「ガイドブックに書いてある典型的な観光地を回る」のではなく、現地の人と、現地の人の目線での体験ができるのが旅行プラットフォームの「Airbnb」です。旅行者としてAirbnbを使うことはあっても、ホストがどのように宿を運営しているのか、というか自分でもAirbnbホストになることはできるのか?ということが謎だったので、国内でAirbnbを利用し、淡路島でゴンドラのある庭の一軒家を貸し出している最高齢ホストの中川暎子さんにお話を聞いてきました。

淡路島 1名より貸切OK! ゴンドラ有の広い芝生の庭も独占め - 借りられる一軒家 - Sumoto-shi

https://www.airbnb.jp/rooms/9174949

今回は大阪から出発したので、神戸三宮から高速バスに乗り、淡路島の五色バスセンターで下りました。



バス停まで中川暎子さんに迎えにきてもらい、車で15分ほど移動したところで、おうちに到着。



家の庭に電車の車両のようなものがある……?!とびっくりしていると……



「くろゆり」と書かれた車両はロープウェイで使われているゴンドラでした。



庭にはハンモックや……



テラス席。



植物に埋もれるようにして別のゴンドラもありました。



バーベキュー道具も。



これは何だろう?と地面の穴を見ていたところ……



パークゴルフのカップであることが判明。遊び道具が庭中にあり、子どもが楽しめるのはもちろんのこと、大人も童心を取り戻せそうな感じです。



建物はこんな感じ。



ポーチにもテーブルやイスが設置されており、天気のいい日には外でプチピクニックもできます。



宿泊する人は正面玄関ではなく、このポーチにあるガラス戸から出入りするとのこと。



中は広々とした空間になっていて、布団を敷けば10人が泊まれるようになっています。



テレビやソファー。



テーブルの横にはキッチンカウンターがあります。



キッチンはこんな感じ。コンロのほか、電子レンジ、オーブントースター、冷蔵庫があって、料理は一通り行えそうです。





なお、夕方になると庭はこんな感じ。「ゴンドラのある庭」というのがインパクトありすぎなのですが、太陽の動きと共に雰囲気がどんどん変わっていくので見応えがありました。



ということで、一通りおうちを見せてもらったところで、このおうちのホストである中川暎子さんと、息子の中川欣也さんにお話を聞かせてもらいました。



GIGAIZNE(以下、G):

淡路島の家の管理は暎子さんが1人でやっていて、息子さんの欣也さんはAirbnbを使って大阪からゲストとのやりとりを担当しているとのことですが、暎子さん自身はAirbnbのアプリやウェブサービスは触らない感じなのでしょうか?

中川欣也氏(以下、欣也):

はい。全く見てないです。

G:

なるほど。では宿泊前のゲストとのやりとりやプラットフォーム上の管理だけ、欣也さんが行っているっていうことですね。

欣也:

僕は「何日に何人、どういう方の予約が入りましたよ」という情報を母に伝えるだけの役目です。今日はインタビューということで同席していますが、普段は淡路島にはいないので、ホストに関してはノータッチですね。

G:

なるほど。では、Airbnbでホストを行うということはどういうことなのか?という点について、いろいろ面白い話を伺えればいいな、と考えています。よろしくお願いします。

中川暎子氏(以下、暎子):

こちらこそよろしくお願いします。



G:

まず、「Airbnbのホストさんってどういう感じでやっているんだろう」という部分について聞いていきたいと思います。私自身がAirbnbを利用する際には実際に宿泊した人のレビューを参考にすることが多いので、レビューが1件しかついてないとか、0件の人ってなかなかお部屋を借りる勇気が出ません。登録してから最初の数人が宿泊するまでが難しそうな印象ですが、Airbnbに登録してからしばらくはどういう流れでしたか?人が来たり来なかったりする波がありました?

欣也:

登録してから3ヶ月間ぐらいは全く反応がなかったです。

G:

誰からも宿泊のリクエストが送信されてこないということですか?

欣也:

そうですね。今言われたようにレビューが0件であるとか、写真の載せ方であるとか、ページに載っている言葉的な部分に問題があったんだと思います。でも、そういう部分を途中で変えてもらったんですよ。

G:

どういうことですか?

