「ラボ製」ダイヤモンドの婚約指輪でジュエリー業界に新風を

写真拡大

フォーブスが選ぶ「30アンダー30(30歳未満のリーダー)」に選出されたバネッサ・ストーフェンマッカーは2014年4月、ロサンゼルスを拠点とするスタートアップ企業、ブライ・アンド・オロ(Vrai & Oro)を立ち上げた。

ブロンドヘアの20代、物腰は柔らかいがジュエリー業界での経験はない彼女だったが、人脈やコネがものをいう業界に新風を吹き込むべく、夫が提供してくれた8000ドル(約92万円)の資金を元手に起業。共同創業者のチェルシー・ニコルソンと共に、2016年には事業規模を300万ドル(約3億4400万円)となるまでに成長させた。

今年2月、ストーフェンマッカーは新たに婚約指輪や結婚指輪専門のブランド、VOW(Vrai & Oro Weddings)を立ち上げた。従来の婚約・結婚指輪との大きな違いは、使われているダイヤモンドが採掘されたものではなく、カリフォルニアの研究所で”育てられた”ものだということだ。そしてこれこそ、彼女がこの伝統ある業界で”破壊的”だと言われる所以だ。

ストーフェンマッカーは、科学の力で自然の条件を再現し、サンフランシスコの研究所でダイヤを育てるテック企業、ダイヤモンド・ファウンドリー(Diamond Foundry)と提携している。シリコンバレーにある同社には、映画「ブラッド・ダイヤモンド」に主演した俳優レオナルド・ディカプリオなどの著名人が投資家に名を連ねている。

ジュエリービジネスに参入するやいなや、ストーフェンマッカーはダイヤを使うことの倫理的な意味合いに直面して苦しみ、ブライ・アンド・オロでは非常に小さな石しか使わなかった。そうした小さなダイヤは通常、紛争地帯で採掘されたものではないという理解からだ。

しかしウエディング分野に参入するには、倫理上の懸念に正面から向き合うしかなかった。「ダイヤ以外の石を使うこともできたが、ダイヤと婚約には特別なつながりがある」と彼女は言う。「私にとってダイヤモンドは特別な石です。全てのダイヤにはそれぞれの欠陥がある。同じように、完璧な結婚もない。ダイヤモンドは結婚の美しい象徴だと思うのです」

そんな時タイミングで偶然、友人がインスタグラムで婚約を発表した。投稿された婚約指輪の写真に「このダイヤモンドはカリフォルニアで育てられました」というキャプションがついており、ストーフェンマッカーはそこからダイヤモンド・ファウンドリーの存在を突き止めた。何度もメールを送った末にようやく、同社の営業担当責任者との接触に成功した。

その後同社のR・マーティン・ロシェイセンCEOと会談した際に、提携を持ちかけられた。そして2016年11月、ダイヤモンド・ファウンドリーは正式にブライ・アンド・オロを買収。ストーフェンマッカーはブライ・アンド・オロの社長にとどまり、ダイヤモンド・ファウンドリーのクリエイティブ・ディレクターに任命された。

天然ダイヤモンドの業界は安定しており、業界大手デビアスの2016年の報告書によれば、2015年の世界的需要が790億ドル(約9兆円)規模だ。研究所で作られたダイヤはまだ初期段階(デビアスの報告書では消費者からの需要は「無視していいほどわずか」とされた)だが、その存在そのものが従来のダイヤ業界の存続を脅かしている。

”ラボ製”のダイヤがさまざまな意味で、ダイヤの価値を脅かすのではと懸念されているのだ。悪質な販売業者が天然ダイヤときちんと区別して売らないのではないか? 研究所で科学的に作られるとダイヤの持つロマンチックな意味合いが損なわれるのではないか? などという懸念だ。

だがストーフェンマッカーによれば、天然のダイヤがロマンチックというのは古い考えにすぎない。婚約する可能性が高い20代の女性は、ラボ製のダイヤを身に着けることにほとんど抵抗はないと彼女は言う。

自身もミレニアル世代である彼女は、婚約指輪の売り方についても独特な視点を持っている。従来のジュエリー会社とは違い、VOWは男性ではなく女性を重視している。指輪を決める前に試せる「お試しボックス」というものがあり、これを注文すると、模造品の指輪が3種類入った箱が自宅に届けられる。その中から1つを選び、1週間以内に返送すればいいのだ。

ちなみに、模造品の指輪は真ちゅうに金メッキを施した安価なつくりになっている。石はキュービックジルコニア(偽ダイヤ)。ラボ製のダイヤとはまったくの別物だ。