昨季の選手権では2年生ながら抜群の存在感を見せた郷家。今季は千葉に加入した高橋の後を継ぎ10番を背負う。写真:川端暁彦

写真拡大 (全2枚)

 青森山田高の新10番、郷家友太の新シーズンは必ずしも順風満帆ではない。悩みもあれば、違いもある。何より新チーム自体が、早くも大きな試練の中だ。昨季は高校サッカー選手権と高円宮杯の二冠を達成し、「あの青森山田」という視線にさらされる中で、北の大地で静かに成長してきたタレントは、越えるべき壁の前に立っている。
 
 先の選手権において、郷家は伸び伸びと自分を表現し続けていた。傑出した“10番”高橋壱晟、最強のキャプテン・住永翔と中盤中央に攻守万能のトライアングルを形成。必殺の武器になったロングスローで脅威となりつつ、機を見てゴール前に進出し、あるいは中盤で起点となって相手チームを苦しめ続けた。セカンドボールへの反応速度も特筆モノで、大会後からU-18日本代表のスペイン遠征へ抜擢されたのも納得のプレーぶりだった。
 
 だが、チャンピオンチームとして臨む新シーズンにかかるプレッシャーは外野が想像する以上のものがある。たった二人のレギュラーの内の一人である郷家は「自分には新チームを引っ張る責任がある」と語っていたが、彼らと新しくトップチームに加わった選手の間には、レベルや意識にギャップがあったのは否めない。
 
 東北高校サッカー新人大会では、欲しい位置に出てこないボール、返ってこないリターンパスに対して、グッと言葉を飲み込むような様子を見せることもあった。「難しいです」。高橋や住永と組んだ日本一の中盤で培ったイメージとのギャップの中で、郷家自身のプレーも精彩を欠いた。
 
 3月初週の群馬県で行なわれたプーマカップにおいても、青森山田の歯車は噛み合わなかった。郷家はアンビリーバブルなオーバーヘッドキックを決めてみせるなど能力の高さ、センスの良さを随所に見せていたものの、チームの結果は振るわない。試合会場となった前橋育英高のグラウンドに、青森山田コーチ陣の厳しい叱責の声が響き続けた。ここまでの流れは、ひたすら厳しいシーズンを予感させるものだった。
 
 
 それでも、こうした低空飛行が助走になることもある。16日に開幕したサニックス杯国際ユース大会では、「難しいことではなく『いまできることをやろう』とみんなで徹底した」(郷家)という変化が奏功する。住永や高橋がいた時のようなプレーを目指しても、「中盤で自爆して失点してしまうだけだと思った」(郷家)と、シンプルに縦へ入れていくボールを増やし、逆にリズムを作る。ターゲットになれる選手は郷家を含めて複数いるのだから、合理的な選択だ。守っても、青森山田らしいハードな守備が観られ、ピッチ上では厳しく要求し合う声が飛び交った。結果こそ伴わなかったものの、内容面は明らかに上向いていた。
 
“二冠王者・青森山田”の新10番としてのプレッシャーを背負う新シーズン。チームとしても個人としても試行錯誤の日々は、まだまだ始まったばかり。U-18日本代表のスペイン遠征ではゴールも記録して「あそこに呼ばれ続ける選手でありたい」という個人としての野心も強まった。そのために必要なのは当然ながら、「結果を出し続けることしかない」。決意の言葉を紡ぐ様子に、2か月前の新人大会で見せた迷いの表情はもうなくなっていた。
 
取材・文:川端暁彦(フリーライター)