欣也:

初めは「外国の方が来る」ということだけに重きを置いて載せようとしてたんですよね。あと、金額の表示方法は一番大きかったと思います。うちは通常1人3000円で5人以上1万5000円っていうやり方なんですよ。それを最初は「1万5000円」ってポンと出していたんですよね。Airbnbの場合は清掃料金がプラス5000円とか4000円かかっちゃうので、結局、1人2人で来たいなと思った人たちが、ページを見た時に「2万いるんだ」っていう印象を持ってしまっていたのだと思うんですよ。

それがある時、Airbnbを大阪でやってる子に相談したところ「とりあえず1人2人レビューが付くまでは、もうちょっと安くしたほうがいいんじゃないですか」とアドバイスを受けました。それで、「1人から6000円で泊まれます」という表記にしました。今は1泊6000円で、2名を超えると追加料金が1人あたり3000円、という形にしていますね。



G:

なるほど。

欣也:

「2人だったら倍になっても1万2000円だから、ちょっと覗いてみようか」となったのかもしれません。蓋を開けてみれば7、8人の学生の卒業旅行だったり、企業のOLさんが団体で来ることが続きました。で、段々レビューが付いてくると、外国人の方も安心したのか、中国人とかインド人のファミリーが来るようになりました。外国人の方は友だち同士というよりはファミリーが多かったです。

暎子:

シンガポールのファミリーも来ましたね。

欣也:

例えば1人2人で京都旅行に来てるわけじゃなくて、子供も連れて家族旅行、という時に3〜5人とか泊まれる所って意外とないんですよね。

G:

そうですよね。あまり見ない気がします。

欣也:

「淡路島に観光に行こう」と思ってホテルを見ても、一部屋に5人も6人も入るスイートみたいな所がどこにもないじゃないですか。でも、うちは5人6人で入れて2万円、2万5000円ぐらいというのがわかって、外国の人も安心してグループとかファミリーとかで来るようになったのかなっていう気がします。

G:

なるほど。

欣也:

それが2016年の3月〜5月ぐらい。初めてのお客さんが来たのは、まさにちょうど1年前からです。大阪大学の学生さんたちが卒業旅行か何かで来てくれました。登録自体は2015年の10月、11月にはしてたんですけど、3ヶ月間、誰からも一切なんの連絡もなく(笑)

G:

始めてAirbnb経由での宿泊があったのが去年の3月だったと。

欣也:

そうですね。

G:

はじめに日本の方が泊まられて、後から外国の方が来られたということだったんですね。

欣也:

そうですね。「良かったよ」みたいなことを外国の人が英語で書いてくれてから来てくれました。

G:

確かに遡っていくと、英語のレビューも多かった気がします。

欣也:

一番最初に来てくれた阪大の子にお願いして「英語で書いてよ」みたいなことを言ったんですよ(笑)

G:

それはいいアイデアですね。

暎子:

そうそう。イタリア語専門だと言ってました。みんな賢い人ばっかりで。

欣也:

初めの阪大の子たちには、イタリア語専攻だったので冗談で「イタリア語で書いてよ」って言ってたんですけど、英語で書いてくれて。そのあたりから、外国の人からも問い合わせが来るようになりました。

G:

やっぱり英語のレビューがあるかどうかって大きいんですね。



欣也:

そうですね。

暎子:

この前は香港から向こうの大学生が来ました。外国人の方もうちに家族で来られることが多いのですが、娘さんだとか息子さんだとか、日本に留学している方がいると日本語が通じるんです。ただ、この前に香港から来た2人は、どちらも向こうの大学生だったから、全然でした。私は英語も何も通じないんですけど……。

欣也:

中国語もまったくです。

暎子:

外国の人は私が日本語で喋っても、ある程度は携帯で翻訳してくれますから。

G:

スマートフォンを使ってコミュニケーションを取るってことなんですね。

暎子:

はい。そうです。

G:

言語の違いが壁にならないのかは、すごく気になっていました。どうやって外国の方が来られた時にコミュニケーションを取るんだろうと。

暎子:

