連続テレビ小説「べっぴんさん」(NHK 総合 月〜土 朝8時〜、BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜)第25週「時の魔法」第141回 3月21日(火)放送より。 
脚本:渡辺千穂 演出:梛川善郎


141話はこんな話


KADOSHO に資金提供の申し出を受けたが、悩んだ結果、すみれ(芳根京子)たちは銀座に総合店をもつことを諦める。

キアリスらしくないと思います


3月18日(土)が17.9%、20日(月)が18.7%とやや調子を落としている『べっぴんさん』。あと少しだから踏ん張っていただきたいです。

集大成であり思い描いていた夢(ワンダーランド)を叶えたいと諦めきれず、気乗りのしない商社の介入に身を任せようか迷うキアリスの4人。
そこで健太郎(古川雄輝)の登場だ。
彼は現実的で、銀行が無理というのだからいまのキアリスの身の丈に合ってないと指摘する。
背伸びせずに地に足をつけて自分たちらしくやっていこうというのがキアリスじゃないか、と健太郎。そりゃそうだ、彼は、すみれたちのその意見で商売優先の考え方を変えたのだから。

すみれたちも映画にお金をかけず貯めていたら良かったのでは。ちょきん、ちょきん・・・と(違う!それは爪切り)。でもまああの映画はかなり小規模だから銀座に土地を買う資金の足しにはならないか。

でも私は前を向いて生きていきたい


身内が入ることで一悶着起きたこともあったことはとうの昔、すっかり安定の家族経営のキアリスで、幹部がほぼ身内。
古門のところにも、すみれや紀夫(永山絢斗)だけでなく、健太郎もついてきて、資金提供をしてもらうことを断る。
「(戦争に)負けたことをバネに世界に勝ちにいこうじゃないですか」と煽る古門(西岡徳馬/徳は旧字)だったが、すみれは「過去の悔しさをバネにしたいとは思っていません」と言う。

“あのとき(戦争)の悲しい思い それをバネに 歯を食いしばって必至に過去を乗り越えようとする”生き方も認めつつ、すみれはこう言う。

「でも私は前を向いて生きていきたい
勇気をもって愛情を胸に信頼する仲間たちと希望に向かって」 

何回目かの最終回的なエピソードが描かれる。
少女の頃、母に言われた四つ葉のクローバーの想いが、ようやく口から出た。言わずとも、すみれはずっとこれを心に秘めて生きてきたのだろう。

それはそれで素敵な生き方だ


(孫のことを)いつまでも見ていたいと心から思います、でもそれはできません。

生まれたらいつかは死ぬ。それは順番やから

「私たちはキアリスという一本の木の種を植えたんだと思います。(中略)
いつか花開く日を信じて目の前の木のゆっくりとした成長を見守ることが改めて大事と気づいたんです」

今、自分の夢が叶わなくても、下の世代にバトンを引き継いでいくのだと達観するすみれに対して古門は、自分たちは出発点が同じでもすべてが違うと驚きながら、「それはそれで素敵な生き方だ」と認めるのだ。
なんて平和的解決。でもこんな懐の大きいだったらエイスのことももうちょっと考えてくれたのではないかとも思うが。

KADOSHO 、横文字がKADOKAWA を思わせるが、出版社の角川とは無関係(のはず)。モデルはおそらく総合商社丸紅だろう。理由はエイスのモデルVANに最も出資していた商社が丸紅だからだが、ほかにも三菱商事、伊藤忠なども経営に参加していたというので、それらの商社を複合させたものかもしれない。
丸紅は、江戸時代から続く老舗。近江商人・伊藤忠兵衛が創業者。明治になって「紅忠」をつくり、その後「伊藤忠商店」「丸紅商店」「三興株式会社」「大建産業株式会社」「丸紅株式会社」「丸紅飯田株式会社」「丸紅株式会社」と体制や社名を変更しながらいまも日本のトップを走り続けている。

やっぱりすごい芳根京子


「べっぴんさん」の三鬼プロデューサーに取材 したところ、最初にすみれ役が決まった芳根京子と神戸の高台にのぼって、神戸の街は二度(戦争と阪神淡路大震災)の悲劇を乗り越えた街であるということを話したという。そのときに共有した想いが作品に確実に表れているような気がした。
歳をとって先が見えてくると「(孫のことを)いつまでも見ていたいと心から思います、でもそれはできません」という考えが去来するもの。芳根京子は20歳にもかかわらず、台詞に実感がこもっている。と思うのは、実際こういうことを言っていた80代の老人の話を聞いたときとまったく同じ感覚だったから。
芳根は母親や祖母との交流を演技に生かしてきたと言うから、観察眼と再現力に優れているのだろう。

そろそろ次の人生に進む頃やない?


すみれは、商店街を歩き、少女時代から今に至るまでを思い出す。
元キアリス一号店、現レリビィに4人が集まると、
すみれ「なんか、なんかな、そろそろやないかと思ってるの」
良子(百田夏菜子)「うちも」
君枝(土村芳)「私も」
明美(谷村美月)「私も」
明美「そろそろ次の人生に進む頃やない?」
と4人の結束力はやはり固い。

すみれの決意を自宅で紀夫に話すとき、窓の外に雪が降っている。
「実は僕も同じことを考えていたんや」などと話しているうちに雪がやむ。細かい。
このとき、すみれと紀夫は向き合っていず、窓の向こうを見ている。
有名なサン=テグジュペリの名言「愛とはお互い見つめあうことではなく、共に同じ方向を見つめることである」的なことだろうか。
すみれが「前を向いて生きていきたい」と言ったように、ふたりはふたりで前(未来)を見ている。
なんともしみじみしながら、142話へ・・・。

モデルのファミリアは、銀座に店舗をつくったわけだが、キアリスのワンダーランドはどうなるのだろうか。
ちなみに、5月7日まで「ファミリアの軌跡展」が神戸元町本店と銀座本店で行なわれている。
(木俣冬)