Inc.:2000万回再生された、ジル・ボルト=テイラー博士が「TED」で行ったプレゼンテーション「洞察の発作」は、TEDのプレゼンテーション動画の中で最も人気の高いものの1つです。この講演を行ったことで、ハーバードで神経解剖学を学んだ博士は、『Time』誌による世界で最も影響力のある100人の1人に選ばれました。また、オプラ・ウィンフリーがスピリチュアル系のゲストと対談する「Soul Series」にも出演しました。

私はボルト=テイラー博士に実際にお会いしたことがあります。そのときに博士は、「講演」を行うときはとてもたくさん練習をすると話していました。TEDの場合は、実際にステージに立つ前に200回リハーサルしたそうです。博士はどうやら、仲間の脳科学者が勧めていることを正確に実践していたようです。

シカゴ大学の心理学教授であるシアン・バイロック博士は、著書『なぜ本番でしくじるのか---プレッシャーに強い人と弱い人』(邦訳:河出書房新社)の執筆にあたり、大事なところで最高のパフォーマンスをやり遂げる人について調べました。

さらに、ひるんでしまう人、つまり「肝心なときにしくじってしまう人」の研究も実施しました。バイロック博士は、シカゴ大学のHuman Performance Labで主にアスリートに関する研究を行っていますが、そこで得られた研究結果を、クライアントへの売り込みやプレゼンテーション、TEDのような講演といった、人前で話をするパブリックスピーキングにも応用しています。

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なぜ本番でしくじるのか---プレッシャーに強い人と弱い人
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研究の結果、バイロック博士は、失敗せずに生涯最高のプレゼンテーションを行う最善の方法は、プレッシャーを受ける状況下で練習することだという結論に至りました。そして著書の中でこう書いています。「軽いプレッシャーを受ける状況下で練習しただけでも、強いプレッシャーを受ける状況下でしくじりにくくなります」

つまり、頭の中でプレゼンテーションをおさらいしたり、小さく声に出して練習したりすることと、大勢、あるいは同僚や友人1人でも良いのですが、人前で声を出してプレゼンテーションをすることは違うというのです。バイロック博士によると、「軽いプレッシャーを経験しておけば、プレッシャーが強くなっても動揺を抑えることができます。(緊張を強いられるような状態で)練習した人々は、落ち着きを失わずにいられるからです――(中略)――人の前でパフォーマンスをするプレッシャーに慣れておくと、パブリックスピーキングに怖じ気づくことがかなり減るでしょう」

ミュージシャン兼パフォーマンス・アーティストのTED講演者、アマンダ・パーマー氏も、実際のパフォーマンスのために、本番さながらのリハーサルをしておくことがどれほど重要かをよく知っています。パーマー氏が2013年にTEDで行った「"お願い"するということ」と題したプレゼンテーションは、900万回近く再生され、人気をさらいました。パーマー氏がそのために行った準備は、バイロック博士が勧めたであろうやりかたそのものでした。

パーマー氏はまず4カ月にわたり、数えきれないほどの時間を費やして14分間のトークを練り上げ、練習しました。何度も書き直し、何度も時間を計り、あれこれ修正を加えて練習したのだそうです。トーク終了後には自身のブログで100人を超える人たちに感謝の言葉を述べていますが、彼らは、パーマー氏がフィードバックを依頼したり、プレゼンテーションの練習を見てくれたりした人たちでした。TEDのために、パーマー氏はたびたび複数の人の前で原稿を読み上げてみて、聞き手が退屈しているように見えたら原稿を書き直しました。耳を傾けてくれる人がいれば、必ずその人の前で練習したと言います。聞き手はバーテンダーだったり、飛行機で隣に座った人だったりとさまざまです。また、持ち寄りパーティーに友人を招いては、トークをして意見を求めました。学生グループの前でもトークを行ったことがあるそうです。そして最後に、TEDのチームを前に2回、練習をしました。

パーマー氏の準備はバイロック博士の理論を裏付けています。プレゼンテーションの成功にはフィードバックがなくてはならないこと。そして、落ち着いてパフォーマンスをするには、何時間にもわたる練習、それもできれば人前での練習が欠かせないこと。

ベストセラー作家ティム・フェリス氏のポッドキャストの中で、アーノルド・シュワルツェネッガー氏は、パブリックスピーキングの技術をどのようにして磨いたかについて話をしています。カリフォルニア州知事になって、強い関心を抱いてきた問題を改善するためには、パブリックスピーキングの力が不可欠だったのです。「繰り返しが大切です。私は練習を繰り返すことが効果的だと思っています。練習すればするほどどんどん上手くなり、不安は少しずつなくなります。とにかく繰り返すことですよ」とシュワルツェネッガー氏は述べました。

プレゼンテーションや就職面接、TED形式のトークを行う前に、自分自身に問いかけてみてください。「自分は十分に練習をしただろうか? 人前でやってみただろうか?」と。パブリックスピーキングの技術を身につけるのに、近道はありません。ひたすら練習すること。それも、ストレスを受ける状況で練習することが効果的なのです。


The Best TED Speakers Practice This 1 Habit Before Taking the Stage|Inc.

Carmine Gallo(原文/訳:松田貴美子/ガリレオ
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