NBAファン、特にキャブスファンなら聞いてほしい話題のポッドキャストがある。「Road Tripping」と名づけられたこのポッドキャストのレギュラー出演者は、クリーブランド・キャバリアーズのベテラン2選手、リチャード・ジェファーソン(SF)とチャニング・フライ(PF)、そしてキャブスのサイドライン・レポーターのアリー・クリフトン。

※ポジションの略称=PG(ポイントガード)、SG(シューティングガード)、SF(スモールフォワード)、PF(パワーフォワード)、C(センター)。


ポッドキャストで語られたアービングの「世界観」が大きな話題に「Road Tripping」というタイトルからもわかるように、遠征中の時間を使って収録されており、時には遠征先のホテルで、時には移動中のチャーター機で、チームメイトなどのゲストを迎えての本音トークが面白い。ジェファーソンらの話の引き出し方もうまいのだろう。仲間が集まってリラックスしたなかで、バスケットボールの話にとどまらず、子どものころの笑えるような話から、人生観などの深い話まで語られている。

 このポッドキャストが世間から注目されるようになったのは、2月のNBAオールスター直前に収録されたエピソードで、出演していたチームメイトのカイリー・アービング(PG)が「地球は平らだ」と主張したときだった。

 ポッドキャスト中に、アービングはこう熱弁していた。

「地球は平らだ。平らなんだ。事実は目の前にある。彼らは嘘をついているんだ」

「何年もの間、僕らは地球は丸いと教えられ、信じるようになった。でも、そのことを本当に考えたことがあるかい? 旅に行き、移動するときの風景を考えたときに、自分たちが太陽の周りを回っていて、惑星が整列して、一定の日数で回っていると考えられるかい?」

「本当の旅というのは、思考を完全に自由にすること、完全な人間になるということだ。疑問を持ち、答えが返ってこなかったとしても構わない。その(周りから押しつけられた)『真実』のなかに生きなかったということ(が大事だ)」

 どうやら、アービングの信条は、教えられたことをそのまま信じるのではなく、自分で調べ、自分の目で見たことだけを信じるということのようだ。

「地球は平ら」というコメントは突拍子もない主張で、オールスターのような場で取り上げやすい話だったこともあり、オールスター・ウィークエンド期間の一番ホットな話題だった。他の選手たちにもこの話題がふられ、アダム・シルバー・コミッショナーまでもが記者会見で意見を求められていたほどだ。

 ただ、当のアービングは「カイリー(自分)が世界は平らだと思っていることが社会現象になるほど話題になっていることに笑ってしまう。それがニュースにまでなってしまうことがおかしい」と、どこか超越したコメントをしている。あまりに表面的な取り上げ方が多かったので、それが嫌だったのかもしれない。

 実際、「Road Tripping」のポッドキャストに頻繁にゲスト出演しているアービングの話を聞くと、彼がいい意味で独自の考えや個性を持っていて、周りに流されない性格だということがうかがえる。

 たとえば彼は、自分をバスケットボール選手としか見てもらえないことが好きではない、と言う。

「僕をバスケットボールプレーヤーとしか見てくれないインタビューは好きじゃない。『彼はすごいバスケットボールプレーヤーだ』と言われるのも好きじゃない。『人間』としてすばらしいのに。もちろん、バスケットボール界にいるのだから、そう言われることも理解はできる。でも、子どものころからだった。バスケットボールをやることはとても楽しんでいるけれど、それが自分のすべてではないんだ」

 そう言うだけあって、彼はふだんから本をたくさん読み、知識を吸収することにも貪欲なようだ。

「『話せないこと』と『読めないこと』のどちらかを選ばなくてはいけないとしたら、どちらがいいか?」という話題のときに、おしゃべりなジェファーソンは「僕は話せないなんて考えられない」と言ったのに対し、アービングは「話せなくてもコミュニケーションをとる方法はあるけれど、読めないなんて嫌だ。できるだけ多く本を読み、できるだけ知識を得たいんだ」と言っていた。

 また別のときには、「自分がこの世を去った後、どんな人物だったと人々の記憶に残ってほしいか?」という質問に対して、アービングは思いの丈をこう語った。

「僕には、バスケットボールよりさらに大きな使命がある。バスケットボールは大好きで、多くの時間を捧げてきたけれど、最高のバスケットボール選手になるために努力することと、人間としてできるかぎり向上することは、両方同時にできると思う。

 自分の世代だけでなく、『次の世代にどう影響を与えることができるのか』といったことも考える。もし、自分が言ったことがネガティブに受け止められるのなら、それは真実ではない。究極の真実はひとつだけ。究極には、みんながお互いを愛し、それぞれが辿ってきたその旅自体がすばらしいことだと理解し合うこと。

 小さなことでも、その瞬間、瞬間の出来事を楽しむこと。試合の準備をすることをありがたく思うのと同じように、シャワーを浴びているその瞬間もありがたく思ったらどうだろうか。今の瞬間だけを考え、今となりにいる人を愛することだけを考え、バスケットボールで自分の力を全力で出し切ることだけを考え、この本から最大限の知識を得ることだけを考える。最後にそうやってすべての瞬間を生きていたのは、いつだっただろうか?

 僕は誰かと会話をしていたら、それにすべての集中を傾ける。みんなとそういった時を共有することができる。みんなに与えることができるだけのエネルギーがあるのに、それを共有しないのはセルフィッシュだ。そのことを本当に信じている。自分の行動や自分のあり方によって、どうやって人々に伝えるかをまだ学んでいるところだ。感情や思考から自由になりたい。完全に自分でコントロールできるようになりたい。そうすることで、みんなと分かち合い、かつ、自分にも残すものがあるようになりたい」

 アービングがこう語ったのを聞いて、ジェファーソンは「こういう(ふだんはしないような)話ができることこそ、このポッドキャストを始めた理由だった」と喜んでいた。

 また、別の回のエピソードでは、レブロン・ジェームズ(SF)がアービングに対する思いや期待を語ったこともあった。今の人生において残された目標として、レブロンは「カイリーのような次の世代に伝えること」を挙げた。

「多くの子どもたちが彼(アービング)に憧れている。ポイントガード、ボールハンドリング、いい笑顔。子どもたちは彼に憧れている。彼には知識を得たいという気持ちがあり、その知識を取り入れ、適応し、さらに若い世代に渡す意思がある。そういう若者は、青写真(自分が学んできたプロのスター選手としてのあり方)を得る資格がある」

 レブロンのこの言葉には、今まで見聞きしたどのインタビューよりも、雄弁にふたりの関係が描かれていた。コート上のプレーや、ましてや「地球は平らだ」というキャッチーな話題だけではわからないような内面──。それを知りたければ、ぜひ一度、「Road Tripping」を聞いてみてほしい。

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