そうでしょ。でもみなさんね、言葉が通じなくても「暎子さん暎子さん」って、声を掛けてくれます(笑)

欣也:

2人組でやってきていた香港の学生の女の子は、片言の日本語は通じました。彼女らは「アニメが好きだから日本語を覚えたい」と言っていて、一生懸命喋ってくれましたね。部屋にはキッチンがあって、ご飯も作れるので、一緒に食材を買ってきて作ったりとか、あとは鍋をするから食べてくれと声をかけてくれたりとか。

暎子:

呼ばれるんですよ。バーベキューとか。



欣也:

日本人の方だったらほとんどの人がバーベキューするんですよ。淡路牛と玉ねぎを買ってきて。でも、外国の人ってそういうアイデアがないから、母が車に乗せて買い物に行きます。中国の人とか。

G:

アクティブですね。

欣也:

神戸大学で勉強している中国人・韓国人・台湾人のグループの女の子だけで来たこともありました。彼女らも留学生で、片言だけど日本語を喋れたので、母が全員を車に乗せてスーパーに行って「これ買い、あれ買い」「玉ねぎこう切って、こうやって焼いたら美味しいとか」っていうことをやったりしました。

遡るんですけど、母は吹田と高槻で美容室を30年くらいずっとやってたんです。その頃からこの近所に別荘を持っていたので、別荘に来ては同じようなシステムで人を呼んでバーベキューをしてました。40〜50代の時からそんなことずっとやってたので、変な話バーベキュー歴がもう40年とかになります(笑)

G:

そういう経験っていうのは、キャンプでもなく通常の旅行先で泊まったホテルなんかだと、なかなか体験できない事だと思うので、本当に貴重ですよね。

暎子:

みんな喜んでくださいます。普通、バーベキューでピーマンなんかは切ったりしますけど、オリーブオイルを塗ってまるまま焼いたり。そしたら「こんなの初めて。美味しい」とか言ってくださって。

欣也:

車でスーパーまで連れて行ってくれるっていうのもね。母はそういうのが好きなので、「はい次はここに行くよ」みたいな(笑)

暎子:

もう、車に乗るのが生きがいでね。大好きなんです。

今年の2月1日に免許が書き換えができるか、というところで目が引っかかっちゃったんですよ。それで、目を手術で治してね。よかったなと思って。

欣也:

あと3年は大丈夫かな。

暎子:

あと3年。87歳か。ハハハ(笑)

欣也:

ちょっと質問がまたズレましたね(笑)なんでしたっけ?

G:

いえいえ、今のお話はすごく面白いです。「ステレオタイプの旅行ではなかなかできない体験を現地の人とする」っていうのが、旅行する時にAirbnbを利用するっていうことの一番のポイントだと思うので。

暎子:

もうね、みなさん喜んでくださいます。私もほんとに嬉しいです。シンガポールから来た若い姉妹なんか、私が重たいものを運んでいる時に、手伝ってくれて。言葉が通じないのにね。でもニコニコしてね、パッと持って来てくれたんです。言葉はわからないのですけど、多分お姉ちゃんが「早く手伝いなさい」って言ってるんですよね。

欣也:

「こっちが何かをやってあげる」だけじゃなくて、その人たちも友達の家に来てるみたいな感覚なので、お手伝いしたりとかしてくれます。

G:

「一緒に何かを作り上げていく」っていう感じなんですね。

暎子:

そうなんです。みんな、家族みたいになっちゃうんです。旅行が終わっても、香港とか、あっちこっちの外国人さんともすぐにみんなFacebookでお友だちになってます。



G:

今もつながりがある感じなんですね。今はどれくらいの間隔で、ゲストの方が宿泊されるんですか?

