「女性起業家」という言葉を耳にするようになった昨今。起業をするのに興味があるけれど、どこからはじめればいいか分からないし、ましてや海外でなんて遠い夢のようなお話…という人も多いはず。

そこで、日本の枠を飛び出し、海外で、それも自分自身が情熱のある分野で会社をおこし、最高のチャレンジを経験した先輩に起業までの道のりを伺いました!

ニューヨークで起業した時岡真理子さん

渡航した年:2015年

起業した年:2013年

滞在期間:2年

ニューヨークを拠点に、アジア人向けのマッチングサイト「EastMeetEast」を2013年に創設した時岡さん。仕事の充足感を社会貢献で得たい、という思いからオックスフォード大学でMBAを取得し、起業家に転身。今まで2400人以上のアジア人に幸せなご縁を届けてきた彼女にお話を伺いました!

―30歳の頃にオックスフォード大学に留学されたようですが、そのきっかけは?

「これからキャリアを続けていくなら、お金だけではない満足感が得られることをしたい」と思った

アメリカの大学で情報工学を学んだ後、日本の外資系IT企業で7年ほど働いていました。仕事内容は大企業に自社の会計・経理ソフトウェアを販売するという10億円単位の規模の提案をしていたのですが、「これからキャリアを続けていくなら社会に貢献ができて、お金だけではない満足感が得られることをしたい」という思いがありました。ちょうどその頃に、社会起業(社会問題の改善のために事業を興すこと)で有名なプログラムのあるオックスフォード大学のMBAについて知ったんです。そこで実際に社会起業をした人の事例を読んでいるうちに「私もここで学べば、何かそういう道につながるかもしれない!」と思い、30歳の頃にイギリスへ留学することにしました。

いざ入学すると、すでに起業をした人がたくさんクラスにいて、すごく刺激のある環境でした! 世界や社会を変える高い志をもつ同級生たちとディスカッションしたり授業を受けたりするうちに「本当にできるんだ!」っていう現実味が沸いてきて。みんな、お金よりも「社会に貢献ができる」ということをなによりも誇りに思っているところに、影響をうけました。

日本人女性に聞いた「海外での起業」in ニューヨーク

―そのあと、なぜマッチングサイトを立ち上げられたのですか?

婚活で苦労しているアジア人のためのマッチングサイトを創りたい、と思ったのがきっかけ

卒業後はロンドンで「QUIPPER」という教育用モバイルアプリの会社を共同創業したのですが、当時とても忙しく、プライベートでも落ち着きたいという思いがあり…。相手は親ともコミュニケーションがとれる日本人がいいと思い、真剣に交際できる人をマッチングサイトで探したのですが…。"アジア人"で検索しても日本とは文化の異なるインド人がヒットしたり、婚活に苦労したんです。ユダヤ教向けのマッチングサイトなどは成功しているのに、なぜアジア人向けのサイトがないんだろう?と疑問を持ち始めました。私と同じようにアジア人同士での真剣な交際を希望する友だちも苦戦していて、婚活で苦労しているアジア人のためのサイトを創りたい、と思ったのがきっかけです。

―ニューヨークで勝負しようと思われた理由は?

市場の大きな場所で挑戦したい!

マッチングサービスは、アメリカがグローバルの市場規模の半数以上を占めているのですが、その中でも特にニューヨークで起業するベンチャーが多いんです。その理由にはテレビドラマの「Sex And The City(セックス・アンド・ザ・シティ)」でカジュアルなデートを楽しんでいるのを見ていてもわかるように 、デーティングのカルチャーがどこの都市よりも発達していること、女性が男性よりも人口比率が多いことがあると思います。マッチングサービスは女性がアクティブにならないと盛り上がらないところがあるのですが、ニューヨークの女性って婚活にすごく積極的なんです! そういった背景と、やはり市場が大きいところで挑戦したく、ニューヨークに移りました。

―起業するにあたって、どんな準備をされましたか?

