平壌市内の慶興食品工場で生産されたチョコレート(画像:デイリーNK)

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北朝鮮の金正恩第一書記は、事あるごとに「製品や原材料を国産化せよ」と訴えている。昨年の新年の辞では、「すべての部門で国産化を進めよ」と訴えた。今年の新年の辞では若干トーンダウンしたものの、科学技術、軽工業部門での原材料、設備の国産化を訴えている。

金正恩氏の指示に基づき、平壌にはこの数年で現代的な設備を導入した食品工場が8つも完成し、お菓子、パン、チョコレートなどを生産している。ところが、工場に投資したトンジュ(金主、新興富裕層)は大損をするはめになった。その理由を、平安南道(ピョンアンナムド)のデイリーNK内部情報筋が探った。

平壌市内の慶興食品工場で生産されたチョコレート(画像:デイリーNK)

平壌市内の慶興食品工場で生産されたチョコレート(画像:デイリーNK)


平壌のトンジュは、金正恩氏の国産品奨励策をカネ儲けの絶好のチャンスと思ったのだろう。平壌市人民委員会(市役所)と各区域の人民委員会(区役所)を訪れ、市内での食品工場の建設計画を提出した。

それでできたのが、キャンディ、スナック菓子、ハム、ビールなどを生産する慶興銀河水食料工場、金カップ体育人食料工場、先興食料工場などだ。金正恩氏は、金カップ体育人食料工場がお気に入りのようで、何度も訪問している。

ところが、これらの工場はあまりうまく行っていない。それはトンジュと、お役人の思惑のズレによるものだ。

北朝鮮では、金日成氏や金正日氏の誕生日に、子どもたちにお菓子を配ることが定例化している。市や区域の人民委員会は、食品工場を建てる許可を出す代わりに、製品の一定量を子どもたちに無償で提供することを条件とした。つまり、お菓子を楽に調達したかったようだ。

トンジュは、全体の売り上げで十分カバーできると読み、当局の提示した条件を受け入れた。

やがて生産が始まったが、トンジュの目論見が大きく外れることになった。企業経営のことなどは全くわかっていない当局者は、平壌市民、スポーツ選手、愛育院(孤児院)への配給のことしか考えておらず、物量を確保するために、生産を増やすことを指示した上で、平壌市以外での販売や海外への輸出を禁止してしまったのだ。役人はそもそも、市場経済の仕組みを理解していないようだ。

しかしいずれにせよ、せっかく作られ製品も、平壌市民はあまり買おうとしない。

平壌の高級幹部は、ヨンソン特殊食料工場で特別生産された食料を配給してもらっている。カネを払って買うのは一部の嗜好品だけだが、国産品は質が低いと言って見向きもしないのだ。このような傾向はトンジュも同じだ。

平壌の一般市民も、祝日に配給されたものならともかく、カネを払ってまで国産品を買おうとしない。人気があるのは、中国製品や、韓国企業が中国の工場で作っているものだ。地方には、そもそも平壌で作られた製品はあまり出回らず、人気も低い。

一攫千金を狙ったトンジュの当ては大外れしてしまった。だからと言って、金正恩氏の政策に沿って建てた工場を潰すわけにもいかず、損失を垂れ流しているもようだ。