欣也:

冬は少なくなるんですけれど、今月でも5、6泊はあるので、週に1.5くらいです。

G:

やっぱり「週末に」っていう感じなんですね。

欣也:

そうですね。週末が多いです。あと3月は日本人のツーリストが多いんですよ。

それも面白い話で。昨年の3月ごろ、一番初めに日本人の方が来て、その後にイスラエルとかアメリカ、オーストラリアのグループや、シンガポールやベトナムなどアジアの方が来られるようになりました。

暎子:

インドとかね。

欣也:

みなさん英語が喋れる人が日本に旅行に来てるとか、東京でNTTに勤めてて淡路島に遊びに来る、というアジア系の人が結構、多かったんですよ。

その後、7月8月になると、今度は日本人の、「まさかこんな人がAirbnbなんか使わないだろうっていう」というようなエリートっぽい方たちが家族で来るようになりました。

去年の3月頃に、Airbnbに対してネガティブなニュースが出たんですよ。そうは言いながらも今はSNSなどが主流なので、「どう考えても普通のホテルに泊まるよりもAirbnbの方が面白いじゃないか」って思った機転の効く日本の人とか、大学生とかがみんな「行ってみよう」って思ったのか、去年の夏にどっと来ました(笑)



G:

じゃあ去年の夏頃から急に増えてきた、という感じなんですか?

欣也:

そうですね。だから7月とかは下手したら15件とか。15泊ぐらい入っていましたね。

G:

Airbnbの流れと夏季休暇のような時期的なものが重なって一気に増えたという感じなんですね。

欣也:

はい。ただ単純に海外からのツーリストがここに来てるっていう感じじゃないんですよ。日本に住んでる人も来るし、大阪とか宝塚に住んでる人も来てくれます。いろんな方向性があるので、ちょっと驚きです。「外国人ばっかり」とか「日本人だけ」とかじゃなくて、複合でいろんなところから予約が入って……。

G:

Airbnb始める前も「リトリート・ナカガワ」という民宿をされていた、ということですが、その時はわりと日本の方が中心でしたか?

暎子:

はい。ほとんど。

欣也:

そうですね。るるぶだったりとかに、ちょこっと載ったんですよ。そういうものや、インターネットで「淡路島の面白い宿」で検索して見つけてくれた人が来てくれました。うちは最大10人ちょっとまで泊まれるので。

G:

10人ちょっとってすごいですね。

欣也:

最近はグランピングも流行ってるじゃないですか。うちは別にグランピングでもなんでもないんですけど、「庭にテント張って、子どもとお父さんと寝ていいですよ」みたいな話をしてあげると、それも喜んでくれます。

暎子:

山とかへ行ってテントを張ったりすると、子どもさんが「下が痛い」って言うらしいんです。

G:

地面が硬いですもんね。でもここは芝生だから。

暎子:

そう、だからここはいいって(笑)

子どもさんの感想を聞いたらね。アウトドア好きで道具は全部揃ってて、そういう物を持ってきてお庭でテント張ったら「ここはいい。痛くない」って言ってくれます。ああそうかって思いました。

欣也:

本格的にキャンプをしたいっていうのと、ホテルに泊まるっていうのを、ちょうどミックスしたぐらいの感覚です(笑)

G:

いろんなニーズの中間の所を行ってる感じがしますね。

欣也:

グランピングって言葉が表に出できたのも去年の春か夏くらいじゃないですか。それも加味して、うちのリスティングに子どもとみんなで遊んだ写真を載せたんですよ。いいテントを持っている知り合いがいたんで、「ちょっと遊びにおいでよ」って呼んで、テントを張ってもらって。



G:

なるほど。

欣也:

そうやって、テント張ってくれてもいいですよというスタイルの画像にしました。

G:

時流を汲みながら、リスティングのページに色んなものを取り入れるって感じなんですね。

欣也:

そうそう(笑)

G:

面白いですね。平均して月に5、6泊、夏の多い時期だと15泊とのことですが、そうなると、暎子さん1人でお部屋を保つのは難しくないのですか?

