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●訪問看護と訪問介護の違い
自身の最期を病院のベッドではなく、住み慣れた自宅で迎えたいと願う人は少なくない。そのような在宅でのターミナルケアや、通院をするのが難しい人の身の回りの世話をしてもらう際に便利なのが訪問看護だ。

サービスの名称は聞いたことはあっても、その詳細な内容やサービスの対象者までをきちんと理解している人は少ないだろう。それでも、私たちが年を重ねていくのは避けられない以上、親や自分がその恩恵に与る機会もでてくる。そのサービス内容をきちんと知っておいて損はないはずだ。

そこで今回は、看護師を経験した後に看護学について教鞭をとった経験を持つUHCの櫻井友子さんに、訪問看護で受けられるサービス内容などについてうかがった。

○医療業務も含むのが訪問看護

訪問看護のスタッフは通常、街中の訪問看護ステーションや医療機関などに所属しており、看護師や准看護師、保健師、作業療法士などの国家資格を有している。似たような言葉に訪問介護があるが、こちらはホームヘルパーや介護福祉士などがさまざまなケアを実施する。

訪問看護と訪問介護の違いを一言で表すと、「医療業務が入るか否か」ということになる。以下にそれぞれができる作業内容をまとめた。

■訪問看護……薬剤の吸入、点滴、カテーテル管理、採血、注射、床ずれ処置、ガーゼ交換、導尿、摘便、血圧や体温などのチェック、食事や運動などに関するアドバイスなど

■訪問介護……食事の介助、口腔内ケア、洗面・洗髪、入浴の介助、排泄の介助、体位変換、掃除、洗濯、調理、買い物など

「看護師が医療業務とともに着替えや食事のお世話、排泄行為の介助業務も承ることはあります」(櫻井さん)というように、看護師が訪問時に一部の介護業務も一緒に行うことはある。ただ、その逆にホームヘルパーらが医療業務をすることは基本的にはない。

また、訪問介護でしてくれる洗濯や掃除といった日常生活に関する業務は、訪問看護師の業務範囲外となる。この2つを混同したり、間違えていたりすると、必要なサービスが受けられない可能性があるため気をつけよう。

○介護保険と医療保険での違い

「訪問看護の間口は広がってきており、高齢の方を対象とするのはもちろん、小児看護もやる訪問看護ステーションも増えています。中には『小児訪問看護を得意とする』ということを全面に出しているステーションもあります」と櫻井さんが話すように、訪問看護サービスは原則として全年齢で受けられる。ただし、加入している保険によって利用可能な条件が異なっている。

「サービスを受けられる人という意味では、医療保険は全年齢をカバーしています。一方で介護保険を利用した訪問看護サービスは、40歳以上ではないと基本的に受けられず、65歳以上を『第1号被保険者』、40〜64歳を『第2号被保険者』と区別しています。この2種類の保険では、カバーしている年齢と病気が異なります」

実際にサービス利用を検討するにあたり、加入している保険で訪問看護サービスを受けられる条件が異なってくる。そのため、こちらもきちんと理解しておく必要がある。以下に年齢別のサービス利用可能者を保険別にまとめたので参考にしてほしい(これらの条件に該当しない特例も存在する)。

要支援または要介護と認定された場合は、原則として介護保険を優先的に利用するよう制度上決められている。介護保険の方が自己負担額が少ない(原則1割)というメリットがあるため、認定されたら介護保険を利用してサービスを受けるのが賢い選択と言えそうだ。

また、医療・介護保険を利用せずにすべて実費で支払うとなれば、病気の種類や年齢を問わず、誰でも訪問看護サービスを受けることが可能だ。

●1カ月のサービス利用回数は?
受けられるサービスと利用可能な条件がわかったとなれば、どれぐらいの回数を利用できるかも気になる点だ。この利用回数も、加入している保険によって変わってくる。

■介護保険利用時……訪問看護の利用回数に制限はない。1回あたりの利用可能時間は「20分未満」「30分未満」「30分以上60分未満」「60分以上90分未満」の4種類がある。

■医療保険利用時……訪問看護は週に1〜3回まで利用でき、1回あたりの利用可能時間は30〜90分。ただし、厚生労働大臣が認める特別な疾患に罹っている場合は、「週に4回以上」「1回あたり90分以上」などの利用が認められるといった特例もある。

○訪問看護ステーションの地域差が課題

厚生労働省が旗振り役となり現在、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるように支援する体制(地域包括ケアシステム)の構築が進められている。

訪問看護ステーションはその一翼をになう存在として、今後もますますニーズが高まると思われるが、課題はまだ山積している。その一つが「ステーション数の地域格差」だ。

「今まで病院でしか診られていなかった患者さんを、自宅でケアできるようになるということもあり、訪問看護のニーズは高まっています。そして、末期がんの患者さんのケアも対応できるような、レベルの高い訪問看護ステーションも増えてきています。ただし、訪問看護ステーションも病院同様、人口比に対して市町村間でばらつきがあるため、『必要なサービスが必要な人に届く』という点に関しては、まだ課題があると思います」

老老介護や認認介護が珍しくなくなった超高齢社会。自宅での24時間365日の看護・介護が続けば、支える側である家族の心身が破綻してしまう可能性も出てくる。そんなときに訪問看護を利用できれば、ほんのわずかでも自分だけの時間が持て、看護・介護の責務から解き放たれる。例え30分、1時間だけだったとしても、支える側にとっては大きな違いが出てくるはずだ。

支えられる側だけではなく、支える側のQOL向上という観点においても、訪問看護サービスが一日でも早く充足するよう、願ってやまない。

○記事監修: UHC

東京日本橋にあるベンチャー企業、ユナイテッド・ヘルスコミュニケーション(通称UHC)。健康増進アプリ「Wity(ウィティ)」を開発する一方、大手製薬企業のコンテンツ開発を担うなど幅広く活動。社員は心理学、看護学、ロボット工学などの研究者・専門職が多数を占める。皆個性が強く不思議な空気感が漂うが、今日も仲良くお仕事中。

(栗田智久)