山積みになるほどの缶詰が集まった

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 第69回カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)に輝いたケン・ローチ監督の最新作『わたしは、ダニエル・ブレイク』を上映中の映画館ヒューマントラストシネマ有楽町で、家庭内に余っている食料を持ち寄り、必要な人に再分配する“フードドライブ”を実施。3月18日から20日の3連休で、劇場に設置された机の上には、山積みになるほどの缶詰が集められた。

 本作は、労働者階級や移民など、弱者に寄り添った作品を多く発表してきたイギリスの巨匠ケン・ローチ監督が、世界中で拡大しつつある格差や貧困にあえぐ人々を目の当たりにし、「今どうしても伝えたい物語」という思いで制作。心臓の病気で医者から働くことを止められたダニエルが、政府の理不尽で複雑な制度に苦しめられる中、2人の子供を抱えたシングルマザーのケイティと出会い、家族のような絆を深めていくさまを描き出す感動作だ。18日の初日以降、満席の上映回が続出するなど、注目の作品となっている。

 今回のフードドライブでは、家などで余っている賞味期限が1か月以上ある缶詰などを持ち寄ってもらい、それをまとめて施設やフードバンク団体などに寄付。食料を必要としている人に再分配する。「誰もが享受すべき、生きるために最低限の尊厳」「人を思いやる気持ち」という本作のテーマにちなんで、映画館を舞台に展開することとなった。

 劇中には、ダニエルとケイティが配給券を持ってフードバンク団体を訪ねる場面がある。そこでケイティは、空腹のあまり無意識のうちに子供たちの食料を口にしてしまうが、ハッとわれに返り、おえつする。後悔の念から自らを責めるケイティだが、ダニエルは「君は悪くない」と優しく寄り添う……。そんな印象的な場面を観た直後ということもあってか、劇場では、観客が関係者にフードドライブについて熱心に尋ねる姿も。一度劇場を出てから近くのコンビニなどで缶詰を購入、劇場に戻って寄付をする観客の姿もあったそうで、映画がこの活動に関心を寄せるいいきっかけとなったようだ。

 ヒューマントラストシネマ有楽町の長島理恵子支配人はこの盛況に「最初はどれだけ集まるのか、不安もあったのですが、思った以上に関心を寄せてくださる方が多くて驚きました。これは、やはり作品の力が大きいからだと思います。映画を観ると思わず泣いてしまうんですけど、泣いてばかりじゃいけない、何かをしなくちゃという思いになります。それでこの活動に関心を持っていただけたのかもしれません」と分析する。

 フードドライブは今週末の25日(土)、26日(日)12時〜17時にも同劇場入り口で実施予定。またそれとは別に、本作を鑑賞すると、有料入場者1名につき50円が貧困に苦しむ人を支援する団体への寄付金にあてられることも発表されている。「何かをしたいのに、何をすればいいのかわからない」という向きにも、映画を通じて気軽に参加できるチャリティー活動として注目しておきたい。(取材・文:壬生智裕)

映画『わたしは、ダニエル・ブレイク』はヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国公開中