10番を背負う覚悟はあるか。3月16日、日本代表監督のヴァイッド・ハリルホジッチ氏が、ロシアW杯アジア最終予選を戦うメンバー25名を発表した。日本代表は23日にアウェイの中東でUAEと、28日にホームの埼玉スタジアムでタイと試合をする。

現在、日本はグループBで勝ち点10の2位。W杯出場圏内だ。そしてUAEは、少し離れて4位。だが、勝ち点の差はたったの1に過ぎない。もし日本がUAEに負ければ、立場は一気に逆転する。他会場の結果次第では、その後サウジアラビアとUAEに独走を許し、日本はプレーオフの出場権を賭けてオーストラリアと熾烈なデッドヒートを繰り広げることになりかねない。“絶対に負けられない戦い”というフレーズが、単なるキャッチ・コピーで済まされないのが、今回の最終予選だ。

そんなヒリヒリするような決戦に向けて、ハリルホジッチ氏によって読み上げられたリストの中には、高萩洋次郎といった新戦力や、今野泰幸といったベテランの名があれば、長谷部、長友、本田、清武といった常連組の名も並んだ。

そして、そこには香川真司の名もある。

ひと頃にはハリルホジッチ氏から、先発を確保できるどこか他のクラブに移籍するか、所属先のボルシア・ドルトムントでレギュラーを奪取するかを助言された香川。結局、今年1月は他のどこにも移らず、ドルトムントに残留する。ブンデスリーガの後期日程が始まってからは、初戦のブレーメン戦を除けば、なかなか試合に出場する機会に恵まれなかった。しかし2月の下旬から、少しずつ途中出場のチャンスを得ると、遂に3月11日のヘルタ・ベルリン戦で先発の座を奪取する。ハリルホジッチ監督のアドバイスに、香川は見事に応えたのだ。

さらに3日後のドイツカップ準々決勝シュポルトフロインデ・ロッテ戦でも、先発フル出場。ロッテ戦で少し膝を痛めたようだが、総じて日本代表の活動に向けて、着々とコンディションは上向いていた。

そして今度は、クラブに続いて代表でもレギュラーの座を奪取すべきなのではないだろうか。昨年11月のサウジアラビア戦では、スタメン落ちを経験した香川。そしてここまでアジア最終予選ではノー・ゴール。結果を残せていない。香川が日本代表で背負う番号は、10番。10番とは、アルゼンチン代表ではメッシが、ブラジル代表ではネイマールが背にする番号だ。もし、メッシとネイマールがW杯最終予選でノー・ゴールだったら、国民が許すだろうか。さらにスタメン落ちしてベンチから試合を眺めるメッシとネイマールを、誰が想像することができるだろうか。

10番は、先発の座が揺らぐことのない不動の存在であり、ここ一番の決めるべき時で決める、頼もしい存在でなくてはならない。ネイマールは、リオ五輪決勝のドイツ戦では先制の直接FKを突き刺し、PK戦では最後のキッカーを務め上げ、王国に初めての金メダルをもたらした。

そんな10番を背負う香川は、UAE戦で先発の座を奪取すべき、なのではなく、奪取しなくてはならないのだ。

UAE戦で香川が果たすべき義務は、日本の10番に相応しい働き。つまり、UAEを奈落の底に突き落とすゴール。香川にとって、改めて10番を背負う覚悟が問われる時である。3月17日は、28歳の誕生日。年齢的にも、“自覚”しなくてはならないはずだ。

(文・大友壮一郎 写真・Tsutomu Kishimoto/ KING GEAR)