今季から名古屋で活躍する永井。開幕戦では2ゴールを奪った。写真:小倉直樹(サッカーダイジェスト写真部)

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 今季、クラブ初のJ2を戦う名古屋で注目したいストライカーがいる。永井龍、25歳。柿谷曜一朗、杉本健勇、山口蛍、丸岡満ら、多くのタレントを輩出してきたC大阪アカデミー出身の点取り屋だ。
 
 永井のプレーを初めて見たのは2014年9月13日、J1・23節のC大阪×柏の一戦であった。当時、C大阪はディエゴ・フォルラン、カカウというワールドクラスのFWを擁しながらJ2降格の危機に瀕していた。ランコ・ポポヴィッチ、マルコ・ペッツァイオリ政権は短命に終わり、この年、3人目の指揮官となった大熊裕司監督の下でユース時代からの盟友、杉本と2トップを組んだのが永井だった。
 
 件の柏戦では左からのグラウンダーのクロスを受けると、「気持ちで押し込んだ」と反転しながら右足を振り抜き、DFの足を弾きながら嬉しいプロ初ゴールを決めた。しかし、「ただ、がむしゃらにやるしかなかった」と振り返る当時は、結局、チームをJ2降格から救うことができなかった。
 
 翌年の2015年には3月から約4か月、J2・大分へレンタル移籍し、9試合で2ゴールの成績を残した。その後、夏にはC大阪へ復帰。しかし、ここで永井の選手人生を大きく変える出来事が起きた。8月の天皇杯・FC大阪戦で、左腎損傷という生死をさまよう怪我を負ったのだ(ちなみに永井は負傷した後もプレーを続け、1得点を奪った。だがチームは1-2で敗戦)。
 
「怪我が良い経験になったという人がいて、それまでは『本当にそうなのか』と、少し疑問に思っていたんです。でも、僕もこの怪我が本当に良いキッカケになりました」
 
 負傷の影響もあり、C大阪ではわずか1試合の出場に終わった2015年を経て、同年のオフに永井はJ2・長崎への移籍を決断する。それも「退路を断ちたかった」と、愛直のあるC大阪へ戻る道を消す、完全移籍での挑戦だった。
 かくしてその決断は――吉と出た。長崎ではかつて“アジアの大砲”として日本代表でも活躍した高木琢也監督の信頼を得て、「1年を通じてこれだけ試合に出られるのは初めてだった」と、確固たるレギュラーの座を掴むと、得点ランキング5位の17ゴールをマーク。一時は首位争いも演じる健闘を見せた。
 
 そして今季「ステップアップ」として名古屋への移籍を決め、開幕戦では周囲を驚かす圧巻のボレー弾を含む2ゴールを決めて見せた。
 
 今の永井のプレーはC大阪に在籍していた当時と比べ、洗練された感がある。前線でボールを受ければ冷静に時間を作り、シュートシーンでも焦りを感じない。長崎時代のオーバーヘッドでのゴールなど真骨頂とも言えるアクロバティックなフィニッシュシーンも増えている。その印象を投げかけると笑顔でうなずいた。
 
「当時と比べ、今はポストプレーなど色々なことがこなせるようになりました。良い意味でゆとりができたというか。名古屋に来てさらに巧くなっている実感があります」
 
 今季の目標は「2試合1得点のペースでゴールを奪う」ことだ。そしてその先にはJ2得点王の座を見据える。
 
 現在のチームメイトである佐藤寿人も2004年の仙台時代にJ2で44試合・20ゴールの成績を残し、翌年には広島へ移籍し、名ストライカーへの道を築いた。
 
「J2で結果を残せば必ずその次につながる」。永井もそう理解している。
 
 昇龍のごとく歩みを進める男の今後にはどんな未来が待っているのか。注意深く見守りたい。
 
取材・文:本田健介(サッカーダイジェスト編集部)