死後離婚する妻が増えている

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最近、メディアなどで“死後離婚”という言葉を目にしたことがある人もいるのでは? 思わず2度見してしまうようなインパクトのあるこの言葉ですが、実はその“死後離婚”を決断する妻が増加しているというのです。死後離婚とは? さらに、増加の背景にあるものとは? 夫婦問題カウンセラーの高草木陽光さんにお話しを伺いました。

「“死後離婚”という言葉は、マスコミがつくったと言われる造語で、実は正確な定義があるわけではありません。というのも、実際に夫婦の一方が亡くなった場合は“死別”になるわけで、遺族年金なども受け取れますから“離婚”とは意味が異なります。つまり、配偶者の死後に離婚はできません」

(高草木さん 以下同)

では、なぜ“死後離婚”という言葉が言われるようになったのか?

「例えば夫が亡くなった場合、“死別”とともに婚姻関係は自動的に終了しますから再婚も可能です。ここで問題になっているのは、再婚しない場合です。妻はそのまま亡き夫と同じ戸籍に残り続けるだけでなく、夫がいないにもかかわらず義理の両親や義理のきょうだいとの姻族関係はそのまま継続されるのです。そんななかで亡き夫や姻族と円満な関係だったならば何も問題ありませんが、“夫と同じお墓に入りたくない”“義理の両親の面倒は見たくないから縁を切りたい”などと、悩む妻も少なくありません。そして、その状況から抜け出すことを可能にするのが “姻族関係終了届”という制度なのです」

つまり、配偶者の死後に姻族との縁を切るということから、“死後離婚”と言われるようになったそうだ。“姻族関係終了届”とは、あまり耳慣れない制度だが、その決断をする人が近年増加しており、法務省の“戸籍統計(平成27年度報)”の発表によると、提出数がこの5年間で約1.5倍に増加しているという。

「増加の背景には、放送されたサスペンスドラマの事件のカギとしてこの書類が扱われたことや、マスコミ報道によって“こんな方法があるのか!”と、広く周知されたこと。また、女性の社会進出とともに、昔のように“〇〇家の嫁だから…”と言った、家制度的なものに縛られる女性が減ったことも大きいでしょう。さらに、手続きがいたって簡単なことも影響しているのではないでしょうか」

手続きは、役所の窓口で用紙をもらい、所定の欄に“自分の氏名”“住所”“本籍”“死亡した配偶者の名前”などを記入し印鑑を押すだけ。あと必要なものは戸籍謄本と身分証明書のみで届け出が完了するという。

「この書類は、一方的に提出できるので、もちろん姻族の同意なども必要ありません。つまり、提出しても相手はずっと縁を切られたことを知らないまま…というケースもあるのです」

では、提出する人はどんな理由で“死後離婚”を決断するのだろうか?

「提出している多くは女性です。理由も様々ではありますが、多い理由としては、まず亡き夫と一緒のお墓に入りたくないというケースです。これは、生前に浮気がひどかった、暴力がひどかったなど苦痛を強いられていたため、死んでまで一緒のお墓に入りたくないという意思の表れです」

それから、もうひとつは夫とは円満だったが、姻族関係にある義理の両親や義理のきょうだいとの問題があり縁を切りたいというケース。

「夫が間に入ってくれてなんとかやってこられたけれど、もともと義理の両親と反りが合わない、嫁いびりがひどいということってありますよね? だから、将来の金銭的なことも含め面倒もみたくないし、介護もしたくないという場合。さらに、義理のきょうだいの素行が悪く頻繁に警察沙汰を起こしたり、金銭トラブルを抱えていたりする場合に、巻き込まれたくないということで縁を切ることを決断するケースもあります」

しかしながら、現実的には“縁を切りたい”と思っていても、姻族関係終了届の提出に至る人の数はまだまだ少ないという。

「“姻族関係終了届”は、お守りのようなものだと思うんです。姻族関係の問題で悩まされている人にとっては、その存在を知っているだけで気持ちが前向きになれますし、精神が安定するのです。この制度には提出期限がないので、書類に必要事項を記入してバッグに忍ばせておいて、“いざというときにはこれを出せる!”という砦があるだけで支えになる。そういう制度なのではないでしょうか」

“縁を断ち切れる書類”というと、なんとも切ない話ではありますが、実際に縁が切れないことで将来に不安を抱えたり、悩んでいる人が居ることも事実。“姻族関係終了届”の周知とともに、“夫婦の在り方”“家族の在り方”といったことについて、あらためて皆が向き合い考えるきっかけにもなるかもしれませんね。

(構成・文/横田裕美子)