ホンダ・八郷隆弘社長(ロイター/アフロ)

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 ホンダで中国閥が経営の主導権を握り始めている。八郷隆弘社長が4月1日付けで最高経営責任者(CEO)になるとともに、八郷氏が中国で苦楽をともにした倉石誠司副社長が最高執行責任者(COO)に就任、ナンバー2の地位を固める。今春の新任執行役員も中国閥からの起用を決めた。社長に就任して今年6月で3年目に入る八郷氏。経営の中枢を中国閥で固め、経営を磐石な構えにする。

「また中国閥か」――。

 ホンダグループで働く40代の技術系社員は、ホンダが発表した今春の役員人事を見て、ため息を吐く。ホンダは今年6月、「監査等委員会設置会社」へ移行することを決定、これに伴って八郷氏が社長兼CEOに就任、倉石氏がCOOとなってナンバー2の地位を固める。昨年6月に会長だった池史彦氏、副社長だった岩村哲夫氏など、伊東孝紳前社長時代からの重鎮が相次いで退任したのを機に、八郷氏は独自カラーを打ち出そうと躍起になっている。そこでもっとも信頼しているのが中国閥だ。

 八郷氏は社長に就任する前は中国の生産統括責任者だった。そして昨年の役員人事で岩村氏に代わる副社長に抜擢したのが当時、常務執行役員・中国本部長で、長年にわたってホンダの中国事業を統括してきた倉石氏だ。同時に中国合弁会社の東風ホンダの鈴木麻子総経理もホンダ初の女性執行役員として起用した。

 今年6月に専務執行役員から専務取締役に昇格する神子柴寿昭専務も、14年6月まで中国合弁会社の総経理を務めた中国閥のひとり。今回、監査等委員会設置会社に移行するのに伴って、経営と業務執行を分離するため、関口孝取締役・常務執行役員など、執行役員を兼務する取締役5人が取締役を退任する。このため今年6月以降、前社長の伊東氏や社外取締役、監査等委員を除いた実務を取り仕切る取締役6人のうち、トップとナンバー2を含む3人を中国閥で占めることになる。

 さらに、今年4月に執行役員に昇格する2人のうちのひとり、森山克英氏は現在、四輪事業本部マーケティング企画室長だが、15年まで中国の合弁会社に駐在していた。八郷氏、倉石氏ともに旧知の仲。執行役員・ブランド・コミュニケーション本部長としてブランド、広報、渉外、モータースポーツを統括する。さらに、森山氏の部下となる広報部長に就任する浅沼なつの氏も、現在ホンダの中国の統括会社に駐在している中国閥だ。

●遠のく「チーム・ホンダ」

 確かに、ホンダの中国事業は好調で、中国事業担当者を要職に登用するのも、うなずける面があるのも事実だ。ホンダは中国で広州汽車と東風汽車の合弁事業を展開している。従来、それぞれの合弁会社には、東風ホンダには「シビック」ベース、広汽ホンダには「アコード」ベースといったホンダ車のプラットフォーム別にモデルを展開してきたが、東風ホンダ、広汽ホンダでプラットフォームを共通化して商品ラインナップを拡充した。中国市場でのSUV人気の追い風もあって販売が好調に推移している。

 ただ、あまりにも中国閥が跋扈していることに、ホンダ社内には「八郷社長のお友だち幹部体制」との不満の声も囁かれる。社長就任3年目を迎えるのに当たって、批判の強かった伊東体制から脱して独自カラーを打ち出そうとしている八郷ホンダ体制。しかし、中国閥が社内を我が物顔で闊歩するなか、八郷氏が社長就任時に打ち出した「チーム・ホンダ」を実現する日は遠い。
(文=河村靖史/ジャーナリスト)