井上 和則 / 株式会社リーダーズ   代表取締役  文化学園文化ファッション大学院 教授

写真拡大

アパレル業界に関連する領域で主に仕事をしているが、どの分野であれ経営における人・組織運営は最も難しい部分であると思う。人の関係ほど難しく、ロジックとは関係のない部分で成り立っているものも他にはないだろう。

企業経営の戦略やマーケティング論、財務論においてはロジックやプロセスがきっちりしていればそれなりの成果が出せる。

しかし、人・組織運営となると学問としても組織論やモチベーション理論などが存在するものの、 ”好き” ”嫌い” ”人の相性”など個々人の極めて情緒的な部分で人や組織のモチベーションが影響を受け、結果を歪めてしまうことも少なくない。

組織を束ねるリーダーにおいては、実力があり、かつ周囲から尊敬や好意を持たれないと、いくら正しい事であっても周囲は聞く耳を持たず、組織がまとまらず、強い組織力に昇華されていかない。

リーダーシップ論を考えるうえで平尾誠二氏は私にとってまさに見本のような人だった。言わずと知れたミスターラグビー。しかし残念ながら昨年、伝説の人となってしまった。リーダーとしての高い技術、広いスコープ、向上心とビジョン、挑戦、組織を動かすロジック、その組織に魂を吹き込む熱い情熱、人間的な魅力。その体現者だった。

高校、大学、社会人と参加するすべてのチームでキャプテンとして全日本大会優勝や連勝記録を打ち立てていった実績は、卓越したリーダーシップ能力の高さをまざまざと見せつけている。また人間的にも同志社大学、神戸製鋼での全日本優勝チームメンバーの先輩である林敏之氏も“男前やのに嫌なところがひとつもない”とコメントしている。男の世界では時として女性よりも大きな嫉妬や妬みが敵対的に生じる事があるが、男から認められる男こそが器の大きさの証拠だろう。

役割分担の異なるプレーヤーの集合体のラグビーチームが次々と大記録を打ち立てていった実績は、一個人だけが飛び抜けて優秀であるという事だけでは到底実現されない。平尾氏の場合は個人の影響がいかに大きく組織全体に影響を与え、組織の力の最大化が図られていったかを物語っている。

若くして急逝された事は2019年の日本でのワールドカップ開催に向けた日本ラグビー界のみならず日本のスポーツ界にとって大きな損失であるが、伝説になってしまい、少し時間が経った今、ジャンルを越えて平尾誠二氏を通して組織の力を最大化するリーダーシップの行動とは何かを考えてみたいと思っている。