暎子:

もちろんお掃除はお手伝いさんに来てもらいます。10時にチェックアウトしたら12時までにお掃除してもらって、お洗濯とかは私がするんですけどね。

G:

やっぱり1人じゃちょっと難しいですよね。

暎子:

そうですね。そういうお手伝いさんは、この近所にもいますし、私は若いお友だちが多いので。お勤めしてる方なんだけど、午前中はちょっと来れるとか、お昼は来れるとか、そういう方にいろいろお願いしています。

G:

最近だったらAirbnbの代行サービスみたいなものも出てきていると思うんですけど、そういうものじゃなくて、個人にお願いして。

暎子:

そうです。私のお友だちに。

欣也:

母親はもともと美容室をやっていたので、人を使うというか、「アルバイト代こんだけ払うから」というのが上手いのだと思います(笑)朝、お野菜を持ってきてくれた近所の方が、2時間だけお掃除して、その後、仕事に行くとか。そういうことをしてくれるんですよ。

G:

暎子さんの人徳の上に成り立っているって感じがしますね。

暎子:

近所には、定年になって京都や大阪の方から来て永住している方が多いんです。そんな方はみんなご夫婦単位なんですよ。子どもさんも自立していらして。みんな60歳か70歳なんですけど、「中川さんを目標にしてるからね」って言われます(笑)だからね。頑張らなくちゃと思ってね。

あと、パークゴルフ場が家の近くにあるのですけど……。

欣也:

教えるんですよ、この人が。

G:

ゲストの方と一緒にパークゴルフに行ったりするのですか?

暎子:

はい。行きます。まだAirbnbじゃなくて、リトリート・ナカガワの時にやってきてくれた方でしたね。

欣也:

ここでパークゴルフがアクティビティとしてできる、というのはリスティングのページに大きく出していなかったんですよ。どこまで楽しませることができるのか、自信がなかったので。でも、今は一緒に楽しんでくれそうな感じするので、その写真をAirbnbの中に入れていこうかな……っていう感じを今年からやってます。

暎子:

初めての人がいても、庭で1人ずつ教えるんです。



G:

今のお話を聞いてると、どんどん新しい情報をAirbnbのリスティングページに追加されてると思うんですけど、初めはどういう写真を載せられていたんですか?

欣也:

昔撮った、ゲストの家族5人の写真を載せさせてもらったりとか……。

G:

ああ、なるほど、家族写真。

欣也:

Airbnbを始める前に撮影した家族写真ですね。るるぶか何かを見て来てくれたゲストの写真を載せさせてもらったりとか。それぐらいだったんですよね。その後に、たとえば中国の女の子のツーショット写真を載せ始めたり。ツーショットの写真があると「2人で行ってもええんや」となるんじゃないかな。

G:

確かに写真から受ける印象って大きいですもんね。

少し質問は変わりますが、これまででAirbnbをやっていて、困ったことは起こらなかったんですか?

暎子:

今まで何にもないです。

G:

何にもないですか。

暎子:

困ったこと何にもない。

欣也:

1回だけその中でも困ったとしたら……。ここの住所はAirbnbに載ってるので、車のナビに入れれば普通に来られるんですけれども、香港かどこかの方で、ナビの入れ方がちょっとおかしかったみたいで、「着かない」って何回も僕にメールがあったことがありました。メールのやり取りは全部僕がやっているから、現地に電話を掛けてくれとも言えないし、香港の人なんで中国語か英語じゃないですか。それで、1時間以上迷われたんですよね。

暎子:

ここから5分もかからないところ、すぐ近所までは来ていたのですけど、そこから1時間半ぐらい。

欣也:

その時が一番焦りましたね。結局、たまたまうちの隣の貸別荘に泊まっていた人が「広東語できるよ」って言ってくれて。その人に喋ってもらったら、なんとか来てくれました。あれが最後の最後まで、見つからないとかになったらと思うと……。

そこはやっぱり言葉の壁なのかなっていう気がします。言葉が通じたら「じゃあ私が今からローソンに行くから、そこにいてよ」って言えますけど、それも言えないじゃないですか。だから、その時から住所だけは入れ間違えがないかとか、「車によって入らない」ということがないか、念入りにチェックしました。そこからは、今のところ迷ったりとかはなく、大体カーナビでここに来てくれますね。

暎子:

そうそう。大体みんなちゃんと来てくれます。外国の人でも。

欣也:

あとご飯も、「来てからどうしよう」っていう外国の方が多いんですよ。来たら歩いて行ったとこにレストランがあるだろう、みたいな感覚なんだと思うんですけど、この近くってあまりないんですよね。

なので、「17時に来てよ。レストランまでの道がわからなかったら困るだろうから一緒に着いていってあげる」って伝えておいて、来たら車で伴走して行ってあげて、そこのレストランに送り届けて帰ってくるとかっていうことをやっています。

G:

そういうのは事前のやり取りで「食事どうされますか」みたいなことを聞いておくって感じなんですか?

