凛とした立ち姿。正統派ソウル・グループとしての圧倒的な存在感。そして風格――。

 9人のバックが繰り出すゴージャスなサウンドに導かれるように、デニス・エドワーズをフィーチャーしたザ・テンプテーションズ REVIEWが、颯爽とステージに登場した。ザ・テンプテーションズ(=テンプス)の“第2の黄金期”を築き上げたリード・ボーカリストであるデニスを含む5人の中には、あのデイヴィッド・シーの顔も。まさに、ソウル・ミュージック・ファンには夢のようなメンバーによるライヴだ。

 1968年に脱退したデイヴッド・ラフィンの後釜としてグループに参加したデニス。当時、最先端だったサイケデリック・サウンドを大胆に取り入れた「パパ・ワズ・ローリング・ストーン」がいきなりヒット・チャートに食い込み、衝撃的なお披露目を果たした彼は、その後の数年間、テンプスの顔として数々の名唱を残してきた。もはやソウル・グループの“老舗”と説明しても過言ではないテンプスが、それぞれの時代の空気を呼吸し、数々の“問題作”を発表しながらも、多くの人に愛され続けてきた理由の1つは、デニスらを中心としたテンプスによるソウル・ミュージックの改革と革新があったからに違いない。
 数え始めたらキリがないくらい、名演・名唱が多いテンプス。グループの楽曲としてのカヴァーも、ローリング・ストーンズの「エイント・トゥー・プラウド・トゥ・ベック」やフィービ・スノウの「シャーキー・グラウンド」などを筆頭にロック、ソウル、ファンク、ジャズとジャンルを超え、まるで音楽的イマジネーションの源のように、たくさんリリースされている。テンプスはもはや、単なるソウル・グループではなく、黒人音楽の1つの“ジャンル”になっていると言ってもいいだろう。

 そんな彼らによる、伝統と革新を融合させた最新のパフォーマンスが目の前で繰り広げられる。生命力に溢れたコーラスは、ただ躍動的なだけでなく、深いコクまで感じさせ、非の打ちどころがない。情熱的なデニスのシャウトを支える4人のヴォーカル・ワーク。その力強さと優雅さの綾織り模様と言ったら! しっかり響いてくる低音と、ソウルフルに舞う高温が混じり合ったエモーショナルな「歌」が、僕の身体をガッチリと掴みあげてくる。

 会場はショウが始まった瞬間から、フルスロットルで盛り上がる。アップ・テンポの曲で畳み掛けた初っ端から一転して、スロウなナンバーに――。一瞬にして“ソウルが熱かった時代”の空気が、まるでマジックのように充満する。惜しみなく送られる喝采。観客はコール&レスポンスへの反応もシャープだ。
 ときには最前列の観客と手を繋ぎながら、1人ひとりに歌いかけてくるデニス。その親密な雰囲気は、オーディエンスを夢心地にしてくれる。独特の美意識と躍動感に満ちたスタンド・アップ・リヴュー。一糸乱れぬ振り付けとダンスと共に“熱い体温”を感じさせるコーラス・ワークがエレガントに繰り広げられていく。そしてデニスやディヴッドの爆発力溢れるソウルフルな歌声。僕らは美しく煌めく黒人文化の一端を、まさに“現場”で体験しているわけだ。

 中盤は「テンプスが始まったころに戻ろう…」と言いながら始めたヒット曲メドレーが。「ゲット・レディ」「レディソウル」「パパ・ワズ・ローリング・ストーン」などが立て続けに披露されていく。本当にたくさんの名曲を持っているグループだ。
 高いテンションが続いたあとには、ロマンティックなバラードもたっぷりと――。切々と歌われるナンバーに身を委ねれば、シビアな日常から解き放たれて、レトロでスペシャルなムードに浸ることができる。濃密ながら緩急自在なステージ・マナーに、思わず惹き込まれていく自分がいた。

 歌って、踊って、シャウトして、メンバーと観客が繋がった90分。「気分はどう?」と語りかけながら始まったアンコールは、誰もが聴きたかった、もはや“クラシック”の「マイ・ガール」や「ジャスト・マイ・イマジネイション」などを、再びメドレーで。彼らは僕らの期待に、完璧に応えてくれた。

 伝統的で革新的なソウル・リヴューの格式と躍動と貫禄に満ちたザ・テンプテーションズ REVIEWのステージは、今日(21日)東京で、22日には大阪で2ステージずつ行われる。もはや“リヴィング・レジェンド”と言って差し支えない彼らの完璧なコール&レスポンスを体験できる貴重なチャンスだから、絶対に見逃すことのないよう、チェック・イット・アウト!

◎公演情報
【ザ・テンプテーションズ REVIEW featuring デニス・エドワーズ】
ビルボードライブ東京
2017年3月20日(月)〜21日(火)
詳細:https://goo.gl/mp24FF

ビルボードライブ大阪
2017年3月22日(水)
詳細:https://goo.gl/YxuHoF

Photo:Yuma Totsuka

Text:安斎明定(あんざい・あきさだ) 編集者/ライター
東京生まれ、東京育ちの音楽フリーク。春分の日を迎え、ようやく春本番のムードに満ちてきた街。この時季は緑鮮やかな野菜や白身の魚などをワインと共に楽しみたい。2010年に国際品種に指定された甲州種の白ワインは、ほのかな吟醸香があって、和食と相性バツグン。心地好い季節を感じながら、やさしい気分になれる穏やかな味わいを、ぜひとも試してみて。