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 YouTube で、日本語で解説された「30分で判る 経済の仕組み Ray Dalio」という動画がある。クレジット(借金)と物品サービス・資産との取引(売買)について、わかりやすく解説されている。内容は、クレジット(借金)の果たす役割が大きいこと、支出は他の人の収入であること、クレジットが増え支出が増えると物価が上がりインフレになること、インフレを抑えるために中央銀行が金利を調整することなどである。

 本動画を作成したのが、ヘッジファンドの運用金額において世界一の「ブリッジウォーター・アソシエイツ」創業者レイ・ダリオ(Ray Dalio)氏である。

 レイ・ダリオ氏は、1949年生まれ。ジャズミュージシャンの子として生まれ、ロングアイランド大学、ハーバード・ビジネス・スクール卒。メリルリンチ、シェアソン・ヘイデン・ストーン勤務を経て、ヘッジファンドであるコンサルティング会社ブリッジウォーター・アソシエイツを設立。

 ブリッジウォーター・アソシエイツは、ヘッジファンド世界最大規模の約18兆円を運用している。

◆コンピュータを使ったアルゴリズム取引の開発に強み

 ブリッジウオーター・アソシエーツは、後述する保有ポートフォリオからは想像しがたいが、コンピュータを使ったアルゴリズム取引の開発に強みがあると言われている。

 昨年3月、ブリッジウォーターでは、アップルでiPodを立ち上げ、Palmの会長も務めたジョン・ルービンスタイン共同最高経営責任者(CEO)の就任を発表した。また、マイクロソフトで最高研究戦略責任者を務めたクレイグ・マンディがダリオと並ぶ共同会長に就任することも明らかにした。同社はこれまでにも、IBMで人工知能「ワトソン」の開発チームを率いたデービッド・フェルッチを採用している。(参照:HBO「人工知能を活用し始めたヘッジファンド」)

 しかし、ここに来て変化があったようだ。ジョン・ルービンスタイン共同最高経営責任者(CEO)は、入社して10か月で退社することになった。クライアントへ、次のように通知された。

“Jon Rubinstein is leaving Bridgewater after 10 months(he was previously also co-CEO)because he did not fit into Bridgewater’s culture, Dalio wrote.”(ジョン・ルービンスタイン共同最高経営責任者(CEO)は、入社して10か月で退社する。ブリッジウォーターのカルチャーにフィットしなかったのが理由であると、ダリオは記した。)(参照:「Business Insider」)

◆ETFを使った特徴あるポートフォリオ

 ブリッジウォーター・アソシエイツのポートフォリオは、実に特徴がある。2016年12月時点の上位組み入れ銘柄は以下のとおりである。(参照:マネックス証券「iBillionaire」)上位10銘柄の内、個別銘柄はアップルとマイクロソフトの2銘柄だけで、他の8銘柄は全て上場投信(ETF)である。しかも、エマージング・マーケットの株式を対象とするものが大半を占める。

1位:バンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF(VWO)31.34%
2位:iシェアーズ MSCI エマージング・マーケット ETF(EEM)23.17%
3位:SPDR トラストシリーズ1(SPY)21.44%
4位:iShares Core MSCI Emerging Markets(IEMG)2.30%
5位:iシェアーズ MSCI ブラジル・キャップト ETF(EWZ)1.68%
6位:iシェアーズ iBoxx 米ドル建て投資適格社債 ETF(LQD)1.09%
7位:iシェアーズ MSCI 韓国キャップト ETF(EWY)0.94%
8位:アップル(AAPL)0.46%
9位:マイクロソフト(MSFT)0.39%
10位:iシェアーズ・コア S&P 500 ETF(IVV)0.37%

 上記のETFの組み入れが、いかに特徴があるか、ウォーレン・バフェット氏のポートフォリオと比較したい。ウォーレン・バフェット氏が率いるバークシャ・ハサウェイのポートフォリオは、上位から、クラフト・ハインツ(KHC)19.21%、ウェルズ・ファーゴ(WFC)17.86%、コカコーラ(KO)11.21%、アイビーエム(IBM)9.11%、アメリカン・エクスプレス(AXP)7.59%、フィリップス66(PSX)4.71%、アップル(AAPL)4.49%と、個別銘柄のみの構成(参照:マネックス証券「iBillionaire」)であり、ETFは含まれない。

 上記の通り、レイ・ダリオ氏は、新興国市場をポジティブに見ており、エマージング・マーケットを対象とするETFが保有銘柄の大部分を占め、金額ベースで個別株への投資が少ないのが特徴である。

◆レイ・ダリオによるマーケットへの見解

 ジョン・ルービンスタイン共同最高経営責任者(CEO)の退社という変化があったように、レイ・ダリオ氏にも大きな変化があった。4月15日付で、ダリオ氏も共同CEOを退任することになった。ただし、共同CIOとして残るという。(参照:CNBC)

 最後に、レイ・ダリオ氏による2017年のマーケットに対する見解をピックアップしたい。

 今年1月、スイスのダボスで開かれる世界経済フォーラム、通称ダボス会議にレイ・ダリオ氏は出席した。

 その席で、”We may be at a point where globalization is ending, and provincialization and nationalization is taking hold.”(我々は、グローバリゼーションが終焉する地点に達したのかもしれない。地域や国の単位で一つになろうとしている。)と語った。(参照:ブルームバーグ)

 また、“Stock Rally, Bond Sell-Off is logical”(株高と金利上昇は完全に論理的)とも、語っている。(参照:ブルームバーグ)これは、金利上昇するから株高につながるという意味ではなく、税率が下がるので、金利上昇にも関わらず、企業業績が良くなって、株高へというロジックである。

<文/丹羽唯一朗>