暎子:

それが、なかなか……。「何時頃に行きます」って言っててもその時間に来ないんですよ。それこそ言葉が通じないからどうしようもない。でも、23時ごろまで開いているスーパーもあるからね、そこへ買いに行けば食べ物はなんとかなります。

G:

つまり、食事の部分と旅の誘導の部分でちょっと困る事があるかもしれないけれども、概ね問題は起こらないって感じなんですね。

暎子:

そうですね。ほとんどなんとかなります。

G:

Airbnbを始めてから1年で、全然問題が起きないっていうのもすごいですね。

暎子:

その前のリトリート・ナカガワでも、12年もしてたけど、なんにもなかったです。



G:

リトリート・ナカガワのお話が出ましたけれども、そのリトリート・ナカガワをやっていて、2015年10月にAirbnbに登録してみようってなったのはどういう経緯なんですか?

欣也:

父親と母親2人で二人三脚でリトリート・ナカガワを10何年とやっていて。父親が亡くなった次の年くらいに、母親がちょっとあまり力が入らないというか、気合いを入れてできなかった時があったんですよ。お客さんが来たら来たで1人だし、大変じゃないですか。

たまたまその時に僕が「Airbnbっていうシステムがあって、まさにうちの家が、完璧にそういう人に求められてるようなシステムでできるよ」って言って、一緒にAirbnb主催のパーティーに行ったんですよね。ただ、その時はみなさん、マンションがどうのこうの、というのばっかりだったので、全然話に入れなくて。

でも、「僕らなりにやろうや」「外国人が来るのも大丈夫」と言いました。初め母は「ええ〜。嫌や」みたいなことを言ってたんですけど、いざ蓋開けてみたらそれが結構楽しかったらしく(笑)

暎子:

生きがいです(笑)ちょっと部屋が空いてきたら、「早く誰か入れてよ〜」って。

G:

じゃあ初めはそんなに乗り気じゃなかった?

暎子:

乗り気じゃないことではないんですけどね、私があまり詳しくわからなかったからね。「外国の人が泊まるのどうのこうの」って言われて、「そんなのなぁ……」っていう感じだったんですけどね。

G:

そこから、何が決め手で「じゃあ、やってみようか」ってなったんですか?

暎子:

やってみたらこれまでと同じような感じでしたからね。ただ単に、お客さんが来られたら楽しいし、向こうも喜んでくださるから。それがまた生きがいです。

欣也:

Airbnbを使うと、今まで以上に、この人のことを知った状態でゲストが来てくれるんですよね。前は「宿のおかーちゃんがいる所に」っていう口コミで来てくれていたのが、今は「暎子さんですよね」とか。詳しいプロフィールをリスティングのページに載せているので、「阿倍野生まれなんですよね、僕実は阿倍野の方から来てるんですよ」とか。そういうストーリーがあるので。

G:

それは確かに、ただ単に宿をやるっていうのと、個人を押し出してAirbnbやるっていうことの大きな違いかもしれないですね。

暎子さん的にはAirbnbをやっていて、一番いいなっていうところは何ですか?

暎子:

やっぱり私は1人だから、現実に寂しいしね。夜が寂しいでしょ。それで、下に誰かがいると思うと嬉しいです。

G:

賑やかな様子が聞こえてくると寂しくないと。私も一人暮らしをしているので確かにそれは、わかります。

暎子:

そう(笑)一人暮らしですか?

G:

はい。みなさんと特に交流がなくても、下にわいわい賑やかな雰囲気があるっていうのはいいですね。

欣也:

この人は長いこと生きてるから、ネタばっかりあるんですよ。

美容室やってたとか、バーベキューをずっとやってたとか、それこそ若い時は勤めててこんなんだったとか、っていう。

一般の人でも、その人だけのストーリーを持っているじゃないですか。今まではそういうことをあまり出したら駄目、みたいな感じだったのが、Airbnbをやることで、出すことができるので。

G:

出したら駄目な感じ、とはどういうことですか?

