日本などお湯の入った浴槽につかる温浴の習慣がある国はいくつかありますが、湯船につかったりサウナに入ったりして体を温めることは、運動と同じく健康に効果的であるという科学的な研究結果が次々と出されています。

A hot bath has benefits similar to exercise

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元来、経験則などをベースにして温浴が健康に効果的であると考えられてきましたが、科学的な実験を伴う研究はそれほど進んでいませんでした。しかし、昔から言われてきた体を温めることが健康増進に役立つことが、近年、さまざまな研究で明らかになっています。

ラフバラ大学のS・H・ファルクナー博士らの研究チームは、熱い風呂に入ることと血糖コントロールやエネルギー消費との関連性を調査しました。実験では、14人の男性を被験者として、40度の湯船に1時間つかるのと、1時間のサイクリングをする2パターンの行動の後、燃焼したカロリーと試験から24時間後の血糖値を測定しています。結果は、より多くのカロリーを消費したのはサイクリングで、1時間の入浴によって燃焼するカロリーは約140kcalと、30分間のウォーキング程度の効果しか認められなかったものの、ピーク血糖値に関しては入浴後の方がサイクリング後よりも最大値が10%も低いという結果が明らかになりました。



また、ラフバラ大学のマイケル・グリーソン博士の研究チームによる別の研究では、入浴などによって定期的に体を温める「反復的な受動加熱(Passive Heating)」によって免疫力が向上することが明らかになっています。この研究では、病気や感染症から体を守る抗炎症反応の程度を、受動加熱と運動のそれぞれで比較したところ、受動加熱によって得られる抗炎症反応は運動後と同じ程度であることが分かったとのこと。反復的に体を温めることは、2型糖尿病のような長期的な疾患で発生する慢性的な炎症を軽減する効果があることを示唆しています。

サウナ大国のフィンランドの研究者は2015年に、頻繁にサウナに入る男性は、受動的加熱のおかげで心臓血管機能を改善でき、心臓発作や脳卒中のリスクを減らせるという研究を発表してます。この研究結果は、2016年にオレゴン大学のビエナ・ブラント博士らの研究チームによって出された、「定期的な温浴は血圧を下げる効果がある」という研究発表によって、さらに支持を広めているとのこと。その後、ブラント博士は、受動加熱を受ける事で、血管を膨張させ血圧を下げる因子である一酸化窒素の濃度が上がることを発見。2型糖尿病では一酸化窒素の受容能力が低下することが知られていることから、受動加熱が血圧を下げることに役立つメカニズムが指摘されています。



受動加熱には心臓に対する効果以外にも、代謝に効果的で血糖値をよりよく制御することを示す研究結果もあります。1999年にコロラド州のマッキー医療センターのフィリップ・フーパー医師が行った研究では、2型糖尿病患者に3週間の温浴療法を実施したところ、体重改善、血糖コントロール、インスリン依存の低下という効果が認められました。フーバー医師は受動加熱によって血流変化が起こるのが原因ではないかと推測しましたが、メカニズムを特定するには至らなかったとのこと。

フーバー医師の研究以降、人の血糖コントロールの改善に受動加熱が有効ではないかという研究は進んでいませんでしたが、ラットを使った動物実験では、受動加熱によって熱ショックタンパク質と呼ばれるストレス環境下で発現して細胞を保護するタンパク質が増えることが確認されました。受動加熱によって熱ショックタンパク質が増えることは、長期的にはインスリンの機能を助け、血糖コントロールを改善する可能性があると考えられており、ラットと同様に人間も温浴やサウナなどで体を温めることで熱ショックタンパク質が増えるならば、定期的な運動が難しい患者の治療ツールとして受動加熱を応用できるのではないかと期待されています。