怪我明けの齋藤は不調だったが、相手マークを引き付けて攻撃を"アシスト"した。(C)SOCCER DIGEST

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 日本代表の選からは漏れたものの、齋藤がリーグトップクラスの打開力を持つことは疑いようのない事実だ。持っている能力を余すことなく発揮すれば、国内ではほぼ無双のアタッカーとなる。
 
 しかしながら新潟戦は右ふくらはぎ痛からの負傷明けだった。試合前日の時点でエリク・モンバエルツ監督は「トレーニングを一定期間抜けていたので、フィジカル面で90分プレーするのは難しいかもしれない。どのように試合に使うか」と起用法を濁していた。
 
 結果的にフル出場したものの、警戒してサイドに人数を集めてきた新潟守備陣を攻略できず。引き分けに終わった試合を振り返り、重鎮の中澤は「(齋藤)学は怪我明けで100パーセントの状態ではないので、そこで手詰まり感が出てしまう。そうなるとマリノスは苦しくなる」と課題を指摘している。
 
 では横浜が上位進出するためにはなにが必要か。そのヒントが新潟戦のピッチにあった。
 
 39分、横浜は自陣からビルドアップをスタートし、ミロシュ・デゲネクが左サイドのタッチライン際に開いた金井へ。金井はダイレクトで前方のスペースへパスを送ると、このボールに反応した天野が間髪入れずゴール前へ送った。フリーで待ち受けたウーゴ・ヴィエイラが絶好機を逃してゴールならなかったが、齋藤は直接的に攻撃に関与していない。
 
 その時、背番号10は中央寄りにポジションを構え、金井と天野にスペースを提供した。ボールに触れずとも相手の注意を引きつけ、チームとしての決定機を導いたと言えるだろう。
 
 前半アディショナルタイムにはクリアボールを拾った金井が左サイドの齋藤へ。齋藤はボールキープで相手を引きつけ、39分の場面と同じようにスペースへ飛び出した天野へラストパスを送る。天野のシュートは惜しくも相手GKに阻まれたが、左サイドのトライアングルが創出した2度目の決定機だった。
 
 いずれの場面も齋藤はフィニッシャーになっていないが、ボールタッチの有無に関係なく重要な仕事を果たした。
 
 ふたつの場面について天野は「ボールが左サイドに回ってきた時はしっかり崩せていた。自分と(齋藤)学くん、(金井)貢史くんの関係はできている」と自信をのぞかせた。
 
 齋藤が自らフィニッシュに持ち込むことができれば、それだけでリーグ屈指の破壊力を誇る。しかし、新潟戦のようにコンディションが万全でなく、さらに相手に警戒された場合は周囲との連係が鍵を握る。同じユース出身の金井や天野とのコンビネーションは大きな武器になりつつある。
 
 引き分けに終わった新潟戦で足りなかったのは、好連係をゴールに結びつける決定力だけ。横浜の新たな攻撃の形は徐々にできつつある。
 
取材・文:藤井雅彦(ジャーナリスト)