欣也:

それこそ僕らぐらいの年代だったら、ガンダムの何かが好きだったりとか。昔は「ガンダムが好きなんだよ」とかをあまり言わなかったじゃないですか。でも今って逆に「えっ?あの人がそういうのが好きなの?ちょっと話合うよね」って仲良くなることってあるじゃないですか。

だからそういう「あのおじさん、ああ見えてこんなんだったんだ」みたいなギャップが今の時代で売りになるように持っていければね、Airbnbって結構簡単にできるんじゃないかなっていう気がします。

G:

なるほど。施設じゃなくて個人の色を押し出す感じで、ってことですね。

欣也:

まさにそれだと思うんですよ。レイアウトとかじゃなくて、まずは人だと思うんですよね。まず人がいて、その上で、来てもらって楽しめる状況を確立していくというのが、たまたまできていってるのかなっていう気がするんですけど。

G:

ストーリーというか、人ありきっていうのは、暎子さんを見ていてすごく思います。

暎子:

だからなのか、私はすぐお友だりができるんですよ。私の友だちに「あの人と友だちなった」って言うと「え、またぁ」って返ってきます。

G:

Airbnbをやっていることと、暎子さんの生活の中にあまり境がない感じがしますね。ライフスタイルの1つというか。

暎子:

そう言われたらそうですね。もうなんでもOKです(笑)

G:

今までで一番印象的な思い出とかってありますか?

暎子:

印象的というと、例えば、これはリトリート・ナカガワの時ですけど、リピーターさんの子どもさんがここに来て「ただいま」って言うんです。それでお母さんが「あんた何言ってるの?」ってびっくりされるんですよ。

G:

それはちょっとうれしいですね。

暎子:

うれしいですよ。お母さんがびっくりしてるもの。この子どうしたんだっていう感じで。子どもさんだから2年くらい来なかったら普通忘れてるでしょ。でも忘れてないんです。

欣也:

あとあれ。中学生の男の子が、3人で……。

暎子:

そうそう。中学生が3人来たんですよ。

G:

3人だけで?

暎子:

全寮制の中学校でに通う男の子ばっかり。彼らが料理をするんです。包丁も持ったことがない男の子が、3人で買い物して。その時はバスで来るというので迎えに行きました。



「食事はどうするの」って聞いたら「パエリアとシチューの材料を買う」と言うので、「じゃあ買い物に行こう」って会話をして。彼らは料理の本を持ってきていて、お母さんからメールが来たりしているのに、夢中で料理を作って、「できたから食べませんか?」って言ってくれました。「ちょっと外に買い物に行ってるからね、試食する分だけ置いといて」って言うと、正直に本当にちょっとだけ、置いていてくれました。味見したら、上手にできていました。彼らの1人は、お母さんに「包丁も使ったことないのに、あんたにできるの?」って言われたって(笑)

G:

どういう経緯で3人が宿泊することになったのですか?

欣也:

それはAirbnbではなく、リトリート・ナカガワの時なんですけど。僕がたまたまここに来てる時に彼らがかけてきて、「5人なんですけど、空いてますか?」「空いてるよ」「中学生なんですけど大丈夫ですか?」って言われて、「大丈夫だよ」って。ただ、親が本当に知っていてくれているかは心配だから、代わってもらったら「よろしくお願いします」みたいな感じで。結局その子らも、パークゴルフに連れて行ったんじゃなかった?

暎子:

そうそう。

G:

今の話を聞いてると私もAirbnbのホストをやりたいなっていう風になってきたんですけど(笑)1人でやろうと思うと、やっぱり難しいのでしょうか?

欣也:

うーん。どういう感じでやりたいかによると思います。どこに住んでいるんですか?

