映画やゲームなどの標準フォーマットとして広く普及している音声圧縮規格「AC-3」(Dolby Digital:ドルビーデジタル)について、最後まで残っていた関連特許が2017年3月20日をもって失効しました。

The Last AC-3 Patent Expired on March 20, 2017

https://ac3freedomday.org/

1992年に世に出たAC-3は、映画やテレビ用の音声フォーマットとして普及した音声圧縮規格です。AC-3はDVDやBlu-rayでもスタンダードとなり、5.1サラウンドにも対応するなど進化を続け、ライブストリーミング用にAC-3をサポートするネットストリーミングサービスも現れるなど、デジタルサウンドに関して最も成功した音声圧縮規格の一つと言えます。

すでに特許取得から20年以上たったAC-3がいまだに特許で保護されていたのは「Evergreening(エバーグリーニング)」と呼ばれる戦略によるものです。エバーグリーニングとは、大本となる特許に認められる排他的利用権を維持・継続するために、その特許を技術的に一部改変した新たな特許を取得することで、実質的に特許権の有効期間を延ばし技術を長期にわたって独占的に支配する戦略で、医薬品でよく用いられる手法です。エバーグリーニング自体の法的有効性や妥当性については疑義があり批判にさらされていますが、特許侵害で訴えられるリスクを恐れる利用者は、トラブル予防のために特許権者からライセンスを受けて使用料を支払うことが多いと指摘されています。



AC-3もドルビーデジタルサラウンドEX、ドルビーデジタルライブ、Enhanced AC-3(ドルビーデジタルプラス)、ドルビーTrueHDなど、AC-3を改良した新規格を次々出すことで、実質的にAC-3の排他的支配権を維持してきましたが、2017年3月14日が期限の「US644936」、2017年3月19日が期限の「US5890106」の2つの特許が立て続けに存続期間満了のため失効したことで、AC-3の関連特許がすべて特許権が失われました。なお、ac3freedomday.orgによると権利者のドルビーラボラトリーズはSEC2015の会場で、「当社のドルビーデジタル技術に関して残っている特許は2008年から2017年にかけて失効する」と認めていたとのこと。ただし、2012年にドルビーラボラトリーズはパナソニックから大量のサブマリン特許を購入しており、ドルビーデジタル関連の特許がまだ存在している可能性は指摘されています。

これまで、AC-3のライセンス使用料はゲーム機やテレビなどAV機器の販売価格に含まれていましたが、今後は不要になるためAV機器の価格がわずかながら下がる可能がありそうです。また、ソフトウェアの中にはライセンス使用料の支払いを嫌ってAC-3をサポートしないソフトウェアもありましたが、AC-3の特許が失効したことで再びAC-3がサポートされるかもしれません。ただし、AC-3自体が25年前の古い規格がベースであり、より性能の高いDTSなどの後発規格があることから、ドルビーデジタルがフェードアウトしていく可能性もありそうです。