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スウェーデンの空気清浄機専業メーカー・ブルーエア。"CADR"と呼ばれる世界標準の空気清浄機の性能評価指標でも高い数値を示すなど性能の高い製品でも知られるが、北欧メーカーならではのデザイン性の高い製品でも消費者から支持されている。

そこで今回は同社アジア統括ディレクターを務める、ヨナス・ホルスト氏に製品デザインにおける考え方やそれを実現している具体例について話を伺った。

○欠かせない"インテリア"としての空清「Blueair Sense」シリーズ

同社では現在、大きく3つのシリーズを展開している。その中でも特にデザイン性を前面に打ち出した商品として2013年に発売されたのが「Blueair Sense」だ。インテリアに合わせて選べる6色のカラバリを用意した個室向けのラインナップで、強化ガラスを使用した天面にモーションセンサーを備え、その上に手のひらをかざすことで電源のオン/オフと風量の切り替えができるという新たな操作インターフェースを採用した。この操作方法により、本体には操作用のボタンを廃し、スッキリとしたデザインを実現した。

2015年にはさらに進化させた後継機「Blueair Sense+」を発売。基本構造やデザインは従来モデルを引き継いでいるが、ブルーエア製品として初めてWi-Fi機能を搭載した。

「Blueair Aware」と呼ばれる空気のセンシングとモニタリングのための別売のデバイスも合わせて発売。スマホアプリをハブとして連動させることで、空気の汚染度に応じた風量の自動制御やCO2濃度などの数値をアプリ上でリアルタイムで視覚化できるように拡張性を持たせられる空気清浄機として、業界にインパクトを与えた。

こうした空気清浄機そのものの"あり方"を新たにデザインすると言える同社の挑戦的な試みの意図をホルスト氏は次のように説明する。

「ブルーエアは、常にすばらしいデザインの製品を提供することに努めており、10年以上にわたり、スウェーデンの名誉あるデザイン賞であるExcellent Swedish Design賞を受賞しています。Senseの開発は、部屋の中に欠かせない"インテリア"としてのもう一歩進んだ空気清浄機を作りたいと考えていました。そこでスウェーデンのデザイン集団であるClaesson Koivisto Runeとともに開発を進めました。後継機として発売したSense+はSenseで採用したノンタッチセンサーによる操作インターフェースを引き継ぎつつも、Wi-Fi機能を搭載したことによりスマートフォンによるコントロールを実現しました。我々としては、今の時代を考えるとこれはとても自然な進化だと思っています」

Blueair SenseからBlueair Sense+へと変わった際は、両者のカラーバリエーションの違いも消費者の目を惹きつけた。初代であるBlueair Senseはブラック、グレー、ホワイトの他に水色、ピンク、ブラウンの淡色系のカラーラインナップだったのに対して、後継機種となるBlueair Sense+は、ブラック、ホワイト、グレーの他は、レッド、グリーン、ブルーの"北欧カラー"とも呼ばれる彩度の低い原色系のカラーに一新された。

こうしたカラー展開の変更理由やカラバリの選定基準について、「Blueair Senseの発表から3年後に顧客調査を実施しました。すると、3年でインテリアデザインのトレンドが大きく変わっていることがわかりました。我々がカラーバリエーションを考える際には、消費者にとってより身近で、よりニーズを的確に捉えた色を反映させることを第一に考えています」とホルスト氏。

○全製品に共通するデザインの理念は?

一方、ブルーエアが創業以来、同社の中核機種として位置付けているのが「Classic」と呼ばれるシリーズだ。コンシューマ向け商品の中ではフラッグシップとなる製品群でもあるが、こちらも2016年秋に6年ぶりに大幅なリニューアルが図られている。機能面での変更は、Blueair Senseに続いてWi-Fiを搭載。外観上は、操作パネルに目隠し用のカバーを設けるなどこれまで以上にスッキリとしたデザインに改良されている。

同シリーズのみならず、ブルーエアの製品は多機能化しながらも操作インタフェースや見た目のデザイン上はそれを感じさせない工夫がなされているようにも感じられるが、全製品に共通するデザインの理念としてはどういった要素が意識されているのだろうか。