G:

実家は兵庫県の、ものすごく田舎の方で、牛がや猿がいるところです。淡路島だったら観光のお客さんがいると思うんですけど、一切いませんね。Aibnbをできればいいんですけど、まず人が来ないところなので……。

欣也:

いやいや、それはね、多分逆だと思います。人が来ないところだからできるってことがあるので。例えば、ここの場所からどう景色が見えるかとか、そんなことも関係してきますし。そこに誰がいるか、が大事なんです。景色と人で十分。あとは内装を一部だけ改装するとかっていう、そういうレベルで始めている人が多いです。

ちなみに、淡路島の丘の上にある暎子さんの家から海岸までは車で3分という距離。取材した日は雨の予報でしたが、雲が途切れて夕日がきれいに見えそうだということで、暎子さんの運転で海辺まで連れていってもらいました。



丘の下から見た夕日はこんな感じ。淡路島西海岸の海は「淡路の水ってこんなに透明なんだ!」と驚くほどに透明で、夕日の美しさも格別です。



欣也:

そのままでもいいんですけど、やっぱりコツを掴む意味では、場所とちょっとした改装っていうのは、みなさんやられています。

暎子:

お父さんとお母さんって何歳くらいですか?

G:

60歳くらいです。

暎子:

ちょうどいいです。

G:

ちょうどですか(笑)Airbnbのホストを始められるのは、50代や60代の方が多いんですか?

欣也:

僕の印象では、もうちょっと若い気がしますね。30代ぐらいの夫婦でちっちゃい子どもを連れて移住して……という人たちがめちゃくちゃ多いんですよ。今まで普通に会社員してたけど、農業やりましょうとか。助成金が出てどうのこうの、高知の山奥に行きましょうみたいな。それぐらいの年代の人達がその延長線上でAirbnbを農業にくっつけたりとか、やろうと思ったらできるじゃないですか。

あまり歳がいってると、フィーリングもわからないところもあるので、「どうしていいかわからない」という部分があるかもしれませんが、30代くらいの人って機転が利くから、今流行ってることを取り入れようとか。さっきのグランピングの話じゃないけれども、「ちょっとグランピングっぽく、三角バナー貼っとこう」とかみたい小さなことの積み重ねで、人が集まってくるような気がなんとなくします。

30代の人は30代の人に受けるようなことがきっとできると思うんですよね。それで、50代60代の人たちは、じゃあどこを狙うか、なんですよね。

ちょっと話が戻っちゃうんですけど。母親は80代で、もう上はないじゃないですか。だから、50代60代の僕らくらいの世代も相手にできるし、30代、20代、さっき言った中学生までいけちゃうから、ちょっと得してるのかなという気はしますね。どかこにターゲットを合わさなくてもみんな対応してしまえるのかなっていう感じなので。

G:

そうですね。確かに安心できる感じがあります。

暎子:

ここのゴンドラの中でチーズフォンデュやオイルフォンデュをして、合コンをやることもありますよ(笑)

ゴンドラのある庭は、夜になるとライトアップされてさらに幻想的な光景に。





これがバスの中の様子。確かにホームパーティーができそうでした。



G:

では、最後の質問ですが、これからホストになろうとしている人に、どういう心構えでいればいいかなど、伝えたいことはありますか?

暎子:

うーん、私は自然体だからわからないです(笑)

G:

「自然体であれ」ということですね(笑)

暎子:

私は、ですけどね。自然体じゃないとしんどいじゃないですか?「こうしないといけない、ああしないといけない」と思ったら疲れますよ。自然だからできるんじゃないですか?

欣也:

初めからさらけ出して全部書いてるもんね。

G:

(笑)

欣也:

美容室やってたとか、人と喋るのが好きだとか、お世話するのが好きだって、それが趣味だって書いているから興味を持ってくれる人もいるかもしれないし。

だから、それもみんな同じ話ですが、その人の人となりです。「ゲストの方をいっぱい入れたい」っていうことばっかりだけじゃなくて、「僕はこういうことが大好きで、こういう人が来たら一緒に話をしましょう」みたいな。

やっぱり自分が出せる状況だと、自ずと同じような人たちが集まって来るだろうから。そして、母はさっきも言ったように誰でもウェルカムだから(笑)誰でも来てね、みたいなことが書いてあるから。

G:

そうですね、「人」という部分が重要だからこそ、自然体でいて、そこに興味を持たれる人もいて……。その上で、一緒に何かをして、作り上げていくって感じなんですね。

本日はどうもありがとうございました。