photo by  Rémi Noyon via flickr(CC BY 2.0)

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 4〜5月にかけて実際されるフランス大統領選が異様な熱気を帯びている。その台風の目となっているのは、ご存じ、極右政党「国民戦線(FN)」の党首であるマリーヌ・ルペン氏だ。

 3月上旬に行われた世論調査で27%の支持率を獲得して、首位を快走。「仏版トランプ」とも称されるほど、トランプ大統領とそっくりの政策を掲げて人気を博しているのだ。在英ジャーナリストの木村正人氏が話す。

「ルペン氏が掲げる反EUとユーロ圏からの離脱は、トランプ氏の反グローバリズムと一緒。トランプ氏の『アメリカ・ファースト』と同様、フランス第一の自国民優先政策も打ち出しています。『イスラム教国からの入国禁止』とまでは言っていませんが、反イスラム・反移民というスタンスも、親ロシアという点でも一致している。大手金融資本を中心としたエスタブリッシュメントを批判し、メディアを敵視しているところもトランプ氏とそっくり。弱者救済を主張しているため、自然と支持層も共通しています。

 アメリカ大統領選では経済成長から取り残された中西部の“ラストベルト”に暮らす低中所得層の白人労働者がトランプ氏を熱烈に支持したと言われていますが、フランスでも北東部のアヤンジュがそのラストベルトと言われているのです。かつては製鉄の町として栄えたアヤンジュは、国際競争力の低下に伴い衰退の一途をたどり、過去10年で失業者が75%も増えました。職を失った白人労働者階級は自分たちの職を奪っていったEUと移民に不満を募らせ、国民戦線とルペン氏を信奉するようになっていったのです。

 アヤンジュの町長も2010年に国民戦線に加わり、2014年の町長選で当選した人物。その政策は露骨に白人労働者階級を優先しています。移民・難民を支援する市民団体に立ち退きを迫り、事務所の電気を止めたりもしているんです。ルペン氏自身は大統領選の本格化を機に反イスラム、反移民のトーンを抑えてきていますが、局地的にはトランプ氏以上に露骨な排外主義が顕在化しているのです」

 ルペン氏も、トランプ氏同様、問題行動が物議を醸すこともしばしば。2015年にはイスラム教徒が路上で礼拝する様子をナチスによるフランス占領に例えて大バッシングを浴びたほか、イスラム国(IS)による処刑写真をツイート。「暴力的なイメージの流布」に当たるとしてフランス当局の捜査対象となり、今年3月2日には欧州連合(EU)議会がルペン氏の免責特権を停止する決議を採択している。

◆浮上するスキャンダルもそっくり

 また、浮上するスキャンダルまでどこか似通っている。トランプ氏は大統領選の最中に無届の慈善団体「トランプ財団」の寄付金を流用していた疑惑が報じられたが、ルペン氏には欧州議会の資金を内政に関する業務の支払いに流用した疑惑も浮上。国民戦線本部は家宅捜索を受け、ルペン氏の個人秘書は欧州議会から4000万円をだまし取った疑いで訴追されている。

「米大統領選ではロシアがヒラリー陣営にサイバー攻撃を仕掛けたことが明らかになっていますが、フランスではルペン氏に次いで、2番手につけている中道路線の独立系候補であるエマニュエル・マクロン元経済相に対してロシアが執拗なサイバー攻撃を仕掛けているとされています。フランス大統領選は1回目の投票で過半数を獲得する候補がいなければ、上位2人による決選投票に持ち込まれます。そのため、決選投票では中道路線で支持のすそ野を広げているマクロン氏のほうに票が集まる可能性が濃厚。EU支持派でメルケル独首相との距離を縮めているマクロン氏が大統領となれば、ロシアに対する経済制裁は解除されないでしょう。だから、ロシアはサイバー攻撃や『マクロンは同性愛者と不倫している』といったフェイクニュースを流したりして、ルペン氏を後方支援しているのです。現在、『米大統領選の二の舞はゴメンだ』とフランス当局はサイバー攻撃の対応に追われています」(木村氏)