白く輝く富士山の麓で、「日本のモータースポーツ50年史」が鮮やかに蘇った。

3月12日、富士スピードウェイの開業50周年イベント「FUJI WONDERLAND FES!」(富士ワンダーランドフェス)が開催され、1966年の開業以来、日本のモータースポーツの歴史を刻んできた国際サーキットに、各時代を彩った往年のレーシングカーやドライバーたちが大集結した。


ジェームス・ハントのマクラーレンをマリオ・アンドレッティのロータスが抜き去る......の再現シーン

 1976年に日本で初めて開催された「F1世界選手権イン・ジャパン」に出場したヴィンテージF1マシンや、80年代〜90年代初頭にかけてル・マン24時間を含む世界耐久選手権シリーズ(WEC)などで人気を誇ったグループCカーなど、各時代を代表する貴重なマシンがデモランやエキジビションレースを披露。マシンの現役時代にはまだ生まれていなかった小さな子供から60〜70代のオールドファンまで、この日、サーキットに集まった幅広い世代のモータースポーツファン、3万1000人を魅了した。

 三重県の鈴鹿サーキット(1962年開業)に続く、日本で2つ目の国際規格サーキットとして富士スピードウェイがオープンしたのは1966年1月のことだった。当初はアメリカのインディカーやストックカーレースで使われる「オーバルコース」(シンプルな楕円型のサーキット)の建設が構想されていたが、途中からヨーロッパ型のロードコースに計画が変更される。そのため開業当時はオーバルコース構想の名残のような全長1.5kmの長いホームストレートと、超高速の30度バンク(最大斜度30度に傾斜したすり鉢状のカーブ)を備える、世界屈指のユニークな高速コースレイアウトのサーキットとして注目された。


マクラーレンM23。1976年の富士でジェームス・ハントが3位に入り、 わずか1ポイント差の劇的な逆転で年間チャンピオンを決めた

 その30度バンクが1974年に廃止され、その後の数回にわたるレイアウト変更を経て、2005年には新時代の国際サーキットに生まれ変わるべく全面的な改修を実施して現在に至っている。しかし、時代は変わっても富士のトレードマークであるロングストレートは今なお健在で、何より霊峰・富士を背景にした圧倒的なロケーションが「富士スピードウェイ」のアイデンティティを力強く主張する。

 この日の富士ワンダーランドフェスで企画された各種イベントの中でも、多くのファンを沸かせたのが、1976年に日本で初めて開催された「F1世界選手権イン・ジャパン」を再現したデモンストレーション・ランだった。F1世界選手権イン・ジャパンとは、現在まで続く鈴鹿サーキットでのF1日本グランプリが1987年に開催される以前、1976年と1977年の2回だけ行なわれたF1グランプリシリーズ公式レースの1回目である。当時、たまに放映されるテレビの録画放送のなかでしか見たことのなかったF1マシンが、目の前に出現したことにモータースポーツファンは衝撃を受け、狂喜乱舞した。


マリオ・アンドレッティのドライブで1976年の富士を勝ったロータス77。扱いづらいマシンといわれ、このときが唯一の勝利

 ロン・ハワード監督の映画『ラッシュ/プライドと友情』(2013年)にも描かれた、その伝説の名レースに出場したF1マシン、フェラーリ312T2、ロータス77、マクラーレンM23、そしてこのレースだけスポット参戦した国産F1マシンのKE007 (走行はせず)までもが登場し、爆音とともに走り出す姿は、まるで40年前の富士スピードウェイにタイムスリップしたかのようだった。

 グランドスタンドでデモランに熱い視線を送っていた50代の男性は、「自分は76年の時はまだ子供で、ナマでF1を見に来たくても来られなかった。こうして、当時のマシンが富士を走る姿を見ることができるなんて、ともかく感動で胸がいっぱいです」と語る。


ニキ・ラウダが駆ったフェラーリ312T2。1976年の富士では雨を嫌ったラウダがわずか2周でリタイア。カーナンバー11は1977年につけたものだ

 フェスではF1以外にも国内外の各カテゴリーを彩った歴代レーシングマシンが数多く展示されたり、走行したり。日本のモータースポーツが歩んできた50年の歴史の中で繰り広げられた、数々の名勝負や伝説が「時代絵巻」のように再現された。こうして、モータースポーツは世代から世代へと引き継がれ、着実に「年輪」を刻んでいく。大きな節目を迎えた富士の麓の素晴らしいサーキットがあったからこそ、自動車レースへの愛がひとつの「文化」して定着してきたということを、あらためて感じた。


小島エンジニアリングが製作した国産F1マシンKE007。長谷見昌弘のドライブで予選から速さを見せたが、直後にクラッシュ。必死の修復で臨んだレースは11位に終わった■モータースポーツ 記事一覧>>