最終ラインの裏へ抜け出してから、波長が合うと感じていたウタカのリターンを受け取り、飛び出してきたGKチョン・ソンリョンをもかわす。最後はバランスを崩しながらも左足で無人のゴールに流し込み、待ち焦がれてきた新天地での初ゴールを古巣相手に決めた。

 これまでにベルギーやデンマーク、そして中国でプレー。移籍後初のゴールを決める難しさと決めた時の至福の喜びを、誰よりも知っているからこそウタカも表情を綻ばせる。

「大久保選手の初ゴールを、良いアシストでサポートできてよかった。これからお互いをより合わせていきたいし、もっとプレーの精度も高めていきたい」

 ベガルタ仙台に6‐0で圧勝した、15日のYBCルヴァンカップのグループリーグ初戦でも、途中出場ながらPKによるゴールを決め、MF中島翔哉のゴールもアシストしている。ちなみに、PKは本来蹴るはずだったキャプテン、DF森重真人から「早くチームに溶け込めるように」と譲られたものだ。

 ウタカの愛されるキャラクターが、ここにも反映されている。未熟な組織を「個」の力で補って欲しいと期待された33歳は、組織の中で自らを光り輝かせ、チームメイトの特徴を瞬時に理解するサッカー頭脳を駆使。FC東京全体の攻撃レベルをも飛躍させる、触媒の役割をも果たしている。

「脅威になると思うよ。逆の立場だったら、オレ、絶対に(相手にするのは)嫌だから」

 大久保の不敵な笑みが、「前」と「元」のJ1得点王が揃い踏みした時の相乗効果を物語る。悲願のJ1初制覇へ、3勝1敗と開幕ダッシュに成功したFC東京をさらに加速させる。

文=藤江直人