大久保がサポーターに示した“ごめん”と再び動き出した「ヨシメーター」

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 眠れる獅子がようやく目覚めた。今季からFC東京に加入したFW大久保嘉人が、ついに移籍後初ゴールを挙げた。それも、古巣・川崎フロンターレを相手にだ。

 18日、FC東京は2017明治安田生命J1リーグ第4節で川崎と対戦。味の素スタジアムに向かう電車の中で周囲から聞こえてきたのは、「大久保は古巣対決だな」という声だった。青赤のユニフォームに袖をとおしてから約3カ月、ノーゴールに終わっていた大久保にも、“多摩川クラシコ”で「何かやってくれるのでは」という期待が自然と高まっていた。

 そして待望の瞬間が訪れる。後半アディショナルタイム2分、FWピーター・ウタカとのワンツーでディフェンスラインの裏に抜け出すと、昨季までチームメイトだったGKチョン・ソンリョンの動きを冷静に見極め、左足で押し込んだ。ネットを揺らしたのを確認すると、大久保はFC東京のサポーターが待つゴール裏へと一目散に走り、頭の上で両手を合わせて“ごめん”のポーズをとった。

「謝るために点を取らないといけなかった」

 大久保は前節のガンバ大阪戦で、感情を抑えることができなかった。試合後にユニフォームを投げ捨て、蹴り上げてしまった。勝利への執念や熱意からきた行動だったとはいえ、ファン・サポーターは複雑な気持ちになったことだろう。すぐにブログで謝罪の意を表したことで一件落着したものの、「マジで謝らないといけない」と納得していない自分がいた。ゴールという結果で誠意を示すしかない――。前線でボールを追う顔は気迫に満ちていた。

「絶対に謝らないといけないと思っていました。いつもだったら古巣を相手に点を決めた時は喜ばないんですけど、今日は点を取って謝らないといけなかった」

 様々なプレッシャーがかかる中でやっと決めた初ゴール。試合後は安堵の表情で報道陣の前に姿を現した。「いつか入るとは思っていても、『早く初ゴールを』と言われれば焦ってくる。その中でゴールを決められて、サポーターのほうに行けたのは良かったですね」。古巣への恩返しであり、FC東京への名刺代わりとなるゴールを決め、「気持ちがすごく楽になった」と胸をなでおろした。

 大久保が試合を決定付けるチーム3点目を決めた時、スタジアムの熱気は間違いなく最高潮に達していた。FC東京のファン・サポーターも新エースの得点を待ちわびていたのだ。謝罪ポーズをしながらゴール裏に走る13番を大歓声で迎え、試合後にはおなじみの「シャー!」で勝利の喜びを分かち合った。そして、古巣から引き継いだ『YOSHI METER(ヨシメーター)』も新天地での歴史を刻むように動き出した。気づけば、リーグ通算得点数が「172」に更新されていた。

「優勝するためには、みんなで喜ぶためには、苦しいこともいっぱいある。これからも思ったことをどんどん伝えていきますよ。今日みたいな試合をすれば、みんながついてくる。地道にやっていきたいと思います。言い続けていけば、いつか自分たちの形をものにできる時が絶対にくる。そうすれば強いチームになると信じています」

 自身4度目の得点王、そしてリーグ制覇に向けて、貪欲にゴールを狙い続ける。多摩川を渡った背番号13の新たな挑戦は始まったばかりだ。

取材・文=高尾太恵子