スマートフォンやモバイル機器の購入も、今ではオンラインショップでできる時代になりました。

それでもリアル店舗での購入には、まだメリットも多くあります。
リアル店舗には、携帯ショップ、家電量販店など、価格やサポート麺でのなどの比較により、ユーザーにとってメリットのある方法で入手が可能です。

このような便利な環境になったのは、つい最近のことで、スマートフォンの登場以前は、モバイル機器の入手は非常に大変でした。
特に、PDA(パーソナルデジタルアシスタント)登場ともなると。

まだ、PDAという言葉すらなかった時代。
モバイル機器といえば、電子手帳でした。

電子手帳の機能といえば、内蔵されたアドレス帳や予定表を使うくらい。
当然、今のスマートフォンのように、アプリをインストールして、新しい機能を追加して使うという発想もなかった時代です。
まさに、当時のモバイル機器は、最初から決められて用途でしか使えない家電とのひとつだった時代です。

この電子手帳からPDAの移行期に、今でも伝説となっている名機ヒューレットパッカード(現HP)からHP200LXという機種が発売されました。

HP200LXは、
計算電卓機能に加え、内蔵PIM機能(カレンダー、予定表、メモ)が充実していました。
さらに、当時のパソコン用のOSであるMS-DOSが動き、パソコン用のソフトを移植して利用できる、という画期的なモデルでした。

HP200LXは、ソフトを追加して、ネットや写真、音楽などに利用できたのです。
現在のモバイル機器のルーツの一つでもあります。

ですが、当時、このHP200LXの入手は、非常に大変でした。
当時、HP200LXは日本未発売だったのです。

したがって、一般のパソコンショップなどでは販売されておらず、一部の店舗のみが扱うという状況でした。まだ、今のようにインターネットが一般的にはなっていませんので、海外から個人で輸入するということも難しかったのです。

しかし、当時、日本未発売のHP200LXを豊富に扱っていた店舗がありました。
新宿紀伊国屋アドホック店です。

何故か、売り場の一角にHP200LXコーナーがあり、周辺機器も含め、HP200LXと関連製品を豊富に販売していたのです。

実は、当時の同店には「名物店員」が在籍しており、独自のルートで販売していたのです。

HP200LXユーザーからは、新宿紀伊国屋アドホック店は聖地と呼ばれるほどでした。

当時、筆者も聖地巡りをしながら、高価だったHP200LXを購入し、PCMCIAメモリカード8MB版を10万円近い価格で買った覚えがあります。
HP200LX本体が2MBだったので、8MBのメモリカードで十分広大に感じました。

今やスマートフォンの内蔵メモリーは、RAMが2GB、ROMが32GBでも低スペックと言われるほど高性能化しており、HP200LX当時から比較すると1000倍以上の容量にまで進化しています。

現在のようにモバイル製品が、どこでも購入できる時代とは違い、当時のモバイル機器は、なかなか入手できないため本当に貴重でした。
ユーザーは自己責任において、内部を改造しながら何年間も使い続けることも当たり前だったのです。

今のように毎年新機種が出て、買い替えるなんて、当時は考えられませんでした。

新宿紀伊国屋アドホック店のHP200LX売り場に通っては、
「高価な周辺機器にため息をつきながら眺めている」
といった、のんびりした時代でした。

筆者は、最近、そんな思い出のつまった新宿紀伊国屋アドホック店のあった場所の店舗に、娘のバスケット用具を買いに出かけたて、当時のことを思い出したというわけです。
時代の移り変わりを感じる今日この頃です。

入手困難であっても、情熱を注いでいた時代は、モバイルへの情熱が熱く、期待もおおきかった時代です。

今の時代でも、同じように情熱をかけられるモバイル機器の登場を期待したいと思います。


伊藤浩一