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NTTグループが4月から、主要グループ各社で働くフルタイムの契約社員に「サポート手当」を支給することになったと報じられた。

報道によると、同社では、正社員限定の食事補助制度として、電子マネーや食券などを月3500円分支給しているが、これを廃止して、正社員・フルタイムの契約社員を対象に、「サポート手当」として同額の3500円を支給することになったそうだ。

同じ待遇となることで、契約社員にとってモチベーションアップにもつながりそうだ。NTTグループに限らず、正社員と契約社員とで福利厚生の違いをもうける企業は珍しくないが、今後、どうあるべきなのか。神内伸浩弁護士に聞いた。

●待遇差に法的な問題はないのか?

「NTTグループに限らず、正規従業員(一般的には、直雇用、無期、フルタイムの3要件を備えたものをいう)と非正規従業員(前記3要件のうち1つでも欠いたもの)との間で、当たり前のように待遇差を設けている企業は、今なお多数存在するのではないかと思われます。

『待遇差があれば、あらゆるケースにおいて法的な問題がある』とは言えませんが、合理性のない待遇差は法的な問題となり得るため、是正していくべきです。

実際、昨年には『ハマキョウレックス(差戻審)事件』(大阪高裁 平成28.7.26判決)、『長澤運輸事件』(東京高裁 平成28.11.2判決)など、正規従業員と非正規従業員との待遇差について『労働契約法20条(不合理な労働条件の禁止)』違反を問題とする事案が次々と報じられています。これらの事件が世間の注目を集めたことからも明らかなように、これまでくすぶっていた問題がここで一気に火が付いたのではないかとみています。

また、昨年暮れには政府が『同一労働同一賃金ガイドライン案(平成28年12月20日)』を策定、公表しました。このガイドライン案では、賃金のみならず、福利厚生や能力開発等についても不合理な待遇差を解消すべきとされており、NTTの取り組みはこうした流れを反映してのことと思われます」

●待遇差が「正規従業員であることのメリット」にも

今後、待遇差は是正されていくべきなのだろうか。

「確かに、合理性のない待遇差は是正すべきですが、だからといって、単純に正規も非正規も待遇に一切変わりはないとすると、そもそも正規従業員であることのメリットが薄らいでしまうことにもなりかねません。そうなると、働く側としては必ずしも『正規従業員』であることにこだわる必要がなくなるため、人材が流動的となります。働く側のニーズには則した形になりますが、長く働いてほしいという企業側のニーズには沿わなくなります。

同一労働同一賃金の議論はまだ始まったばかりですが、いずれにしても企業側としては、募集広告さえ打てばすぐにでも人が集まるという時代ではなくなりました。そんな中、優秀な人材をどう確保していくか、さらにはワーク・ライフ・バランスを考え、人材をどう自社に定着させていくか、これまで以上に配慮が求められることになるのではないでしょうか」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
神内 伸浩(かみうち・のぶひろ)弁護士
事業会社の人事部勤務を8年間弱経て、2007年弁護士登録。社会保険労務士の実績も併せ持つ。2014年7月神内法律事務所開設。第一東京弁護士会労働法制員会委員。著書として、『課長は労働法をこう使え!―――問題部下を管理し、理不尽な上司から身を守る 60の事例と対応法』(ダイヤモンド社)、『管理職トラブル対策の実務と法【労働専門弁護士が教示する実践ノウハウ】』(民事法研究会 共著)、『65歳雇用時代の中・高年齢層処遇の実務』(労務行政研究所 共著)ほか多数。
事務所名:神内法律事務所
事務所URL:http://kamiuchi-law.com/