「ブルーエアは、20年前に創立されて以来、プロダクトデザインを大切に考えてきました。ブルーエアでは製品開発をする際、構想段階からデザインについても考慮しています。使用する素材や部品すべてがユーザー体験の一部となり、さらにその体験が世界中の人々にきれいな空気を提供するという目的達成につながると考えているからです。また、私たちの製品の共通したカギとなっているのは"品質"。スチール製の頑丈な筐体を使用しているのもそれを示すためのものです」

ホルスト氏が語るように、ブルーエアの製品は筺体にスチールが用いられている点も特長として挙げられる。それはインテリアとしての高級感にもつながっていると同時に、機能美でもあると次のように話す。

「筐体にスチールを使用することで、費用効率や耐久性、サステイナビリティなどのベネフィットも多くあります。その1つとしてまず、スチールは性能に影響を及ぼしません。硬いスチール製の筐体は、素材としても安定しており、ファンの振動を抑える効果もあるため運転音の低減にもつながります。半永久的にリサイクルも可能で、地球環境にも配慮した持続可能な素材とも言えます」

○シンボル的素材を半分にしたカジュアルラインも追加

スチール製の筺体が同社製品の象徴でもあったブルーエアだが、2016年秋に発売された「Blue by Blueair」ではボディの上半分をプラスチック製とした。ブルーエアの製品はスチール素材を用いていることなどにより他社製品よりも高価であるために購入を躊躇う消費者に対して、手頃な価格で提供できるようにと新たに企画された製品だ。

価格や素材の違い以外にも、プロペラファンの採用や縦型の構造にするなど同社の他のシリーズとは一線を画したモデルだ。見た目の印象も他とは大きく異なるが、デザイン上はどのような点にこだわって開発されたのだろうか。

「デザイナーは、ユーザーにとって可能な限りシンプルで効率の高いデザインにしたいと考えていました。その特徴の1つと言えるのがユニークなモジュール化された構造です。主にファン、イオンチャンバー、フィルターのシンプルな3構造であるため、フィルターの交換やその他パーツを、まるでゴミ箱の中身を捨てる感覚で簡単に交換できます。段階の風量設定や電源のオン/オフを行う操作部も中央のボタン1つに集約し、ワンタッチで切り替えられるようにしました」

前述のとおり、Blue by Blueairは本体下部から吸い込みフィルターでろ過した空気を内部のプロペラファンにより風を増幅し、天面から放出する仕組みを持つ、縦型の構造になっている。その際、空気が放出される穴の部分は幾何学模様のような配置で、デザイン上のアクセントのようにも感じられる。ホルスト氏によると、この配置はコンピューターによるシミュレーションの上に生み出されたものとのこと。「流体力学に基づき、最大限の気流を生み出しつつも運転音を最小限に抑えることができる形状として、このような双曲面の幾何学的な配置になりました」とホルスト氏。

このように、空気清浄機の性能面と合わせてインテリアとしてのデザイン性にも早くから取り組みを続けてきた同社。しかし、空気清浄機そのものやデザインに対して、他国に比べて日本の消費が求めるニーズや傾向に違いはあるのだろうか。ホルスト氏は印象を次のように語ってくれた。

「日本のユーザーは、他国に比べると室内の空気を"管理したい"と考えている人が多くいると感じています。その志向に応えて、日本ではセンサーとダストフィルターが標準搭載されたモデルを販売しています。また、デザイン面については、質感やスマートかつコンパクトで、家の空間に馴染むデザインを好む傾向があると思います。北欧デザインに対する興味や関心もとても高いと感じていますね」

ここ数年、空気清浄機のデザイン訴求にも力を入れる日本のメーカーが増える中、外観だけでなく操作インタフェースとしてのデザイン性に至るまで、専業メーカーとして常にリードを続けるブルーエア。そんな中、2016年秋に発売されたBlue by Blueairはそれまで高級路線を歩んできた同社としては少し毛色の違うラインナップで、業界を驚かせた。

とはいえ、ホルスト氏のお話からは性能や機能美をデザイン性に反映させるという同社のポリシーはしっかりと守られているということが伝わってくる。今後もトレンドや消費者のニーズに合わせながらも、業界のリーダーとしてこれまでにない新しい製品を出し続けてくれることを期待してやまない。

(神野恵美)