40代独身男性、父親の介護で“稼ぎたくても稼げない”現実「年収250万円減で結婚も諦め…」

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 働き盛りの30〜40代。賃金カーブも右肩上がりの時期に伸び悩み、年収300万円に甘んじてしまう“稼げない病”に罹る人が増えているという。マジメに働いているにもかかわらず、なぜ低年収に陥ってしまうのか。貧困とは違うニュープア層の実態に迫る!

●高橋丈博さん(仮名・41歳)の場合
年収330万円/独身
大学卒業後、大手食品メーカーに就職。38歳のときに父親が脳梗塞で倒れ、介護のために退社。実家近くの美容器具メーカーに転職し、残業ナシの週4日という変則シフトで勤務

◆父親の介護のために退職。年収250万円減になるも「父を恨むことはできない」

 厚生労働省によると、日常生活に手助けが必要な要介護認定者の数は620万人(’16年3月末時点)。今後はさらに増え続け、現役世代の親の介護が“稼げない”最大の要因になると言われている。高橋丈博さんもその一人。73歳になる父親が3年前に脳梗塞で左半身に麻痺が残り、要介護者になった。それに伴い、大手食品メーカーを退社し、実家から通える小さな美容器具メーカーに転職。仕事をしながら父親の世話をしているという。

「母親は20年前に他界。一人息子の僕しか父親は頼れる人がいないんです。今はホームヘルパーの方に週3日、隣県に住んでいる60代後半の叔母に週1日来てもらっています」

 実家近くの転職先は社員30人ほどの小さな会社。社長は高橋さんの状況に理解を示し、週4日という変則的な出勤日数を特別に許可。残業も免除されたが、年収は330万円と前職に比べ、250万円も下がってしまった。父親が特別養護老人ホームに入れれば、以前のように働くこともできる。だが現在、特養の入居待ちの高齢者は全国に52万人以上いると言われ、高橋さんの父親が入るのは困難を極める。

「父親は要介護認定を受けているとはいえ、5段階のグレードでは最も低い要介護1。介護レベルが高い人から優先的に入れるので入居はかなり先になりそうです。でも、悠長に構えているわけにもいかない。こんな状況を理解して正社員として雇ってくれている現社長はいいのですが、次期社長に内定している息子は私のクビを切りたがっている。この年齢で再就職も難しいですし、何とかリストラされる前に、父親を特養へ入居させたいですね」

 結婚を前提に交際していた女性はいた。だが、父親が倒れたとき「結婚すれば苦労するのが目に見えているから」と自ら別れを切り出した。今では結婚を完全に諦めているという。

「すでに自分は40代。このまま介護中心の生活で50代を迎えそうな気がしてならないんです。父親は涙を流して『あのとき、死んでいれば……』なんてことを口にするけど、親を恨むことなんてできないですよ。ヘタしたら寝たきりの可能性もあったわけだから、そうなれば今以上に人生に絶望していたでしょうね」

 仕事以外の時間はすべて介護と家事に充て、心休まる暇もない。絶望の末、最後に高橋さんはこう呟いた。

「今まで蓄えてきた貯金500万円は父の特養入居代に消える予定です。これで自分の老後の資金はなくなりますから……60歳くらいで死にたいです」

 親の介護という誰もが降りかかるリスクに苦しむ高橋さん。“稼ぎたくても稼げない”彼の前に希望の二文字はいまだ見えない。

― [死ぬまで年収300万円]の病巣 ―