いよいよ今週末、2017年シーズンのMotoGPが開幕する。今年は中排気量のMoto2クラスと小排気量のMoto3クラスに、計5名の日本人選手が参戦する。レースウィークの走行に先立ち、彼らの横顔を簡単に紹介しておこう。


6年目のMoto2シーズンを迎える中上貴晶 Moto2クラスには、中上貴晶(なかがみ・たかあき/IDEMITSU Honda Team Asia)と長島哲太(ながしま・てつた/TELURU SAG Team)の2名。この2月に25歳の誕生日を迎えた中上は、今年6年目のMoto2シーズンを迎える。昨年はオランダGPの優勝を含め、4戦で表彰台を獲得してランキング6位。開幕戦の地、カタールのロサイル・インターナショナル・サーキットで行なわれた最終プレシーズンテストは悪天候に翻弄されて、スケジュールを十分に消化しきれない3日間になったが、その悪条件でも中上は総合トップタイムでテストを締めくくった。

「初日は雨で1周もできず、2日目はコンディション的にまずまずだったので、セットアップを進めて着実に更新できました。3日目は最初からすごく風が強くて、やがて雷雨になったのであまり意義のある走行にはなりませんでしたが、そんななかで総合トップでテストを終えたのは気分がいいし、いい状態で開幕戦を迎えられるので楽しみです」

 2017年シーズンは、チャンピオン争いの一角を占めると見なされている。中上自身の目標も、もちろん明快だ。

「チームと自分のターゲットは、Moto2のチャンピオンを獲ること。チャンピオンシップは長いので、18戦で取りこぼしのないようにできるだけ勝ち星を挙げたいし、その意味では今週の開幕戦から優勝を狙っています」

 この言葉にもあるとおり、昨年の中上は数戦で獲れるはずだったポイントを逃してしまったために、前記の順位にとどまった。高いレベルの安定性が今年のカギだ。そこをクリアできれば、かなり面白いシーズンを過ごすことになるだろう。


長島哲太は2014年以来の世界選手権復帰となる もうひとりのMoto2フル参戦選手、24歳の長島は2014年以来の世界選手権復帰となる。初挑戦の年は脚を骨折する大きなケガで後半戦を棒に振り、2015年と2016年にはFIM CEVレプソル選手権(旧スペイン選手権)のMoto2クラスに戦いの場を移した。昨年はほぼ毎戦で表彰台に上がり、年間ランキング2位。その経験が今回の再挑戦の大きな糧(かて)となっている。

「毎レースほぼすべてのセッションをフルタンクで、タイヤもハードコンパウンドばかり履いて走っていたので、GP復帰に向けた練習をかなりさせてもらえた印象です。それでも表彰台に上れていたことが、今年になって少しずつ実ってくるのかな、という感触ですね」

 今シーズンを戦っていくに際しても、長島は地に足の着いた考え方で臨んでいる。

「まずはポイント圏内に常に入り続けることが目標です。その位置にいることができれば、セカンドグループやトップグループの走りをしっかり学べると思います。2014年に一度経験しているから、いきなり『勝ちます!』と言っても現実的ではないことはわかっているので、今は上位の走りを後ろで見てそれを盗みながら、来年トップ争いをできるような自分に育て上げるのが今年の目標です」


念願のホンダのマシンを獲得して3年目のMoto3に挑む鈴木竜生 小排気量のMoto3クラスは、3名の若い選手がフル参戦する。3名とも、マシンはホンダNSF250RWだ。彼ら3名のうち最年長の19歳、鈴木竜生(すずき・たつき/SIC 58 Squadra Corse)は今年で世界選手権3年目を迎える。昨年までの2年間は、インドのマヒンドラ製バイクで参戦。今年は念願叶って勝てるパッケージを獲得した。

「あまり経験のないままいきなりグランプリに来て、マヒンドラしか選択肢がない状態でした。だから、とりあえず2年間はマヒンドラで経験を積んで、3年目4年目に勝負できるようになりたいと思っていたので、しっかり目標どおりに進めています。また、マヒンドラは新興メーカーだったので、ありがたいことにバイクの開発にもある程度は携わることができたので、それがライダーとしての経験向上につながりました」

 2017年シーズンに向けた目標は「毎レース、最低でもトップ集団にいたいですね」と語る。

「Moto3は毎戦、誰が勝つかわからないくらいの大集団になるので、そのなかにいれば18戦のなかで絶対に1回はチャンスがあると思います。だから、まずはその集団でレースをすることです」

 鈴木より年下の2名、佐々木歩夢(ささき・あゆむ/SIC Racing Team)と鳥羽海渡(とば・かいと/Honda Team Asia)はともに16歳。アジアタレントカップやFIM CEVレプソル選手権(Moto3)、MotoGPルーキーズカップなどで互いに切磋琢磨しあいながら、ともに世界選手権へ到達した。鳥羽は2014年にアジアタレントカップの初代チャンピオンとなり、佐々木は2016年のMotoGPルーキーズカップで日本人初の年間総合優勝を達成した。


鳥羽海渡は「ルーキー・オブ・ザ・イヤーを狙う」と宣言 この数年間を振り返って、鳥羽はこんなふうにふたりの関係性を話す。

「歩夢とずっとここまで一緒にやってきているので、ふたりともライバル心は結構あるけど、でもライバル心があるからこそ刺激しあって、ふたりとももっと上まで行けると思います」

 今年は、ルーキー・オブ・ザ・イヤーは絶対に獲りたい、という。

「全戦トップテン以内でフィニッシュして、表彰台も優勝も狙ってます。とにかく上位フィニッシュを目指してがんばります」


今年から戦いの舞台をMoto3に移す16歳の佐々木歩夢 一方の佐々木も、この数年間に日本国外のレースに参戦してきたことで多くのことが身についた、と話す。

「レースの本場のヨーロッパの雰囲気や、アグレッシブさや、頭を使ってレースをすること。その3つを特に学びました」

 シーズン全体を見据えたプランも具体的だ。

「第1戦からトップテンには必ず入って、3〜4戦目にはトップに絡めるようになり、最後のほうはトップ争いをできるようにしたいです。目標はルーキー・オブ・ザ・イヤーを獲ることだけど、心のなかでは優勝とチャンピオンを目指して戦っていきたいです」

 若さとは大胆さであると同時に、その半面、無謀さの謂(いい)でもある。世界選手権という舞台は、初年度から簡単に活躍させてくれるほど甘いものでは決してないだろう。だが、謙虚に遠慮ばかりしていては、他人の踏み段にされてしまうだけだ。その意味では、彼らの強気な言葉からは、将来が楽しみな好感が漂ってくる。

 恒例のナイトレースとして行なわれる2017年の開幕戦カタールGPは、木曜夕刻から走行を開始。決勝レースは現地時間の3月26日夜――18時(Moto3)、19時20分(Moto2)、21時(MotoGP)にそれぞれスタートする。

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