北朝鮮の個人運送業、資金源は脱北して韓国に住む家族

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北朝鮮で、ソビ車と呼ばれる個人運送業が改めて脚光を浴びている。市場経済の拡大で貨物の流通量が増加しているのに、鉄道などの従来の輸送手段がまともに機能していないからだ。両江道(リャンガンド)のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

最近、両江道の恵山(ヘサン)、平安北道(ピョンアンブクト)の新義州(シニジュ)などの国境地域のみならず、平壌や平安南道(ピョンアンナムド)の平城(ピョンソン)でも、車を購入する人が増えている。自家用車ではなく、営業用のものだ。

しかし、私有財産が公式には認められていない北朝鮮で自動車を購入するには、若干の手間がかかる。

北朝鮮の民法は59条で、公民は住宅、家庭生活に必要な様々な家庭用品、文化用品、その他生活用品と乗用車などの機材を所有できると定めている。しかし、実際は個人の自動車の所有は認められていない。つまり、法的根拠のない慣習が私有財産を制限しているのだ。

そのため個人で買った車であっても、所有者が所属している機関や企業所などの名義で登録しなければならない。機関の責任者と条件について合意した後、保安署(警察署)の交通運輸課がその機関に関連付けられたナンバーを交付する。

もちろん、様々な事務処理に多額のワイロが必要になる。

車のオーナーは、所属する機関や企業所の上司に出勤扱いにしてもらうために毎月15万北朝鮮ウォン(約1950円)、保安署には運行許可証を交付してくれた謝礼として毎月5万北朝鮮ウォン(約650円)を納める。いろいろ含めて毎月支払うワイロの額は30万北朝鮮ウォン(約3900円)になる。それに加えて1リットル1万北朝鮮ウォン(約130円)のガソリン代もかかる。

北朝鮮では、国の機関の幹部と言えどもコメ数キロ分の月給しかもらえない。彼らはワイロを受け取ることで生計を立て、ワイロを支払うオーナーは、運送業で儲けるという共生関係にあるのだ。

国の機関の財産として登録されるとわかっていても、車を買おうとする人は多い。北朝鮮の車両の台数は、2015年からの3年間で倍増したと言われている。乗客や貨物の量は増えているのに電力難で列車がまともに運行できず、そのうえ2月までは一般人の鉄道利用が禁止されており、今まで以上に個人運送業が脚光を浴びているからだ。

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そして、個人が運送業を始めるための資金源となっているのが、脱北して韓国に定住している脱北者だ。

韓国定住12年目のある脱北者は昨年秋、咸鏡北道の清津に住む弟から「トラックがほしいからカネを送ってくれないか」と持ちかけられた。「車の個人所有はできないはず」と半信半疑だったが、「名義貸ししてもらえば、実質的なオーナーは自分になる」と弟から説得されたため、結局3000万ウォン(約294万円)を送金した。

ちなみに中朝国境の中国側の丹東では、10年落ちの4トントラックなら1万元(約16万3000円)前後、新車ならその10倍以上だ。

脱北者が北朝鮮に残してきた家族に送金することは、もはや珍しくない。

脱北者団体のNK知識人連帯の調査によると、調査対象の脱北者のうち51.7%が「北朝鮮に送金したことがある」と答えている。韓国のNGO・北韓人権情報センターの調査でも、2014年1年間に北朝鮮に送金した人は全体の5割に達した。

送金額は「100万ウォン以下」が31.1%、「101〜200万ウォン」が36.3%、「201〜300万ウォン」が16.4%、「300万ウォン以上」は16.3%だった。「501万ウォン以上」と答えた人も5.1%に達した。(※100万ウォンは約9万8000円)

個人運送業に進出するのは、脱北者の家族だけではない。

新義州の情報筋は、中国との貿易で儲けているトンジュ(金主、新興富裕層)も車両の確保に積極的で、平壌では自動車整備などを行う公共機関の自動車事業所とバス事業所に登録した個人タクシーも登場したという話を聞いたと述べた。