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 「熊老人」とは、中国語で気の短い高齢者のことを言います。温厚で物静かな印象の高齢の方は多いですが、実は、高齢者による暴行事件は増加傾向にあり、日本でも問題視されています。

 65歳以上の高齢者の暴行が、20年前(1995年)に比べて、49倍も激増していることが法務省の調べで分かりました。法務省「犯罪白書」データによると、日本の少年犯罪と外国人犯罪が、ピーク時より3分の1減少しているのに対し、高齢者の犯罪は増加傾向にあります。

 高齢者による犯罪率(2015年)は、20年前(1995年)と比べて、殺人犯は2.5倍、強盗罪は8倍、殺人未遂罪は9倍と、暴力行為が49倍も増加しています。

 日本の地下鉄・JRなど33社のデータ(2016年)では、駅員・乗務員への暴行の23.8%が60歳以上の高齢者であり、各年齢層の中で、最も多い結果になっています。

 私立大学病院医療安全推進連絡会議の「院内暴力調査」(2013年)を見ると、医師や看護師、職員など、50歳から70歳の高齢者から罵られ、暴力を受けている事件がよくあり、中でも70歳の高齢者による暴力は、全体の24.2%を占めています。

 高齢者の精神医学について研究している精神専門家・武藤治人氏は、「私のクリニックでも、短気な高齢の方を見受けます。例えば、予約をしていないのにクリニックに来て、即時の診察を求めてきます。順番を待つよう促すと、怒ってなかなか抑えられないことがありました」と語りました。「大脳の前頭葉という部分は、人間の感情や理性、思考などを管理しています。しかし、前頭葉が縮むことによって、人間の判断力もだんだん衰えて行き、感情のコントロールができず、性格に変化が見られます。その因果関係は、大脳の変化と関わっているのかもしれません」。

起こりやすくなるのは加齢による脳の変化?

 


 武藤氏は、現代の高齢者が、以前より怒りやすくなった原因について、2つ挙げています。


 原因 1 脳機能

 ・老衰と共に大脳の機能が衰えている事。

 ・社会環境の変化と共に、心理的な変化が現れている事。

 原因 2 心理状態

 「環境の変化は、高齢者に不安や不満などをもたらし、このようなストレスが怒りとして爆発します。以前に比べて現代社会は、家族関係が疎遠傾向にあり、高齢者の社会活動範囲も限られていることから、話し相手を探しても見つからない環境にあります。ですから、うつ病や焦燥感を強く感じやすくなる」と、指摘しています。

 Anger Management(怒りを抑える)代表理事の安藤後介氏は「怒りは人の第二次感情と呼ばれ、第一次感情というのは、寂しさや悲しさ、不安などを指します。このようなマイナス感情を蓄えていくと、短気になりやすくなる」と話しています。

 団塊の世代

 団塊の世代は、生活を改善するために黙々と苦労しながら日本社会の経済を支えてこられました。毎日、真面目に働いて残業し、上司に厳しい言葉を言われても反抗せずに、社員としての義務だと認識しながら、日本経済を成長期を生き抜いてきました。

 しかし、定年退職を迎え、仕事から解放されて、「やりがい」や「生きがい」を実感する体験機会を失いつつあります。気ままな暮らしが良いと思っていたのに、実は、ゆったりとした生活にはとても不慣れです。

 解決方法

 高齢者問題に関して、数々の本を出版している精神科医・和田秀樹氏は以下のように話しています。「高齢者の怒りっぽさを改善するためには、まず受け止めて、傾聴し、共感する事で、冷静になっていただける」という。

 高齢の方は「ありがたいね」「すまないね」と言った、他者を敬う気持ちを大切にしている人が圧倒的に多いはず。ですが、現代社会が冷たい態度であれば、優しい心持ちの高齢者を「熊老人」としてしまうのかもしれません。

(翻訳 林書羽)