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●世界ナンバーワンを目指すショーケースビジネス
パナソニックが、2016年4月に、米ハスマンを買収してから、まもなく1年を経過しようとしている。ハスマンは、スーパーやコンビニエンスストアなどに導入されている業務用ショーケースメーカーとしては、世界最大市場となる米国で、1、2位を争う企業だ。

パナソニックが高成長事業に位置づける「食品流通」の中核企業の1社であるとともに、2018年度までの戦略投資として計上している1兆円の2割弱となる1854億円を投資して買収。同社が成長戦略のひとつに掲げる「非連続投資による成長」の象徴的存在ともいえ、同時に、「グローバル経営を加速させるトリガー」とも位置づける。

そして、日本における食品流通での実績に加えて、ハスマンの北米、中南米での取り組みによって、世界ナンバーワンのショーケースメーカーを目指す姿勢を示す。パナソニックにとっても、まさに戦略的買収であったといえるものだ。このハスマンとはどのような企業なのかは、先に述べたとおりだ。今回は、米国市場でのハスマンの取り組みを追った。

○店舗設計からの密着したサポート

米国で、アジア系食材を中心に取り扱う食品スーパーの「99ランチマーケット」は、ハスマンのショーケースを導入している。

全米に43店舗を展開している同店は、米ネバダ州ラスベガスにも3店舗を出店。2015年10月に出店した最新の店舗は、近隣にベストバイなどが出店するエリアにあり、開店時からハスマンを導入している。

約2800平方メートルの店内は、生鮮食品、魚介、精肉、野菜、デリカ、ベーカリーなどのコーナーにわかれ、1万品目以上を取り扱っている。これらのほとんどのコーナーに、ハスマンの冷蔵ショーケースや冷凍ショーケースを導入。店舗全体では、約70台規模になるという。また、冷凍食品などを保存するウォークインフリーザーと呼ばれる倉庫にもハスマンの製品を利用している。

●密着したサポートがキモ
2階のコントロールルームから、店舗内全体の空調やショーケースを管理。ウォークインフリーザーやショーケースなどでは、自動温度調整機能が働いているが、万が一、不具合が発生した場合にはアラームが発生し、すぐに対応できるようになっている。

「店舗内は日々柔軟にレイアウトを変更するようにしている。そうした時にも柔軟に移動させられるショーケースが必要。その点でもハスマンのショーケースは適した設計になっている」と、99ランチマーケットを運営するTAWAスーパーマーケット(大華超級市場服務有限公司)のジョンソン・チェン副会長は語る。

だが、チェン副会長は、「ハスマンの製品は、温度管理に優れていたり、省エネ効果があったり、あるいは環境にも優しい製品である点が特徴だが、なによりも密着した形でサポートしてくれる点を評価している」と強調する。

新店舗の建設計画を立案する段階からハスマンも参加。「グランドオープン時まで一緒に仕事をしてくれるのがハスマンの体制。その後の保守、メンテナンス体制にも評価をしている」と続ける。故障が発生した場合には、サービス拠点から直接駆けつけられる体制も整備している。

さらに、チェン副会長は、「設計段階から一緒に仕事を開始できることから、それぞれの店舗にあったショーケースづくりのために、柔軟なカスタマイズにも対応してもらえるメリットがある。各売り場のショーケースも、様々な種類の食材を置けるように工夫を凝らすことができている」とする。

たとえば、同店の精肉コーナーに導入した冷蔵ショーケースでは、ショーケース内の肉を店員が取り分けて販売できる構造とともに、袋に入れられたお買い得の肉は、来店客が自ら取れるような構造も取り入れたものになっている。こうしたカスタマイズも、緊密な関係によって実現したものだという。

ハスマンが北米市場で受け入れられている理由のひとつが、こうした顧客との緊密な関係づくりに力を注いでいる点だといえそうだ。

○カギとなる3つのポイント

では、パナソニックは、今後の食品流通への取り組みをどう描いているのか。

ひとつは、パナソニックとハスマンとのさらなる連携の強化である。

ハスマンのフィギィCEOは、「パナソニックの傘下に入ったことで生まれるシナジー効果は大きい。IoT技術の活用やサービス連携など、パナソニックが持つ技術を活用することで、これまでにない提案ができる。新たな扉を開くことができる」とする。

