これまでにも「AppleがポストiPhoneとして重要視しているのはAR(拡張現実)である」と報じてきたBloombergが、ハードウェアやソフトウェア、さらには映画産業に至るまで、あらゆる分野から優秀な人材を集めて作ったAppleのAR研究開発チームの存在を明らかにしています。ARチームのトップに具体的な人物の名前も挙げられるなど、より詳細な情報がリークされたとのことで、稼ぎ頭のiPhoneに取って代わる技術としてARを狙っていると噂されるAppleの動きが現実味を帯びています。

Apple’s Next Big Thing: Augmented Reality - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2017-03-20/apple-s-next-big-thing

VR技術がデジタル世界に仮想的な空間を作り出し、その中に入り込む没入感を生み出すものであるのに対して、AR技術は現実世界を基本としつつ、そこにデジタル情報を追加するものであり、技術的な思想は異なります。VRの代表例は、Oculus VRの「Rift」、HTCの「Vive」、Samsungの「Galaxy Gear」などの没入型ヘッドセットであり、ARの代表例はGoogleのメガネ型端末「Google Glass」やMicrosoftのMR(Mixed Reality:複合現実)ヘッドセット「HoloLens」です。AppleはビジネスチャンスはVRよりもARのほうが有望と見て、後者のジャンルに参戦しようというわけです。

「ARはVRよりも成功を見込める」とAppleのティム・クックCEOは考えていることが判明 - GIGAZINE



BloombergがAppleに近い情報筋から得た情報によると、AppleはすでにAR戦略チームとして、ハードウェア・ソフトウェアの各分野で活躍する才能ある人物たちを社内外から集めているとのこと。このAR技術を研究開発する特別チームは、デジタル音声圧縮技術のドルビーデジタルで知られるドルビーラボラトリーズ出身のマイク・ロックウェル氏が率いており、Oculus VR出身の技術者、Microsoft HoloLensの開発に携わった技術者、ハリウッドでデジタルエフェクトを担当する技術者などが含まれているそうです。また、2016年春にはApple Watchの設計チームを率いたフレッチャー・ロスコフ氏やTHXを生み出したトムリンソン・ホルマン氏なども参画しているとのこと。なお、AppleはARチームについてコメントを拒否しています。

調査会社のGlobal Market Insightsは、AR関連製品の市場規模は2024年までに80%増の1650億ドル(約18兆5000億円)になると予想しています。Loup Ventres創業者でアナリストのジーン・マンスター氏は、「時間が経つにつれて、AR端末はiPhoneを置き換えます。Appleが今後も成長を続けるためには、人々が選ぶハードウェアの変化に備える必要があります」と述べ、AppleのARシフト戦略を好意的に受け止めています。

Bloombergは、AppleのAR戦略は、まずはiPhoneにAR機能を搭載することから始まると予想しています。すでに専用スマートフォンを発売済みのGoogleのAR技術「Tango」デバイスとの競合も避けられそうにありません。

GoogleのAR技術Tangoに世界初対応のスマホ「Phab 2 Pro」がついに日本発売 - GIGAZINE



ASUSの新スマホ「ZenFone AR」はGoogleのAR機能「Tango」とVR機能「Daydream」に両対応 - GIGAZINE



そして、iPhoneのAR機能の先には当然ながらメガネタイプのウェアラブル端末をAppleも検討していると予想されています。ただし、メガネタイプのAR端末に3Dイメージを映し出すには高いハードウェア性能が求められ、バッテリー消費も激しいことから、iPhoneへのAR機能搭載よりもハードルは高そうです。

また、AR機能が普及するかどうかはコンテンツの充実具合にかかっていることは、なかなかブレイクしないApple Watchを含むウェアラブル端末に共通の問題であることは容易に想像ができます。iPhoneに機能を搭載して多くのユーザーを獲得すると同時に、関連コンテンツをいかに素早く発展させるかが、AR機能成功の鍵を握ることになりそうです。



これまでに世に出ているAR端末は、「薄くて軽量だが、貧弱な性能のもの」か「高性能だが、かさばり重いもの」のいずれかですが、ハードウェアとソフトウェアを高度に融合させて新サービスを生み出す能力に優れるAppleであれば、クックCEOが言うような「それがなかった時が想像できなくなるほど便利な端末」を生み出せるのではないかという期待も寄せられています。