昨年10月の大組閣を経て、今年より新チームが走り出したNMB48。

本格始動後、各チームの公演では新たな魅力が開花するメンバーが続出。どの公演も魅力溢れる内容になっている。その中でも、とりわけ注目を浴びたのはチームM川上千尋ではないだろうか。

彼女はチームM公演「アイドルの夜明け」初日にて、自身がセンターを務めるユニット曲『天国野郎』のセリフパートにて、「Mのフロントに立っている白間美瑠、渋谷凪咲。絶対コイツらを超えてみせるぜ!」と舞台の中心で叫んだ。突然のブッコミに渋谷は「あらまぁ!」と驚きの表情を見せ、白間は文字通り目をひんむいた。加速し続けるNMB48の次代への流れに、もう一人参戦する形となったのだ。

4期生として2012年に加入。川上礼奈が「目が取れそうなほど大きい!」と称するパチッ!とした二重の眼、常にホンワカとしたムードを漂わせ、屈託のない笑顔が光る正統派美少女ぶりは同期の盟友・山尾梨奈を始めメンバーも絶賛。

ステージでは8年培ってきたフィギュアスケートの技術を活かした体捌きで、見事な身体性とダンスを披露。高音で少しか細い歌声も実にアイドル的。ブログ、SNSも定期的に更新し、ただ記すだけでなく読ませる文才、内容も一工夫凝らすなどのクレバーな面も持つなどアイドルとして必要な要素を高いレベルで持ち、さらには成長の一途をたどるという高いポテンシャルも秘めている。

それだけでなく、劇場では渡辺美優紀のアンダーを十二分に務めるまでに己を磨くなどの努力家の面も持ち合わせている。山本彩曰く「可愛くておもしろい」。その存在感は、ファンをして「NMB48の至宝」と言わしめるほど。

しかし、そのかかる期待通りの活躍を見せていたかと言われれば、厳しいようだが長年できていなかったように思う。

シャイかつマイペースで照れ屋な性格だからか、前面に自ら率先して出ていくことは決して多くなかった。さらにはMCでは輪に加われず、メディアでは自らの持ち味を活かしきれずの日々。かつてバラエティ番組「NMBとまなぶくん」内コーナー「NMB48の何やらしてくれとんねん!」で、白間、渋谷と共に行ったスポーツ対決でも、二人が積極的に空気を作る中、川上は後ろに下がりオイシイ場面を譲るような姿勢を見せたことが。グイグイと歩みを進め、自らを主張するNMB48メンバーが多い中で川上は自己主張という点で出遅れてしまっている。感情表現も苦手と自ら言う通り、嬉しさ、悔しさといったエモーショナルな部分を表立って出さない。よく言えば控えめなのだが、そうした物静かな姿勢こそ、メンバーもファンもヤキモキさせる一因だった。決して怠惰なわけではないからこそ、大きなブレイクスルーが必用だった。

そのタイミングが昨年巡ってくる。2016年という1年は彼女を大きく変えた。まず一つ目の転機は、昨年より就任した、女の子による阪神タイガース応援コミュニティ「TORACO」の応援隊長、そしてスポーツ情報バラエティ「虎バン」のアシスタント・虎マネでの活躍だった。大先輩である山本彩をイジり倒す狂犬ぶり、薮下柊と共に天真爛漫すぎるやりとりを見せる(時に制する側に回る)など、前に出る場面を任される度にシッカリと爪跡を残し、「虎バン」では毎回のように繰り出される、阪神選手のモノマネ披露(中でも助っ人外国人、特にメッセンジャーは絶品)、選手へのインタビューなどもそつなくこなすなど番組に必要不可欠な存在に成長。大役を任されたことで自我が芽生えたのだろうか。本人も就任後から意識が変わったと言うように、明らかに前へ出て「自分」を出すことへの躊躇を捨てたように見えた。劇場でのMCでも積極的に前へ出て発言を繰り出すようになり、表情も心なしか豊かになったように思える。

そしてもう一つの転機は、昨年夏に開催された「NMB48 リクエストアワー セットリストベスト235」最終日。壇上にて「NMB48を先頭に立って引っ張っていけるメンバーになりたい」と涙ながらに語った。生誕祭でも具体的な夢をあまり語ってこなかった川上がついに、感情を吐露したのだ。彼女の覚醒に、山本も「最近磨きがかかってきて、すごくいい」とラジオにて川上の成長ぶりを認めたほどだ。その発言を体現せんとするため、ステージでも輝きを増しB競肇奪廛ラスとも言えるまでの姿を見せるように。最新作「僕以外の誰か」で初選抜入りを果たしたのは、ひとえに昨年1年間積み重ねた自らの努力により掴んだものと言える。

2016年という川上を大きく変えた年を経て、2017年はさらなる勢いを増している。大組閣後、『天国野郎』でユニットセンター曲を掴む。NMB48、そしてチームMの『天国野郎』と言えば、多くのファンが木下百花の名を浮かべるはず。約4分の間、これでもかと自由に暴れ倒す木下の『天国野郎』は旧「アイドルの夜明け」公演の代名詞の一つだった。その木下の『天国野郎』という高き壁を川上は超えてやろう!と、裏で涙を流しながら試行錯誤を重ねていたと、渋谷と木下は口にしている。そして公演開始、蓋を開けてみれば今までの川上のイメージを覆すブチ切れぶりを見せ、完全に自分の曲へと昇華させた。

そして冒頭の宣言へと戻る。白間、渋谷へ活躍を譲るような控えめな姿勢はもう見られない、彼女は自分が前へ立つのだ!と口だけでなく姿勢で示した。同期の仲間にして、渋谷も「あの発言から、毎公演ごとに殻を破ってる。ちっひー、ものスゴイ子になってます」と絶賛の声を送った。

今年行われた生誕祭にて、自身の夢である女優を目指すために演技を本格的に学べる学校へと進学すると発表。学業との両立は大変だろうが、今伸び盛りの表現力に一層の磨きがかかることは間違いない。今年の目標を「『有言実行のちっひー』ってあだ名がつくぐらい頑張りたい」と語った川上。その言葉を信じるなら、チームMのセンターに立ち、やがてNMB48の先頭に立つ日はそう遠い話ではない。そしてその言葉を体現できるほどの力を川上は持っているのだ。(田口俊輔)

写真(C)NMB48