フィギィCEOは、現在、パナソニックと共同で、CO2冷媒を使用した冷蔵ショーケースを開発し、これを遠隔地から管理するシステムと組み合わせて、北米市場に向けた新製品を投入する計画を明らかにした。

「これは新たな冷蔵システムであり、今後24カ月以内に発売する予定だ」と語る。

●相乗効果でシェア1位を狙う
「日本の小売店は小規模店舗が多い。北米市場の規模にあわせた大型化が必要であり、パナソニックの技術を活用して、北米市場に最適化した製品として投入する。だが、北米にも小型店舗がないわけではない。そのあたりにもパナソニックのノウハウを活用したい」とする。

パナソニックでは、店舗向け遠隔データサービス「s-cubo」を活用し、設備管理やメンテナンス、予防保全などのサービスを提供している。同様のサービスを米国でも展開する予定であり、「日本での実績を学び、商品化を進めたい」としている。

2つめはソリューションの強化である。これまでは機器の販売を中心となっていたが、食品流通のトータルソリューションとしての提案を加速する。

たとえば、小売店向けの場合、先の記事にて触れたローソンの事例のように、冷蔵ショーケースのほかに、太陽光発電や蓄電システム、サイネージ、セルフレジなどの導入を図っているが、こうした動きはこれから加速しそうだ。パナソニックが持つ商材を組み合わせることは、競合他社にはできない提案にもつながる。

そのためには、アプライアンス社以外のカンパニーを超えた連携も鍵になってくる。また、国内のコンビニでは、年間の出店数が多いため、その動きにあわせた事業スピードを持つ必要がある。そうした体制づくりが、今後の課題といえそうだ。

そして、3つめは、新たな冷媒技術の活用である。

冷蔵ショーケースなどには、これまで特定フロンや代替フロンが使用されてきた歴史があり、オゾン層破壊や温室効果といった環境への負担が課題となっていた。

周知の通り、世界的にフロン撲滅の動きがあり、先進国においては、2020年までに特定フロンを全廃。2036年までに代替フロンを85%減とすることが決められている。パナソニックでは、新たな環境規制を見越してCO2冷媒に対応した製品を2011年から製品化。ラインアップを拡大しており、2017年も、コンビニなどでの平置きショーケースに対応した12馬力モデルを投入。制度に先駆ける形で、地球温暖化防止に向けた対応を図っている。

パナソニックが、ハスマンと共同開発している北米市場向けの冷蔵ショーケースもCO2冷媒を使用したものであり、ハスマンとしては初のCO2冷媒の製品。パナソニック全体として、こうした動きを加速する考えだ。

さらに、IOTやクラウドを活用したサービス提案にも力を注ぐ考えだ。

日本では、ECHONET Liteを業務用に展開。ERMOS(エレモス)による遠隔運用サービスにより、ショーケースの温度を時間ごとに管理をしており、安定的な運用を実現するとともに、予防保守などにも活用していく考えだ。現在、ERMOSは、国内では約2000店舗で導入されており、アジアや中国などにも展開を開始している。ハスマンでは、温度管理のサービスは提供していないが、今後、同様のサービスを開始することになる。

パナソニックの津賀一宏社長は、「食品流通事業を、BtoBソリューションの柱にしたい」と語り、2018年度以降には、約4000億円の売上高を目指す方針を示している。

ハスマンのティム・フィギィCEOも、「パナソニックとの連携により、未来を作ることができる。食品・流通分野における世界ナンバーワン企業を目指す」と意気込む。

成長事業としてのポジションや、世界ナンバーワンシェアを実現するためには、世界最大のショーケース市場である米国におけるハスマンの事業成長が目標達成を左右するのは明らかだ。

実際、食品流通の設備事業は全世界で7兆円の市場規模があるとされ、そのうち、2兆円強が北米に集中する。

パナソニックの技術やノウハウが、ハスマンにとって、成長に向けたアクセルとなるのかがこれから注目される。

(大河原克行)