基本的には法律に関することですね。まずは法人設立が必要なので、実際にベンチャー企業を立ち上げた経験者にアドバイスを聞いてまわりました。

あと、オフィスの契約。ベンチャー企業は1年間で人の入れ替わりもあるので、マンスリーで借りることができてリスクを問わないシェアードオフィスを設けました。

そして人事に関する契約書の手配。人事に詳しい人に頼ったり、弁護士に聞いて作成しました。

あと、テクノロジーベンチャーの起業には共同創業者がとにかく重要です。1人で立ち上げるのはリスクもあるし、スキルにおいても1人でカバーできることは限られるので。優秀なCTO(最高技術責任者)を探すのも難しいところですね。あとは大切なのが資金。テクノロジーベンチャーの起業だと最初にけっこう資金が必要になります。

あと、サイトの運営にあたって事前にアジア人が異性にどんなことを重要視するのかという調査などもしました。

―ユーザーを増やすために、どんなことをされましたか?

3カ月でサイトを制作してリリースしましたが、はじめはユーザーがゼロなので登録してくれる人を自分の足で探しにいきました。真冬のニューヨークのコリアンタウンやアジア人がたくさん集まる場所をひたすら歩きまわって「独身ですか?」、「ぜひ登録してください!」と聞きまわり、最初の100人の登録者を集めました。

その後はデジタルマーケティングへ徐々に移行。一番反響があったのはアジア人に人気のアジア系アメリカ人のYoutuberと一緒に街頭でアジア人に「マッチングアプリってどう思う?」と聞いて回る動画を作ったこと。アジア人コミュニティーに影響力が大きいので、効果がありました。動画を何本か出すうちにどんな映像をアップするとユーザーが実際にサイトに来て登録してくれるのか、というノウハウがたまってきて。今、全部のビデオで総再生回数が860万回以上になったんですが、年間でユーザーが5倍以上増えました。

―やりがいを感じるのはどんな時ですか?

「こういう子には『EastMeetEast』じゃなきゃ出会えなかった!」と言われたとき

今まで2400人以上から正式にお付き合いしたというご報告をいただいているのですが、ユーザーからのマッチングをしたというお知らせが一番嬉しいです。私たちのサイトだからこそ提供できる出会いがあると思っています。例えば小さな頃に渡米して自分のルーツの文化を大事にしている中国系アメリカ人男性が、同じく伝統的な文化を大切にする留学生の中国人女性とマッチングしたときに、「こういう子には『EastMeetEast』じゃなきゃ出会えなかった!」と言われたんですが、そういうコメントを聞くと本当にやってて良かったと思いますね。

アメリカの大手のマッチングサイトのプロフィールは「年齢、写真、名前、どこに住んでいるか」といった情報しかないんですよね。でもアジア人は、日本のお見合いの釣書に近いイメージなんですが、職業、収入、大学の学部、食の好み、趣味なども重視しています。「EastMeetEast」ではそういった部分もプロフィールに含め、日本でいうお見合いおばさんのようなサイトにしています(笑)。

―起業家にとって必要だと思う要素は?

すごく重要だと思っているのが「ビジョン」。自分のビジョンをしっかりと持って、それを常に語れる状態であることは重要です。やっぱりベンチャー企業はうまくいかない日々もあったり、アップダウンが激しいんですよね。そんな中で、なんで自分はやっているのか、というビジョンをもつこと。私の会社の場合だと「より多くの世界中のアジア人に幸せなご縁をもたらす」こと。それを、初めだけでなく定期的に実行し続けてシェアしていくのが大切です。

あと、ベンチャー企業なので大変なでき事はたくさんありましたが、「絶対に折れない!」というグリット(やり抜く力)が困難な時を支えてきたと思います。

―今後の目標を教えてください!

現在、アメリカの3都市(ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨーク)をメインに展開していますが、今年はロンドンを含めた英語圏10都市にも拡大する予定です。さらに年末からアジアに参入する計画もあり、より多くの人に幸せな出会いをお届けしていきたいと思っています!

時岡真理子

2002年ノックスカレッジにて情報工学の学位を取得後、日本オラクル株式会社にて勤務。その後、オックスフォード大学でMBAを取得。2010年にロンドンで教育用モバイルアプリQuipperを共同創業(2015年にリクルートが買収)。2013年にニューヨークでアジア人向けのマッチングサイト「EastMeetEast」を創業。