訪日客&出張向けの「民泊」は儲かるのか

写真拡大

増加し続ける訪日客により宿泊施設不足は深刻化。千載一遇のチャンスが到来している「民泊ビジネス」で、確実に儲ける方法はあるか。民泊事情に詳しい川畑重盛氏に聞いた。

■実態は物件を買って始める投資型が大半

自宅やマンションなどの空き部屋を、宿泊施設として旅行者に有料で提供する民泊が、いまサイドビジネスとしてにわかに注目を集めています。いちばんの理由は、訪日外国人の急激な増加です。

それによる宿泊場所の不足は深刻で、東京や大阪のビジネスホテルはいま、外国人観光客の滞在で稼働率が90%を超えて飽和状態。日本国内の出張客も予約が取れないありさまです。こうした需要を考えると、民泊ビジネスにとっては千載一遇のチャンス到来というわけです。

政府は訪日客を4年後に4000万人へ倍増させる考えで、ルールに則した民泊の普及を図るため、国会に「民泊新法」を提出する方針です。すでに13年に制定された国家戦略特別区域法による特区内では、旅館業の許可がなくても一定のルール下で民泊が認められるようになりました(図1)。これからが本当の民泊ビジネスの始まりだといえるでしょう。

その際、有力なインフラとなるのが、インターネットを通じて空き部屋の貸し手と借り手のマッチング・サービスを提供するAirbnb(エアビーアンドビー)。アメリカ・サンフランシスコ発祥のAirbnbは世界191カ国3万4000以上の都市に展開、同社サイトには200万件以上の物件が掲載されています。以下は、Airbnbを利用して民泊ビジネスを手がけたいという方への私なりのアドバイスです。

まず気をつけなくてはならないのは、欧米と違って日本には特有の法律や慣習があるため、民泊にともなうトラブルが比較的起きやすいということです。

欧米では見知らぬ人に有償で自宅を貸すという行為が、以前からわりと普通に行われてきました。ところが、日本にはそういう文化が根付いていないため、貸し手と借り手だけではなく、周辺住民との間でもトラブルが起きやすいのです。また、それを防いだり解決したりするルールも確立していません。

需要は伸びているのだから、誰がやっても簡単に儲かると安易に考える人が多いようですが、これも一概にそうとはいいきれません。たしかに、私の知人には、自宅の空き部屋を貸して毎月数十万円の利益を上げているビジネスパーソンもいますが、逆に、一生懸命民泊に取り組んでいるのに予約がなかなか入らず、初期費用も回収できないという人がいるのも事実です。

では、民泊で必ず儲けるにはどうすればいいでしょうか。

民泊には、自分が居住する家の一室を貸し出す「ホスト居住型」と、所有する空き家などを宿泊所とする「ホスト非居住型(投資型)」の2種類があります。民泊というと瞬間的に、前者をイメージする人が多いと思いますが、実際には後者のホスト非居住型が8割で、この比率は海外でもほぼ同様です。

ホスト居住型の場合は、ホストとゲストがバス・トイレを共有するため衛生管理が難しく、旅館業法に抵触する恐れが出てくるので、やはりやりやすいのはホスト非居住型のほうです。今のところ制度面でもホスト非居住型を後押しする仕組みになっていて、国家戦略特区のなかで民泊条例を定めている東京都大田区では、ホスト居住型の民泊を認めていません。

私がAirbnbホストの希望者向けに開いているセミナーでも、参加者の7割ほどは、新たに物件を購入して民泊を始め、管理業務については専門の業者に任せてホスト非居住型の営業を目指すと答えています。つまり純粋な投資目的ということです(図2)。

ちなみに、自前の物件を貸し出し、自分で管理を行いたいという人は2割、所有アパートや自分の家の空き室対策として民泊を考えているという人は全体の1割程度しかいません。

投資目的で新たに物件を購入する際には、次のような注意が必要です。

まずは、民泊を行う場所選び。いくら訪日外国人が増えているといっても、立地が彼らのニーズに合わなければ、成功は望み薄です。一般的には、空港からのリムジンバスの乗り場が近い、ターミナル駅から10分以内といった物件は、外国人客に人気があります。また、これから物件を選ぶなら、Airbnbのサイトを見て、そこにリスティングされている、物件の稼働率が高いエリアを選ぶと間違いがありません。

また、よく勘違いする人がいるのですが、アパート経営と民泊とは違います。回転率がいい物件でないと収益性が保てません。長期滞在よりも短期滞在のゲストを数多く入れたほうが、確実に収益性は高くなります。

■ファミリー向けは周辺トラブルに注意

現在の民泊条例では宿泊期間の最少単位が7日となっているので、儲けを最優先するなら、できるだけ7日に近い短期の予約を優先して、宿泊スケジュールを埋めていくといいでしょう。

危険なのは周辺住民とのトラブルです。

トラブルが起きやすいファミリー向けマンションなどは、あらかじめ避けたほうが賢明だといえます。ホテルに泊まったときは、隣室の宿泊客が外国人でも気にならないのに、自分のマンションだと絶対にイヤだという人が日本にはまだまだ多いのです。その点、事務所や店舗が入っていて普段から人の出入りが多いマンションであれば、それほど問題にはなりません。

もうひとつ重要なのが部屋の清潔さ。ホテルや旅館ではないので、多少の生活感が出てしまうのは仕方ありませんが、それでも清潔であるというのは、お客さんを受け入れる最低条件です。Airbnbも部屋の清潔さに対するゲストの評価をかなり重視していて、5段階のうち3以下が続くとそのホストは、IDを返上しなくてはならないとされています。

初心者には英語の心配もあるでしょう。Airbnbでは、ゲストの使用言語を「英語」とすることが多いので、外国からのゲスト向けに英語のマニュアルを用意しておかなくてはなりません。ただ、これはお手本をもとにつくればいいので、さほど難しいものではありません。

Airbnbのサイト上に民泊用の部屋を掲載する際も英語を使いますが、こちらもネット上の「グーグル翻訳」の助けを借りれば事足りるレベルです。英語については、あまり心配しなくてもいいでしょう。

このように、民泊にはいろいろ面倒な側面もありますが、需要は右肩上がりで、国も規制緩和やルールづくりを急いでいるので、ビジネスチャンスはこれからどんどん広がっていくと思われます。興味がある人は、年末年始や桜の季節など、外国人観光客がこぞって日本を訪れるときを狙ってテストマーケティング的にやってみたらどうでしょうか。

----------

川畑重盛
ポイントデバイス社長。全国で3500室のウイークリー・マンスリーマンションなどを運営する。Airbnbのホストでもあり、著書『ゼロから始める!「民泊ビジネス」の教科書』が話題。
 

----------

(山口雅之=構成)