"節約めし"の主役として、様々なレシピ本でも人気が高い庶民の味方、もやし。その激安販売が生産者たちを苦しめているという現状がある。


 工業組合もやし生産者協会は今月「もやし生産者の窮状について」という文書を発表、「今後も全国の消費者様への安定供給を維持するために、非常に深刻なもやし生産者の現実や経営環境等にご理解とご高配を賜わりますよう、何卒よろしくお願い申し上げます」と訴えている。

 もやし生産者の旭物産経営企画室次長の阿部能高さんによると、ここ十数年でもやしの原料である緑豆の価格が約3倍に高騰した一方で、小売価格は年々下落。そこに最低賃金の上昇が加わり、「生産に関わっている会社が、極端なことを言うと数年後に半分になってしまう可能性も現状ではあり得る」とし、「世界でもやしを一番安く売っているのは日本。安売りの目玉商品として使われることも多く、仕入れた価格より安く販売されることまる、やはり適切な価格で販売するという形にしてほしい。何も100円にして下さいといいことではなく、お互い損がない価格にしてほしいということ」と訴えた。

 もやしが日本に伝わったのは、諸説あるものの今から1000年以上前と言われており、平安時代に書かれた日本で最古の薬草の本には「毛也之(もやし)」という記述もあるという。日露戦争では、当時陸軍主計少将を務めていた丸本彰造が、その栄養価に注目、「将兵のビタミンC不足はもやしで補う」と、兵食にもやしを加えさせたのだという。


 さらに昭和40年代の「味噌ラーメンブーム」で、もやしの認知度は高まり消費も拡大。スーパーマーケットの登場で、八百屋さんでの"目方売り"から小袋での販売に形を変え、消費者にとって一層便利で買いやすいものとなった。

 しかし、現在国内で食べられているもやしの原料の9割が中国産だといい、原料価格の高騰を販売価格に転嫁できないことが生産者側の深刻な悩みの原因ともなっている。

 同じく旭物産代表取締役の林正二さんは「取引規模が大きいのはスーパーマーケットだが、もやしは、いわば低価格商品の代名詞となってしまっていて、もやしを1円でも安くできるかがが、そのスーパーマーケットの価格全体のイメージにも繋がるため、スーパーマーケット側もなかなかもやしの価格を上げられない現状がある」と話す。

 「1袋1円なんて、もう問題外ですよね。もやしを作るには、本当に大変な苦労があるんです。緑豆を生産する農家の方々も大変な苦労をして栽培して、それを我々は工場の中で栽培する。その苦労を1円で販売するのは悲しいというか、情けないを通り越して…この商売上の考え方が理解できない。安く売って、お客さんが来さえすればそれでいいのか。我々にとっては許せない行為。利益度外視の無駄な売り方をするのではなく、きちんと利益をとった売り方をしてほしい。そうすれば我々も健全な経営ができ、スーパーも健全な経営ができます」(林さん)

 もやしの購入量は年々増えているのもかかわらず価格は下落する一方だ。「一袋あたり40円前後が適正な価格だと思う。でも現実は30円前後。我々の希望する価格と10円くらいの差がある」と林さん。もやし生産者協会がこのような文書を発表したのは、今回が初めてではない。実は2年前にも適正価格を訴えていた。


 林さんは「そのときは5円くらいの値上げをしたいとお願いしたんですが、なかなか上げてもらえませんでした。スーパーマーケットの青果の仕入れ担当者たちは苦境を理解して、どうにかしようとしてくれる場合も多いが、スーパーマーケット間の競争もあり、"苦しさはわかるが、簡単にはできない。もう少し我慢してくれ"と。理解してくれるお取引先もあって、多少は値上げをしてくれていますが、原料価格の高騰を受けて必死にコストダウンしているが、もう我慢の限界に来ています」と訴えた。(AbemaTV/AbemaPrimeより)