中華圏の人気俳優チャン・チェン

写真拡大

 236分のデジタルリマスター版で25年ぶりに劇場公開中の「クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件」で、主人公のシャオスー(小四)を演じたチャン・チェンが来日。中華圏からハリウッドまで、世界を股にかけ活躍する国際俳優として知られているチャンのスクリーンデビュー作であり、「人生を変えた」という思い入れの深い本作について語った。

 台湾の名匠エドワード・ヤン監督初の日本公開作品として1992年に劇場公開。1960年代の台湾・台北で、不良少年グループがひとりの少女をめぐって対立し、ついには殺人事件へと発展してしまう様を、当時の社会背景を交えて描く。

 本作出演時のチェンは14歳。「当時の僕は、バスケットをするために学校に行くのが人生のすべて。あとは女の子に興味がありました(笑)」という普通の少年だったそう。自分の知らない時代を生きた少年を演じ、ヤン監督の求める世界観を理解することはやはり難しかったと明かす。「シャオスーの役柄の中に、自分と共通点や何かを見つけるということはありませんでしたが、あの役柄を演じることによって、影響を受けたり、知ったことのほうが多かった」と振り返る。

 「僕はこの映画に出演する前までは、外交的で活発な少年だったのですが、シャオスーを演じてからは口数が少なくなって、なんとなくいろいろと考えるようになったのかな」と精神的な成長を感じた。「この撮影が終わってから、映画の仕事に少しずつ興味を持つようになりました。演技に目覚めたということではなく、この仕事の面白さを知ったことが人生を変えたと思います」

 本作でとりわけ好きなのがビリヤード場から、不良少年グループが対立するグループのリーダーを殺害するまでのシーンだ。「懐中電灯の明かりだけですべてが見れないけれど、残酷なシーンだとわかる恐ろしさが感じられると思います」

 59歳という若さで、2007年に惜しまれつつこの世を去ったヤン監督は「自分の心の中で、こうありたいと思うビジョンが明確な人。自分が定めた人物設定に、出演者に限りない要求をしていくタイプ」だったという。

 ヤン監督と過ごした現場で一番思い出されるのは「子供っぽい笑顔」。「撮影中ではなく、機嫌のよいときにニコニコされていましたね。好き嫌いがはっきりしていた人なので、楽しいときとそうでないときがすぐにわかるのです。もし撮影で笑顔が見られたら、それは思い通りに撮れているということ。現場では、みんなが監督の笑顔を期待していたので、何かの言葉よりも笑顔が印象に残っていますね」としみじみと語った。