中心に採用しているフロントフェイスのアイデンティティ表現です。表情の与える印象(知的・明晰さ)と基本的な表現手法に一貫性がありますが、個々の車両のコンセプトや造形の特徴を活かし、多様性も持たせた表現をしています」

── では、C-HRの独自のキーンルックはどのようなところですか?

「具体的には、トヨタマークから翼形状にサイドまで回りこむ薄く力強いヘッドランプのアッパー部分と、車両の特徴でもある巨大なフレアを活かし、よりコーナーアーキテクチャーを強調することで、力強くスタンスのよい構えを表現した「アンダープライオリティ」との組み合わせにより、鋭く力強いキーンルックを表現しました」

── 初期スケッチのフロントフェイスでは巨大なアンダーグリルが顔の大半を占めていましたが、量産はボディ色のパネルが2段重ねのような表現となり、アンダーグリルが小さくなりました。この変遷の意図はどこにありますか?

「スケッチからフルスケールモデルへ移行して開発していく段階で立体とグリルの比率を吟味、調整した結果です。初期スケッチのアイディアは大胆でよいのですが、顔に厚みがあるので、グリルが大きすぎるとフロントの立体としての塊が感じられにくかったり、重心が高くなり過ぎてしまう場合もあります。なので、グリルを下へ下げることによってフロント全体の重心バランスを取り直し、立体感の表現と構えのよいスタンスを狙っています」

── 前後バンパーの下部、とくにフロントは薄い板状のパネルを紙のように折り重ね、同時にレイアー風の処理をしています。ここにはどんな狙いがあるのでしょうか?

「クロスオーバーとしてのキーンルック、アンダープライオリティを表現する中で、力強さとキビキビとしたスピード感を併せ持つフロント周りを狙いたいと考えました。その場合、初期モデルのようなカンガルーバーを想起させるような形状よりも、エアロダイナミクスを連想させるような造形とし、さらに上部の立体がくわえ込むようなレイヤー構成としてノーズの高さから来る重さを避けるとともに、スピード感と一体感のあるフロント造形を狙っています」

── キーンルックというトヨタの「決まりごと」を守りつつ、一方で常識を壊すという姿勢が一貫しているのが印象的ですね。後編ではボディのサイド面から、さらにトータルな造形表現について伺います。

[お話を伺った方]

トヨタ自動車株式会社 トヨタデザイン部
C-HRプロジェクト・チーフ・デザイナー 伊澤和彦

(インタビュー:すぎもとたかよし)

「セクシー・ダイアモンド」でトヨタの壁を越える!C-HRのチャレンジ・デザイン(前編)(http://clicccar.com/2017/03/22/455871/)