276ページに及ぶ第三者委員会調査報告書

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 IT大手ディー・エヌ・エー(DeNA)が運営していた医療系情報サイト「WELQ」(ウェルク)によって明るみに出た「キュレーションサイト」問題。他のサイトの画像や文章を剽窃して記事を大量生産し、収益化していたことが明るみに出て、大きな波紋を呼んだ。

 現在、「MERY」を筆頭とする同社が運営するキュレーションサイトはすべて公開停止となっている状況だが、昨年12月に発足した第三者委員会による調査が終了したことを受けて、3月13日に「第三者委員会調査報告書」が公開された。これによると、74万7643件の画像で正当な権限なく画像の複製を行った複製権侵害の疑いがあるという。

 276ページに及ぶこの報告書を、ネットメディア運営に関わっていた人々はこれをどう読んだのか。過去にキュレーションサイトを運営していた男性・A氏(29歳)は、こう語る。

「背筋が凍る思いで報告書を読み進めました。DeNAが運営していたメディアとは比較になりませんが、自分自身、小規模なキュレーションサイトでお金を稼いでいました。今回の“WELQ騒動”をきっかけにサイトの公開を中止していますが、運営をはじめた当初は“簡単に稼げるビジネス”くらいにしか思っていなかった。

 報告書にもあったように、DeNA側もキュレーション事業に参入する上で、そもそも『キュレーションとは何か?』をしっかりと議論していなかったのでしょう。おそらく、前例として成功している『NAVERまとめ』を参考にした程度ではないか。ネットにある一次情報の価値についての共通理解がなかったことと、“グレーゾーンはすべて白”というご都合主義が問題の本質ではないかと思う」(A氏)

 別のウェブメディアの運営に関わっている女性・Bさん(27歳)は、画像使用についての問題を指摘する。

「報告書では、URLをつけてリンク元サイトの画像を表示する『直リンク方式』と、他サイトの画像を保存してそのままアップロードする『サーバ保存』、どちらが“白か?”という議論がなされていたようですが、それはグレーゾーンの中でどちらがマシかを論じているだけであり、問題の本質ではないと思います。

 もともとMERYでは、『直リンク方式』は他サイトへのフリーライド行為でモラル的に問題があるとして『サーバ保存』を採用していたといいます。ところがDeNAは、MERYを運営していたペロリ社買収にあたって、『サーバ保存』だと著作権法に違反する恐れがあるため、直リンク方式に改めるようと指示をしている。この指摘は逃げ口上としか思えません。ネット上ではフリー素材を使う場合でも、『直リン(直リンク)禁止』が最低限のルールとして広まっています」(Bさん)

「直リンク方式」でHTMLのimgタグに画像URLを記述する「オブジェクト埋め込み」は、相手のサーバに負荷がかかるため、ネット上で忌避されている行為のひとつだ。Bさんは続ける。

「一方で、『サーバ保存』にも問題がある。たとえば、画像投稿SNS上にある他人の画像データを、自サイトで取得したアカウントに転載し、その上で再度自サーバに保存すればグレーが白になる、という魔法のような逃げ道もあります。今回のDeNAの10個のサイトがそれを行っていたかは明らかにされていませんが、十分考えられる方法だと思う」(同前)

 Bさんは、DeNAが「直リン方式」か「サーバ保存」かで議論していたこと自体に、怒りを覚えているという。

「DeNAレベルの資本投下が可能な企業ならば、10個のキュレーションサイトそれぞれが画像素材をオリジナルで作るべきだったと思います。『Instagram』の他、『Pinterest』『We Heart It』といった画像投稿SNSから転載するくらいなら、会社のスタジオとデジカメを使っていくらでも“それっぽい写真”は撮れたはず。クリエーターや、他人の創作物に対する敬意や誠意が感じられないのが不愉快です」(同前)

“WELQ騒動”以降、同社のキュレーションサイトの問題ばかりが取り沙汰されているが、同社サイト以外にも小規模なキュレーションサイトは多数存在する。DeNAのサイトが休止している間にも、多くのサイトがグレーゾーンを利用して他サイトの画像や文章を無断転載し、広告収入で稼いでいる現状だ。ネット上の一次情報の利用については、今後より踏み込んだ議論が続けられるべきだろう。