“のん”出演のLINEモバイルCMがいい!曲と映像の名作CM選

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 女優・のんが改名後初めて出演するLINEモバイルのCMが15日から放送されています。これがとても鮮烈でした。

◆のんのLINEモバイルCMがすごくいい

 真っ白なシャツを着て、じっとこちらを見つめるのんと、キリンジの名曲「エイリアンズ」。この絵と音の組み合わせに、商品やサービスのPRを超えたインパクトがあったのです。

 興味深かったのは、撮影前のエピソード。監督から江國香織の短編小説『デューク』を渡され、「エイリアンズ」を聞きながら物語に登場するキャラクターの気持ちやイメージをふくらませて、あの表情を作ったのだそう。

 プロモーションを全面に押し出すのではなく、まず映像作品として訴えかけるパターンの成功例だと思います。タレントや新曲との単純なタイアップばかりでは飽きてしまいますもんね。

◆団しん也を起用したパイロットのセンス

 そこで思い出したのが、筆記具のトップメーカー、PILOTの企業CM。“誰かを思う時間”篇では、孫娘の姿を思い浮かべながら、手紙への返事をしたためる祖父が描かれています。

 音楽は、団しん也が歌う「True Love」(コール・ポーター作曲のスタンダード)。この歌声が、実に滋味深いのです。ふくよかに根を張った低音と、一つ一つの音に軽やかに折り目をつける正確な節回しに圧倒されます。団しん也をチョイスする見識そのものが、PILOTからのメッセージなのでしょう。

 こうして万年筆一本に込めた思いが、ストーリーや選曲と高い次元で一致している。それを具体的なスローガンではなく、柔らかなイメージとともに表現したい。そこに音楽の果たす役割があるのですね。

 ミサワホームと南佳孝も、同じ発想から生まれたペアリングだと思います。

⇒【YouTube】はコチラ 「INTEGRITY(C-2)」篇30秒|デザイン邸宅CM|ミサワホーム https://youtu.be/5onP1b_RkfM

http://youtu.be/5onP1b_RkfM

◆商品が全く出てこないディオールのCM

 そのようなニュアンスを中心にして、CMを独立した作品にしてしまったのがクリスチャン・ディオール。

 ナタリー・ポートマンが出演し、監督はU2やニルヴァーナなどのミュージックビデオで知られるアントン・コービン。そこにジャニス・ジョプリンの「Piece of My Heart」をフィーチャーした映像には、香水のCMなのにそれを使うシーンがどこにも出てこないのです。

⇒【YouTube】はコチラ Miss Dior - The new film (Official Director’s Cut) https://youtu.be/52Z5ob-6jNI

“ミス ディオールを使えばこんないいことが起きる”的な売り文句ではなく、香りの持つ危うさからアイデアが広がっていく。一見ディオールとは正反対に思えるジャニスの荒々しさが、意表を突く匂いになっている点も見逃せません。

 露骨に商品を売り込むのではなく、むしろそれ以外のディテールにこだわることが、結果的にブランド力を高めるのでしょう。

◆1993年〜の日産のCMはすごかった

 そう考えると、1993年に流れていた日産グループの企業CMはすごかったんだなと思います。ムットーニ(自動人形師)の作品と優美なジャズピアノが流れるだけ。

“私達はこれを良しとする企業体です。どうぞよろしく”と価値観を提示したあとは、良い意味で投げっぱなし。

 でも、どんなCMよりも雄弁でした。ひょっとすると、LINEモバイルよりずっと前に「愛と革新。」を体現していたのかもしれませんね。

<TEXT/音楽批評・石黒隆之>